3話
うつ伏せに寝そべっている僕の背中をぐいぐい押してくる。
触れられる度に、言葉にならない声が僕の口から漏れる。
「異世界ですよ~? とっても楽しいですよ~☆」
しかし、なんと言われようと今日は休日、だらけ放題が許される日なのである。
本当に申し訳ない、そう思いながら僕は体のスイッチをオフにした。
「う~ん、駄目そうですねぇ… 」
人差し指を口に当て思案する女神様。
しかし、女神様と言えどこの状態の僕をどうすることも出来ないだろう…
「そうだ、こうしましょう♪」
何かを思い付いた女神様は、ベットに腰掛けていた状態から僕に覆い被さるように体勢を変え、右手をわっしと掴んできた。
まどろんでいた意識がだんだんとはっきりしてくる。
手のひら越しに女神様の熱がじんわりと伝わり。
質量をもった大きな何かが背中に押し付けられる。
そして僕の耳元でこう囁いた。
「ちょっとだけ、楽にしててくださいね……♪」
唐突な状況に理解が追いつかない。
全身が強張り、頭が真っ白になる。
そして心の準備を迎えることができないまま、女神様に抱擁……ではなく羽交い締めにされる。
「え!起きるから、ちょっ。」
恥じらいと、もどかしさと、息苦しさの中で逃げようと試みるが、がっちりと掴まれていて身動きが取れない。なすがままである。
あとは結構重い……が嫌な予感がしたのでこれは言わないでおく。
そして全身プレスに耐えきれず、しばらくバタついていたら体力が尽きた……。
「ふふふ、とっても満足です♪」
だいぶ揉みくちゃにされてしまった……。
しかし、ぐったりと無抵抗のままだとまた何かされかねない。
力を振り絞り、ふらふらとよろめき上がって女神様を見上げる。
すると笑顔でこう答えてくれた。
「異世界は危険ですから、魔法使いにしてあげました♪」
え、どういうこと。
魔法使いと呼ばれる年齢にはまだ遠いはずだ。
なんて、どうでも良いけど悲しいことが頭をよぎる
「それじゃあ、こういう風に指をくるっと回してくたさい♪」
言われるまま、身ぶり手振りで真似してみる。
「タフィ ルシス!」
同じように言葉を続ける
すると、はめた指輪から強烈な光が発せられ、体が熱くなる。
あまりの閃光に目が眩んでしまう。
しばらく続いたあと、光はだんだんと収まっていき、やがて指輪は普通の状態に戻った。
突然の現象に驚いたが、初めての体験に心が弾む。
「い、今のはなんですか?」
好奇心を抑えきれずに僕は訪ねる。
すると女神様はとても笑顔になり、こう答えた。
「いまのは女の子になる魔法です。」
そんなことも出来るのか、魔法ってすごいや。