8話
「任せてください、こんなのイチコロですよ!ぐぬっ……ふんぐぅ……」
だめだ、固い……全くほどけそうにない
「ふんぎぎ……ふすー!ふんがー!」
リーシェも頑張ってくれてるけど、このままじゃダメそうだ……
「がるるぅ……!むきー!!」
本当に……頑張ってるなあ……
「あー!も~!全然ダメです!縄が固すぎます!ゴブリンの持ち物にしては上物過ぎなんですよ!」
鼻息を荒くして訴えるリーシェ、たしかにこのままではどうしようもない……なにか手段はないか……
「あ、そうだ。こんな時のために用意していたものが……たしかこの辺に……んーっ!んぅーっ!」
少女は縛られた状態のまま、前屈みになり急にプルプル震え始める
僕は変な姿勢で必死に頑張っている姿の子を、少し面白いなぁと思いながら眺めることにする。
「ふぅ……はぁ……。あの……なんでちょっとニヤけてるんです……?そだ、その位置から取って欲しい物があるんですけど、手伝って貰えますか?」
目線で自分のスカートを指し示す、どうやら策があるらしい。
「緊急時に備えて、太ももに短剣を備えているのです!なので、取っていただければロープなんてイチコロですよ!」
得意気な顔で鼻息を鳴らす少女。さすが副隊長を名乗るだけある。
でもまてよ……これには問題がある。短剣を手に入れるには、スカートの中をまさぐる必要がある。
僕の見かけはレース入りの衣装を装った可愛い女の子、でも心は立派な男の子。
つまり僕の心はピュアなのだ……女の子のスカートに手を突っ込む勇気なんてない。なので、ここは丁重にお断りしよう……!
「え~その、別な方法ってないかな?恥ずかしくって……。」
するとリーシェは笑顔で答えてくれる。
「女の子同士だから気にしなくていいですよ~!」
途端に掴まれた左手がスカートの中に引きずり込まれて、僕は恥ずかしさで瞬時に全身が固まってしまう。
「さぁ、お願いしますね!」
これは、もう……覚悟を決めるしかない。
すぐに取って終わらせれば良いんだ、それになるべく触れなければなんてことない。
僕は声にならない声を上げながら短剣の捜索を開始する。
ゆっくりと……肌に触らないようにすればいい。
「あー、もう少し上ですね。」
探しやすい体制に整えてくれた反動で、手のひらに柔らかい感触が衝突する。
つまるところ女子の太ももを鷲掴みにしている状態。
その瞬間唐突になにか、大切な物を失っていく感覚が過ぎていった。
もう……やけだ……。
僕には異世界を救うという、なんというか……わかんないけど、大きな目的があるのだ、こんなところでつまづく訳にはいかない!
心を無にして、この窮地を乗り越えてやる!
「おぉ、やる気になりましたね!頑張ってください!」
リーシェの声援に答えたいが、集中しすぎて返す余裕がない。
「……ん!……ひぁっ!ぅ……。ファイト……!です。」
なかなか手応えがない、う~ん……おかしいな。
「っ……!ぁ……!ま、待ってください!その上は……!」
何かの布地に指がかかる、これだ!お目当ての物に間違いない。
「見つけたよ!今取ってあげるからね!」
目標確認、あとは回収するだけだ!
「ぇっ……!ライト……さん!あの……今触ってるの……その……私のパ……。パンツで……す。」
「………………。」
言葉にならない。
気まずい空気が辺りを支配する。
まるで一瞬の時間が永遠のように長く感じられるようだ。
リーシェが顔を伏せたまま、途切れながらに言葉を切り出した。
「あの、だ……大丈夫ですから……。私の事は気に……せず。……どうぞ。」
もう無理だよ!!
僕の精神が限界です。本当にすみませんでした!
罪悪感を感じながら、少女のスカートから手を引いていく。
最初から無理だったんだ……。
異世界って……本当に怖いなぁ。
悲しい気持ちのまま遠くを見つめていると、緑色をした肌の人がこちらに向かってくる。
ん?緑……色?
「リーシェ!あれって!」
隣の少女の顔色が途端に変わる
「ま、間違いありません!オークです!こちらに向かってきます!」