学内大会 三回戦
学内大会の二日目はベスト8の試合から始まる。ここまで残っているのは一年A組を除くと、他は全て三年生のクラスだった。
ここからは闘技場の全面を使った戦いとなることで戦術の幅が広がる他、戦闘距離が長くなることで魔法の威力が重要となったり、局所戦では個人の実力が今まで以上に求められるなど、下級生にとっては不利な条件が揃っている。
しかしそんなことは今さらの話であり、ここまで無傷で勝ち上がってきた一年A組の実力を疑う人間はもはやいない。三年生たちは昨日からの少ない時間ではあるが、出来る範囲で対策を練って戦術を構築してきていた。
「キース先生、隣いいかしら?」
「セレ……ーネ理事長。もちろん構いませんよ」
試合開始前、観客席でセレーネにそう声をかけられたキースは、昔の癖でセレ姉と呼びそうになったが、ぎりぎりのところで踏みとどまる。
二日目の試合は初日と異なり、すでに敗退しているクラスの生徒たちは、寮の自室で療養している者を除いて全員が観戦しているため、そう遠くない所に生徒の姿があった。
人目があるところではセレ姉という呼び方を禁止するというルールを守れたキースに、セレーネはよく出来ましたと言いたげな笑みを浮かべた。
それをあえて無視するようにキースは話題を振る。
「三回戦の相手は三年I組……理事長の従妹が所属しているクラスです」
「サローナですね。土と水の二属性術士で、とても優秀な子ですよ」
サローナ・ネフティスは建国以前から続く名家インファンタリアの血筋に連なる者であり、その高い実力は王立騎士学校に入学する以前から知られていた。
そして事実エリート揃いの王立騎士学校においても、常にトップ層に位置する成績を残し続けている才媛である。
しかしながら、各騎士団や貴族院の面々から聞こえてくる評価は「期待外れ」というものだった。
その理由は今キースの隣に座っている、数々の天才を生んできたインファンタリア家においても歴代最高の術士と謳われたセレーネにある。
比べる相手が悪いといえばそれまでだが、若くして賢者にまでなった不世出の天才セレーネと比べてしまうと、サローナは毎年必ず現れる優秀な生徒という域を脱していないのが現実である。
全校生徒のデータが頭に入っているキースは、サローナに関する自分なりの評価をセレーネに話した。
「サローナは実戦を想定した場合、評価が分かれるタイプの騎士になるでしょうね」
「あの子は魔法障壁を扱う防御型の術士としては最高峰なのですが、騎士学校の評価基準ではルカさんやヴァング君に次ぐ順位にならざるを得ないのが不運です」
「ええ。鉄壁の第六騎士団あたりはその能力を非常に高く評価しそうですが――」
しかしながら貴族院の意向で配属が決まる関係上、サローナが第六騎士団に配属されることはまずない。
ネフティス家であればおそらくは第三騎士団か、あっても第八騎士団だろうと考えられていた。
しかしそれらの騎士団は魔物に対する高い殲滅力が特徴であり、サローナの持つ特殊な個性がそこで生かされることはおそらくないのである。
どのような魔法が上手く扱えるかは、個人の生まれ持った素養に強く影響される。それはつまり、努力をしても殲滅力の高い魔法が扱えるようになるとは限らないということであり、ひいては各騎士団が常に頭を悩ませる属人化の問題へと繋がっていく。
ちなみに騎士学校の評価基準の策定に関してはセレーネ自身も強く関わっているために、サローナが評価されない環境を作ってしまったことへの心苦しい気持ちはあったが、騎士団で広く活躍出来る能力を高く評価するという点には間違いがあるとは言えず、サローナの現状に関してはやはり不運というしかないのであった。
「――そろそろ生徒たちが入場してくる頃ですか」
セレーネがそう言うと、ほどなくして一年A組と三年I組の生徒が整列して場内に入場してくる。
