第54話 巻き込まれる
陽菜乃が能力を使えるようになってから、僕らの間での隠し事は無くなった。少なくとも僕の方は陽菜乃に対して話をはぐらかすことは出来なくなった。
僕がいくら嘘をついても陽菜乃は見破ってしまう。「嘘を見破る」のは人間の本質のようなものだから、僕と同じで陽菜乃の能力も常に発動されている。便利なような、邪魔なような能力だ。
ある朝、僕がいつものようにリビングに降りて朝ご飯を食べていたとき、陽菜乃が僕に一言言った。
「今日、学校終わったら神社に行ってくる」
僕は当然首を横に振った。
「危ないからダメ」
そもそも、陽菜乃の身が危なくなるからアストレアにも入れなかったのだ。それなのに輪廻の世界に行かせたら意味が無い。
「アストレアの皆に守ってもらうんだから自己紹介くらいはしておかないといけないじゃん。それに、結生ちゃんと一緒に行くから」
なるほど、結生と一緒に行くのか。結生の能力があれば前世持ちの1人や2人くらいどうってことないだろう。
ネクストか現れないことを祈りながら、僕は陽菜乃が神社に行くのを了承した。
放課後──
僕と光祐は学校が終わるとすぐに神社に向かった。
光祐は最近はバイトにあまり行けなくなっていた。湊音の来世が完全には適応しなかったようで、たまに体調を崩しては学校を休んでいた。それでも輪廻の世界での哨戒は毎日行ってくれていた。僕は、光祐の体調が悪いときは休むように言ったが、光祐は聞かなかった。
神社に着くと、社の障子を勢いよく閉めた。
鈴の音と共に建物内の空気が変わった。
障子を開くとソファに座ったヒナノと、その横にスミハやマイ、ユキの女性陣が座っていて、その反対側にヨシナギやクローが座っていた。
「ヨシナギは頭が良い?」
「当たり前っす!」
「嘘ですね。結構下の方です」
「そんな、、!」
「じゃあ次ね。ユキって本当に京都生まれなの?」
「そや。生まれてすぐに引っ越したけど、家ではずっと方言やったさかいね」
「本当だよ。嘘は吐いてないよ」
「、、、、何やってるの?」
「あ、ハルキとコウスケ」
まさか僕が声をかけるまで気が付かなかったというのか。
「まさか!ただ盛り上がってたので先輩は後でもいいかなーって」
「それはそれで失礼だからね?」
「すまないっす。ハルキ達も加わるっすか?」
「何をやってるの?」
「皆の疑問に思ってることが本当なのか嘘なのか教えてもらってる」
「能力で遊んでる?!」
妹の能力を何だと思っているんだ。そんなツッコミが頭に浮かんだ。
まぁ、何はともあれヒナノも皆と仲良くなれたようで良かった。皆やヒナノの性格からしてもすぐに友好的にはなると思っていたが、まさか初日でここまでとは予想してなかった。
僕らが和気あいあいとする中、1人が席を立った。それに気付いたスミハが声を掛けた。
「あれ、アマセ。もう帰るの?」
スミハの声に振り返ったアマセは頷いた。
「えぇ。これから用事があるので今日は帰ります」
「そうなんだ。じゃあお疲れ様」
特に引き止めるような理由も無かったので、僕は「お疲れ様」と手を振ってアマセを見送った。
「僕らもそろそろ見回りに行こうか」
僕はマイに言った。マイは「分かったわ」と言って席を立った。
「俺も哨戒に行ってくる」
コウスケも立ち上がった。
「行ってらっしゃい」
「行ってくるよ。そっちも作戦任せたよ」
「分かってる。もう少しでまとまるから期待してろよ」
クローは親指を立ててみせた。
僕らはスミハ達に見送られて神社から出た。
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「やっと見つかったか」
「何か探してたのか、セイメイ?」
リガルディの質問にセイメイはあやふやに答えた。
「やっと僕の目的が果たせるよ」
「へー。で、それをこいつが見つけてきたのか?」
リガルディは部屋の入口を指差した。
「そうだよ。結構役に立つんだよ?」
「もうそろそろいいだろ。早く返してくれ」
指差された少年は焦りの混じった声でセイメイにそう言った。セイメイは不敵に笑った。
「もう少し待ってくれないかな?じゃないと君の大事な家族が危ないよ?」
「家族にだけは、手を出すな!」
少年は叫んだ。普段の静かな面影は無い。
「そう叫ばずにさ、仲良くやっていこうよ。ねぇ、フック?」
「その名前で呼ぶな!」
フックと呼ばれた少年は今にも噛みつきそうな勢いだった。対するセイメイは目を細めて笑っている。
「やっぱり君の尊敬する人のライバルで呼ばれるのは嫌なんだ?でも、君には似合ってると思うけどね」
セイメイはそこで短く言葉を切った。そして、笑顔のままこう続けた。
「これからもよろしく、アマセくん」
ロバート・フック・・・自然哲学者であり建築家。フックの法則を発見したり、生体の最小単位を「細胞」と名付けた。




