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輪廻の扉  作者: ゑ兎
第4章
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第50話 陽菜乃4




「どうやるんだ?ここは病院だぞ?」

 光祐が僕に聞いた。

僕は思いつき、頭の中で完成されていた作戦内容を1つずつ話すことにした。


「まず、光祐が湊音の能力を全部使えることが前提条件になるんだけど、出来る?」

『問題無い。俺もまだ能力は使えるみたいだから、光祐がダメでもバックアップ出来るぞ』

「了解」


「じゃあ説明に移るよ。まず、、、、」


 僕が話をしている間、光祐と結生は静かにしていた。途中何度か相槌を打ったりしながら聞いていた光祐だったが、自分の多忙さに明らかに嫌そうな顔をしていた。


 2人が顔をしかめるのも分かる。なにせ今回の作戦、光祐と結生の能力が常に必要になってくる。持久力を考えると、なるべくスムーズに物事が進んでくれないと失敗する可能性がある。それだけ重要な役割なのだ。

 残念ながら僕の能力は対能力者型なため、今回の作戦で出番はほぼ無い。


「じゃあ、始めるよ、、!」

 病室の付近に誰もいないのを確認すると、僕らは作戦を開始した。


「光祐!」

「あぁ!湊音、バックアップ頼む!」

『任せろ』


「幻影瞬歩!」


 光祐の左手の紋様が白く輝き出した。今まで見た光祐の紋様の色は黄緑だったが、1ヶ月前の戦いで湊音のコアが移植されたことで来世が変わった。それによって能力も治癒系から湊音の持っていたものに変わったのだった。

 光祐の影がより一層大きくなって、ベッド全体を覆う。影はそのまま陽菜乃を覆い尽くすと、元の大きさまで縮小していった。ベッドから陽菜乃の姿は無くなっていた。

 光祐は、僕らが初めて輪廻の世界に行ったときに湊音が光祐を取り込んだのと同じように陽菜乃を自分の影の中に取り込んだのだ。


「他人の能力使うって変な感じかと思ったけどそうでもないな、、、、」

『今はもう俺の来世じゃなく光祐のだからな。適応されたんだろう。それよりも、行くぞ』

「ん。じゃあちょっと送ってくるからそっちも頑張れよ!」

 光祐はそう言うと病室の扉を開けて廊下の床に飛び込んだ。光祐の体はプールに飛び込んだときと同じように、するりと床に消えていった。


「さて、光祐が神社に行ってる間にこっちも進めようか」

 ただ陽菜乃を病室から運び出しただけではすぐに医者や看護婦に見つかってしまう。

 そこで必要になってくるのが作戦の第2段階、結生の能力による偽装だ。


「結生!」

「任せて!」


「鋼格分魂!」


 結生の左手の紋様が薄いピンク色に輝き出した。

 僕が結生の能力を実際に見るのはこれが初めてだった。本人の自己紹介のときに能力の内容は軽く聞いていたけれど、実際にはどんな感じになるのかは分からなかった。


 結生は胸に手を添えた。その手をゆっくりと胸から離すと、胸の辺りから白いふわふわとした球状の物体が1つ出てきた。一瞬コアかと思ったけれど、オレンジ色でも群青色でも無かったから、違うと分かった。


 白い物体は結生の正面でしばらくふわふわと宙に浮いていたが、すぐに変化を始めた。

1つの球だった物体に縦に切れ目が入って2つに分かれた。さらにその状態から2分割ずつされていき、元々1つだった物体は小さな粒の集合体となった。

 それと共にテニスボール程だった物体は大きくなっていき、最終的には結生とさほど変わらない大きさの人形に変わっていった。薄目で見れば実物大の人形にしか見えないほどになった物体の足の方から、まるでスクリーンに映像を写すかのように陽菜乃の姿へと変わっていった。

 そうして陽菜乃の分身が出来上がった。


「すごい、、、、!」

 そんな感想が自然と口をついて出ていた。

 10年以上一緒にいた僕でさえすぐには本物の陽菜乃と区別がつかないほどそっくりだった。


「うちの魂を分けて作ってんさかい、適当なものにはしたない」

 結生はそう言いながら指を振った。分身の陽菜乃が歩き出した。しかしどこかぎこちない。

「他人の体はうちのとは別物やさかいね。最初は慣れへんねや」

「そうなの?」

「そうやで」

 分身の陽菜乃はカクカクした動きをしながらベッドに入っていった。目を閉じて動かなくなったその姿は、僕がここに来たときと全く変わらない陽菜乃そのものだった。


「完璧だね。あとは喋ることが出来ればこの先に進めるけど」

「大丈夫やで」

 結生は即答した。ここまではっきり答えてくれると僕の方もやりやすかった。


「じゃあ次にいくよ。陽菜乃を起こしてくれる?」

 結生がまた指を振ると、陽菜乃は目を開けて上体を起こした。少し眠そうなボケた顔をしているのを確認すると、僕はナースコールを押した。


 ナースコールを押してから数分も経たない内に看護婦が1人やってきた。陽菜乃の姿を見て安心した表情を浮かべていたけれど、一応説明をしておいた。

「さっき目が覚めたんです」

 勿論嘘だ。本人の方はまだ神社で寝かされているだろう。

 それでも僕の嘘はバレなかった様で、看護婦はうんうんと大きく頷いていた。

「一応少し検査するわね」

 看護婦のその一言で僕は一瞬固まったが、陽菜乃のおでこや脈拍を測っていた看護婦の顔がしかめられることは無かった。


「大丈夫そうね。あと3日もすれば退院出来ると思うわ」

 そう言って看護婦は部屋から出ていった。

僕と結生は大きく息を吐き出した。病院の方から何と言われるかが1番心配なところだっただけに、安堵も大きかった。

 あと3日乗り切れば作戦が終わる。

今までの作戦とは違って今回は長期戦になるが、そこまで危険じゃないからやり通せるだろうと思った。

 そこに光祐が帰ってきた。


「あと3日か、、、、持てばいいけど」

 この後2人は陽菜乃が退院するまでこの病室にいなくてはいけない。結生は分身を監視するため。光祐は夜間に結生を隠すためだ。

「光祐は夜だけなんだからいけるでしょ。結生はけっこう厳しいかもしれないけれど、、、、」

「うちは陽菜乃のためなら全然いける」

 結生は左手を握りしめた。紋様が強く輝いた。


「僕はここではもうすることがないから陽菜乃のところに行っても大丈夫?」

「あぁ、行ってこい」

「うちの分も頼んだで!」

 2人が快く了承してくれたから僕はすんなりと病室を後にすることが出来た。


 病院を出た僕は神社に向かって走り出した。

僕は僕でやれることをしよう。


 僕はより一層足を速めた。




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