広い闘技場の中央に相対して整列した両者は、代表であるエリステラとサローナが握手を交わした後に、それぞれ展開して陣形を構築していく。
前日から四倍に広がった陣地は、一年A組の三十人で守るには広すぎると言えた。
どこからも浸透されないように左右に広く展開すると全体が薄くなり、個人の力で突破されやすくなる。
しかし連携を取りやすくするために密集してしまうと、今度は包囲されて魔法で集中砲火される危険があった。
また前に出過ぎると陣形が縦に間延びしてしまい前後の連携が取れなくなるなど、陣地が広くなったことで戦い方が難しくなるのは間違いない。
そんな中で一年A組は後衛に三人だけ置き、残りは前衛と中衛に配置して厚みを持たせた密集陣形を組んでいた
「一年A組はやはり密集陣形を組むようですね」
「まあそれしかないでしょう。一年生は個の力で劣る以上、広く展開してしまえば各個撃破の餌食ですから」
セレーネの言葉に、キースは淡々と返す。
それはあらかじめ予想されていたことであり、だからこそ実力で劣る一年A組は何らかの奇策に打って出るのではないかと考えていた人間には逆の意味で驚きを与えた。それこそ順当に戦えば、三年I組が順当に勝つはずだと考えられていたからである。
一方の三年I組も密集気味に守備型の陣形を組む。元々人数が二十五人とわずかに少ないこともあり、密集陣形の一年A組による各個撃破を警戒した様子だった。
そんな相手の陣形を見た一年A組の生徒たちは、若干緊張したような表情を見せる。
「やはり手堅く来たか……」
「予想出来た中では一番面倒な形だな」
ラウルとユミールは陣地の最後方でそんな言葉を交わす。
これまでの試合であれば剣術の高い実力を買われて前衛や中衛を任されていた二人が、今回はエリステラのすぐ前にいるという小さな異変。
これに気付く者は観客席にも決して多くない中で、しかしサローナたちはしっかりと把握していた。
「……なるほど。そのやり方なら私の魔法障壁を突破出来ると考えているのですね」
そう呟いた中衛に位置するサローナは、左肩にかかるように片側にまとめた、ウェーブのかかった橙色の髪を一撫でする。
一年A組の情報はしっかりと調べて対策を練ったサローナたちからすれば、成績上位の三人が一か所に集まっているという異変を見逃すはずもなかった。
「――試合開始!」
審判を務める教師の一声で試合が開始されると、三年I組は中間距離からの攻撃魔法で前進しようとする一年A組の前衛の足止めを試みる。
しかし威力の低い速射魔法であれば、前衛と中衛が協力して魔法障壁を張ることで、相殺しながら着実に前進することが出来ていた。
ここまではどの試合でもよく見られる光景である――三年I組が前進しないことを除いては。
「……やっぱり相手は前に出てこない」
「私の速射魔法じゃ相手の魔法障壁突破出来ないし、この試合はあんまり出番ないかなぁ……」
「いやあるからね!? セリカは今回前衛なんだから剣構えてもっと前に出ないと!」
冷静に相手の出方を分析するリンナとは対照的に、自分の魔法が相手の魔法障壁で儚くかき消される光景にどこかしょんぼりした様子のセリカ。
前衛に身体強化魔法をかけながら魔法障壁の展開にも参加したりと大忙しのフェリは、そんなセリカに檄を飛ばす。
そうこうしているうちに、戦況は一回戦と似たような形になっていく。そんな中で、三年I組の後衛の二人が詠唱の早さと威力のバランスが取れた攻撃魔法を先手で放つ。
魔法の狙いは味方を巻き込む危険性がある前線ではなく、その後方で魔法を詠唱中のエリステラたちだった。この威力の魔法は一年A組が現在展開している強度の魔法障壁では防ぐことが出来ない。
これは三年I組によって考えられた一年A組対策であり、魔法障壁を貫ける威力の魔法で先手を取ることでエリステラの詠唱を妨害するのが狙いだった。
