第62話 残された火種
1年越しの更新です。
文章力が下がってます。
イザナミがいなくなってからしばらくの間、誰も口を開くことはなかった。
光祐に集められて途中からやってきたアストレアのメンバーは今起こったことを整理するので精一杯だろう。
実際のところ、僕もよく分かっていない。分かっているのは自分が人を殺したこと、そして向こう側に”堕ちた”こと。いや、これも理解しているのではなく来世の僕に突きつけられただけだ。
頭の中で疑問が渦巻いていく。その疑問を解決させてくれるのは目の前で僕と同じように佇む雨瀬だった。雨瀬はアスファルトの上のイザナミの残り火をただじっと見つめている。
純葉がボソッと呟いた。
「何で家族を見捨てたのよ...」
それは親を失くしている純葉としては最もな疑問だった。
「ああでもしないと2人は戦うのを辞めなかったでしょ...黙って見ていたらどちらかが死んでいた」
雨瀬はこちらを見ずに言った。
「答えになっていないぞ」
僕は雨瀬の前まで歩いて詰め寄った。
僕の言葉を聞いた雨瀬はこちらを睨みつけた。
「私があいつらに脅された時点で家族の命はもう無いんですよ!あいつらは指を曲げるだけで簡単に私の家族の命を奪っていく!今更ネクストを裏切ったところでもう、どうしようもないんですよ、、、、!」
「じゃあお前は家族が殺されてもいいのかよ」
雨瀬は下を向いた。
「仕方が、ないんですよ......」
再び沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは陽菜乃だった。
「嘘、ですよね?
家族が居なくなってもいいなんて、そんなわけないよ。私だってお父さんとお母さん、それにお兄ちゃんがいなくなったら悲しいもん...。
それに、ほら、あなたの心はこんなにも泣いてるじゃないですか。家族には手を出すなって、何よりも大事にしてたじゃないですか。
だから、仕方がないなんて、そんなことで諦めていいわけないよ」
雨瀬の足元に黒いシミが出来た。
雨瀬が叫んだ。意味のある言葉ではない、ただの叫び。それでも雨瀬には何か心の壁を、自分の心に作った堅い壁を壊すことが出来たのだろう。
嘘を見破れる陽菜乃には雨瀬の作った本心を隠した部屋の中なんて簡単に知ることが出来た。
「雨瀬、お前がもうネクストと手を組まないと約束するならアストレアに戻ってくることを許すしお前の家族も殺される前に取り戻しに行く」
それを聞いた雨瀬は頬を伝う涙を拭いて言った。
「勿論です」
僕は雨瀬の事を完全に許した訳では無い。妹をネクストに襲わせたのは絶対に許せない。それでも雨瀬にも守らないといけないものがあるのは確かだし、雨瀬の気持ちを少しは分かるような気がした。
「そういえば雨瀬君、何でネクストは私を襲ってきたの?」
陽菜乃が聞いた。
確かに、何故今回陽菜乃が襲われたのかは謎だった。星海がイザナミになったのと同じように陽菜乃をネクスト側に付けさせようとしていたとしても、陽菜乃は嘘が見破れるだけだ。とても殺人をするようなことは出来ない。戦力にもほぼ入らないから敵戦力を削ぐ為なら他を潰しに行った方がいい。
「それは、私にも分かりません。ただ、晴明は人間の来世を見つけたら教えろと言っていたので何か理由があるのは確かだと思います」
「純葉、今のだけだとさすがに分からない?」
純葉はメガネを取り出すこともせず首を横に振った。
「ただ、イザナミは雨瀬を回収しに来ただけだったみたいなのでネクスト全体の目的ではないのかも知れませんね」
「そう...」
それでも真実に少し近づいたような気がした。ネクストの狙いも目的もまだ全然分からない。僕らはただ踊らされて戦力を削られているのかもしれない。だが、それはネクスト側も同じだ。僕らは確実に前世持ちを減らしている。
最後の戦いもそう遠くはないのかもしれない。




