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輪廻の扉  作者: ゑ兎
第4章
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第51話 陽菜乃5




 不思議な、空間にいた。

どこまでも白い、白い白い空間。時々ジジジッとノイズが混ざって黒い砂嵐が現れたりしている。


「えっと、私は何をしてたんだっけ、、、、?」

頭を振って記憶を振るい出してみる。


「そうだ、私学校で授業聞いててそれで、倒れちゃったんだ、、、、」

 じゃあこの空間は病室なのだろうか。それにしてはベッドも無いし、出入口も見つからない。


「どこなんだろう、何かないのかな?」

 私は空間の中を探索しようとして立ち上がった。そのとき、視界の端で何かが動いたような気がした。一瞬ノイズかと思ったけれど、振り向くとそうではないことが分かった。

 暗くてよく分からなかったけれど、何か映像が流れているようだった。

「この景色って、、、、」

 映像のバックに映っている景色は見覚えのある駅前だった。手前では女の子が何かと戦っていた。


「え、、結生ちゃん!?」

 私は、映像の中で結生ちゃんが男の人をバッタバッタとなぎ倒していく姿を見た。これは夢なのかな?


 映像が1つ増えた。今度は濃い霧の中で佇む見覚えのある少年の姿だった。

「お兄ちゃん、、、、?」

 音は聞こえなかったけれど、誰かと話しているようだった。

 また1つ映像が増えた。映像はどんどん増えていく。その全てに私の知らない春輝の姿が映っていた。


 気が付くと私のいる空間は真っ暗になっていた。手足の先の方から闇に飲み込まれていく。


「いや、、!やめて!まだ私は!」

 私は懸命に両腕を動かしてもがいてみたけれど、体はどんどん闇に消えていってしまった。


「まだ私は!お兄ちゃんに言えてない!!」


 私がそう叫んだ時、暗闇にヒビが入った。ヒビはどんどん大きくなっていった。

 それと共に私は、胸の中が温かくなっていく感覚がした。

 やがてヒビが暗闇全体に広がりきると、パリンと音がして暗闇が割れた。


 崩壊する暗闇の外から白い光が溢れ込んでくる。私は不思議と眩しくは感じなかった。

 光が引いて周囲が鮮明に見えるようになると、さっきまでとは違う映像が辺りに流れていた。


 自分の知っている兄の姿だった。


 頭を撫でてくれて、泣いたときは抱きしめてくれて、クラスの子に悪口を言われてたときに助けに来てくれて、家のことを手伝ってくれた、そんな優しいいつもの春輝の姿だった。


 自分の気持ちに今、気がついた。

私はここに映されているような優しいお兄ちゃんともっと一緒にいたかったんだ。

 お兄ちゃんの帰ってこない間、私達の家はすごく静かだった。話したいことも沢山あったし聞きたい話も沢山あった。

 私は寂しかったんだ。

私の知らないところにどんどん行ってしまうお兄ちゃんが羨ましかったんだ。


「この気持ちが伝えられたらいいのに、、、、。でもここからどうやって出ればいいんだろう?」


 そんなことを考えていると、ふいに左手が熱くなった。

「え、何!?」

 私は驚いて左手を見た。

手の甲に見たことのない模様が浮かんでいた。


「何だろう、これ、、、、?」

 変な形の模様をマジマジと見つめていると、さっき流れてた映像の中でも同じようなものを見たことを思い出した。


「もしかしてこれって、結生ちゃんと同じ、、、、?」


 まさかとは思いつつ、頭の中にふと浮かんだ単語を口に出してみた。


「真実剥離」


 突然模様が白く輝き出した。

「何これ!?」

 いきなりのことに驚いた私は腕をブンブン振った。すると、白い空間は泡のようにどこからともなくどこかに流れていった。


 私の意識も同じように溶けるように消えた。




**********




 神社に着くと中には誰もいなかった。僕はベッドのある部屋へと直行する。

 ヒナノはベッドに寝かされてしっかりと掛け布団もかかっていた。寝返りをうった跡は無かった。

 全く動かずに寝息をたてるその姿は、一瞬死んでいるのではと見間違えるほどだった。

 僕はヒナノの手を握った。少しでも他人の体温に触れている方が安心するとどこかで聞いたからだった。

 それに、僕の能力で少しはヒナノに宿った来世の負担を消してあげようと思った。


 僕はそれから分身の陽菜乃が退院するまでの3日間、ずっとヒナノの側を離れなかった。

 ユキが作戦を終えて帰ってくると、僕達は2人で数日おきに交代しながらヒナノの看病をした。


 ヒナノが目を覚ましたのはそれから2週間ほど先のことだった。




結生&光祐「あの作戦、春輝達の両親のお見舞いへの対応が1番大変だった!」


らしいです


陽菜乃編の続きは少し間を空けてまた書きます。

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