それはエリステラには三年生で最上位の術士であるヴァング以上の実力があることを認めた上で計算された、最善の一手。
「――させるかよ!」
エリステラの前方にラウルと並んで立つユミールがそう叫ぶと、体の前に剣を立てるように構える。
そうしてラウルと協力して展開された魔法障壁は、目前にまで迫った攻撃魔法を完璧に防ぎきった。
それから少しの間をおいて、エリステラが魔法の詠唱を完了させる。
「――アルバリ」
一回戦ではその一撃で三年F組の全員を丸飲みにした水と風の二属性複合魔法。戦術級魔法の名に相応しい大渦が三年I組の陣形の中心に放たれた。
しかし――魔力によって発生した水流が霧散すると、その中からは無傷の三年I組の生徒たちの姿が表れる。
「……やはり防がれましたか」
エリステラはその結果を予想していた様子で、冷静にそう呟いた。
防御のスペシャリストとしてサローナが評判に違わぬ実力を見せつけたことで、観客席は大きく沸きあがる。
本来であればエリステラのアルバリのような戦術級の魔法を防ぐことは極めて困難であるが、それを一人で可能にするのがサローナの最高峰と謳われる魔法障壁の所以だった。
そして同時に、アルバリが防がれたは一年A組にとって一つの事実を示す。
「――私がいる限り、魔法による突破はさせません」
サローナのその言葉には強い自負が込められており、三年I組の生徒たちにとってはこれ以上に頼もしい言葉もなかった。鼓舞された三年I組は高い士気を維持したまま、前線での戦いを継続する。
現時点の一年A組にはエリステラのアルバリを越える威力の魔法は存在しない。それが防がれてしまった以上、戦いは持久戦に突入する他なかった。
そして持久戦になれば個々の実力だけでなく、魔力容量や体力といった基礎鍛錬の積み重ねで伸びる要素の影響も大きくなり、それらは上級生である三年I組により大きな有利をもたらすことになる。
ここまで勝ち上がって来る際も三年I組はこうした持久戦に持ち込むスタイルで戦っており、本来防御要員に割くはずの人員をサローナ一人で賄えることから、前線での数的優位を作り出して確実に相手を削っていく。
積極的に勝ちに行くのではなく、徹底して負けない戦いを繰り広げる。それこそがこの日のために周到に準備された三年I組の戦術だった。
一年A組の生徒たちの表情には若干の焦りの色が見える。相手の得意な領域で戦うのは悪手というキースの教えが根底にあり、今の状況は三年I組の得意な領域での戦闘に持ち込まれたという意識が少なからずあったからである。
しかしそうした空気を一瞬で変えてしまうのがエリステラの指揮だった。
「ラウルとユミールは前に! フェリ、二人にも強化魔法をお願い」
「任せて!」
「ユミール、ここから反撃開始と行こうか」
「そうだな、守るのは俺たちの性に合わない」
クラスのエース級の二人を前線に投入することで、下がりつつあった士気を一気に高揚させる。一方の三年I組は、ここで前線の優位を確保したかったが元々の人数で劣ることと、一年生とは思えない巧みな戦術によってなかなか思うように戦えていない。
その間に三年I組の後衛から放たれた魔法は、エリステラと中衛の生徒たちが協力して魔法障壁を張ることで防御する。
そうしてエリステラが防御に回ったことで、エリステラの攻撃を常にマークしていたサローナは役割を無くした。サローナはエリステラと違い、戦術級魔法のような高威力の攻撃魔法を扱えない。しかし――。
「――私が二属性術士だと言うことを、忘れてもらっては困ります」
攻撃魔法が不得手とはいえ、三年生上位の実力者であるサローナがそれを扱えないはずもない。
そうして詠唱を開始した、その瞬間――。
「――アクアレイ!」
エリステラはそれを見透かしていたかのように、魔法障壁が薄くなっている箇所を狙って三年I組の前衛を攻撃する。
危険を察知したサローナはとっさに詠唱を破棄して魔法障壁を展開する。前衛を守ることには成功するが、しかしエリステラの一撃はサローナを驚愕させた。
「あの短時間の詠唱で、この威力ですか……」
アクアレイは魔力を一点に凝縮させることで敵の一体を確実に倒せる威力を持つ魔法だった。爆風などがなく範囲殲滅力は皆無だが、その分術式を構築する詠唱時間も短くて済むという利点がある。
サローナが詠唱を破棄してとっさに防がなければ、前衛の一人が昏倒させられていたのは間違いない。
とはいえ魔法障壁越しで相手を倒すほどの威力は本来ないはずであり、それだけの術式の効率化をエリステラが行っているという証左だった。そしてそれは誰もが努力すれば出来るといったものではなく、生まれ持った才能があってこそ為せることである。
――騎士は魔物を殺してこそ評価される。
エリステラの術士としての才能は、数多の騎士が渇望するものに違いなかった。そしてそれはサローナでさえも例外ではない。
しかし同様の驚きはエリステラにもあった。とっさに展開した魔法障壁で、あれほどの強度を誇るものを見るのは、キースを相手にしたとき以外では初めてだったのだ。
誰も傷つかない世界を追い求めるエリステラにとっては、サローナの人を守る才能もまた一つの理想に違いないのである。
いつだって自分が欲しいものは他人が持っている。とはいえそんなことを言っていても仕方がない。今この手にあるもので最善を為す。それを積み重ねること以外に、夢を叶える道は存在しないのだから。
今ある現実を見て、常に最善を追い求める。それこそがキースの教えの根底にある理念なのだとエリステラは、そして一年A組の生徒たちは学んできたのだった。
だからこそどんな地味な役割でも、生徒たちは高い士気を維持したまま献身的にこなす。それが今の自身に為せる最善であり、同時にそれをしっかりと見て評価してくれる人がいることを理解しているからである。
そうして高い連携力を見せる一年A組の前に、三年I組も決定打を欠いて膠着状態に陥る。前線でダメージを負った生徒は後退して回復ということをお互いに繰り返していた。
こうした前線での戦いでは剣術の実力が重要となるが、これは魔法とは異なり学年間の差がそれほど見られない。剣術においては三歳から剣を学び始めた者が五歳から始めた者に追い抜かれることも常であり、本人の才能や鍛錬、指導者に恵まれたか否かなど様々な要因で差が生まれる。そのため単純に学年や年齢で実力を測ることは難しいと言えた。
騎士学校に入ってから学ぶのは集団戦における仲間との連携が主であり、ルカのようなごく一部の例外を除き、騎士学校に入ってから急激に剣術の実力が向上することはない。
そうした面もあり、剣術に優れたラウルとユミールが前線に参加した一年A組は人数の優位も生かして被害なく戦闘を継続するが、しかしそれでも堅牢な三年I組の陣形を突破するには至らない。後衛の魔法もお互いが魔法障壁で防ぎ合い、両者が決定打を欠いたまま時間が過ぎていく。
お互いに体力と魔力を消耗していく中、このままいけば徐々に三年I組が優位に傾いていくだろうと観客席のほとんどの者が考えていたが、しかし先に動きが鈍ったのは意外にも三年I組の方だった。
その理由は一つ――三年I組の身体強化魔法が途切れがちになったからである。
長期戦になれば魔力の消耗は避けられない。そしてその消耗は激しく戦い続ける前衛の生徒たちではなく、彼らに身体強化魔法や魔法障壁などでの補助を行っている中衛の生徒たちにこそ重くのしかかる。
魔法が扱える人間は身体強化魔法が無くても、体内の魔力を循環させて身体能力を向上させることを通常時から行っている。これが出来なければ騎士学校には入学出来ないほどに重要な基礎能力であり、この能力次第では性別や体格差を容易く乗り越えることが可能となる。
とはいえ身体強化魔法とはそうした魔力循環による補助をさらに強力にしたものであり、あるとないとでは大きな差が生まれる。
「どうして一年生にこれほどまでの継戦能力が……」
三年I組の前衛の一人がそう呟く。それは戦っている全員が持つ疑問だった。
「みんな頑張って、もう少しだよ!」
「いや、一番頑張ってるのはフェリでしょ?」
クラスを鼓舞するフェリと、そんな彼女こそ一番頑張っていると言うセリカ。
それは決して誇張などではなく、実際この試合においてその多くの強化魔法はフェリによって行使されたものなのである。
フェリが持つ無尽蔵の魔力容量――それこそが三年I組が抱く疑問の答えだった。
魔法の威力も低く、剣術も不得手ということで戦闘においては地味で目立たないフェリだったが、彼女が持つ魔力容量は学校一であり、その一芸において高い点数を稼ぎ出したことで、入試で最も配点が高い攻撃魔法が満足に扱えなくても王立騎士学校に入学出来たという奇才だった。
しかしそんなことは入試成績を閲覧できる教師以上の人間にしか知る方法はなく、フェリ自身でさえキースから教えられるまでは知らなかったことである。
であれば当然ながら、サローナを含む三年I組の生徒が事前にそれを知ることは不可能であり、つまりフェリへの対策を練ることなど出来るはずもなかったのだ。
「俺が知っている過去の入試の基準であれば、本来フェリは不合格とされても不思議ではなかった……入試の基準を改定したのは理事長ですか?」
「ええ、そうですよ。魔法は個人の持つ才能に強く影響を受ける……だったら、ああいった尖った才能にだって輝ける役割がどこかにきっとあるはずでしょう?」
「ええ。実際フェリが今この瞬間クラスを救ったのは事実です」
「彼女のような例外の存在は、サローナにとっても想定外なはず……エリステラさんは、そこまで計算に?」
「おそらくは」
観客席で並んで座っているキースとセレーネは、落ち着いた雰囲気でそんなやりとりをする。
フェリの行使する身体強化魔法の効力自体は平均以下であり、瞬間的な補助能力では勝る術士も数多く存在していた。しかしその持続力は随一であり、一晩中であっても問題なく魔法をかけ続けられる。キースには魔力よりも先に体力が限界を迎えるだろうとさえ考えられていた。
そうこうするうちに、なおも活発に攻撃を仕掛け続ける一年A組はついに三年I組の前衛を突き崩すことに成功する。そうして一度陣形が崩壊して劣勢となった戦況を立て直すだけの力はすでに残されておらず、ほどなくして三年I組は降参を申し入れた。
「三年I組の降参により、勝者、一年A組!」
審判の声が大きく響き渡ると、観客席の生徒たちからは大きな歓声が沸く。
この戦いにおいても一年A組は被害を出すことなく勝利した。
過酷な持久戦の中、全員が長時間集中して戦い抜いた結果の勝利であり、その事実に一年A組の生徒たちは大きな充実感を得ている。
満足気に喜びながら控室に戻った生徒たち――しかしそこで待ち受けていたのは、信じられないような出来事だった。
「ねえエリステラ、大丈夫? ちょっと顔色悪いけど」
「フェリ……ええ、私は大丈夫――」
そこまで言ったところで、エリステラは気を失って倒れこんでしまう。
「ちょっ、エリステラ? エリステラってば!?」
慌ててフェリがその体を支えて呼びかけるが、エリステラが目を覚ます様子はない。
「みんな大変! エリステラが――」
――一年A組の絶対的なエースにして指揮官であるエリステラが昏倒。
それは午後に準決勝が控えている生徒たちにとって、先ほどの勝利の余韻すらも吹き飛ばすほどの重大な事態に違いなかった。