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輪廻の扉  作者: ゑ兎
第4章
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第48話 陽菜乃2




挿絵(By みてみん)


 病室にはベッドで眠る陽菜乃と、その隣に座っている結生(ゆき)がいた。


「何で結生が?」

「何で春輝が?」

 僕と結生は同時に同じ質問した。少しの間沈黙が流れる。


「陽菜乃は僕の妹だけど」


 僕がそう言うと結生は驚いた顔をした。

「え!そうなん!?」

「結生は?」

「うちは陽菜乃のクラスメイトや。まさか春輝が陽菜の兄やったとは思わへんかった」

 僕も陽菜乃と結生が知り合い、それも友達同士だったとは思いもしなかった。意外と僕の周りの人の輪は小さいのかもしれない。

 僕は椅子をもう1つ持ってくると、ベッドを挟んで結生とは反対側に座った。


「それで、陽菜乃は?」

「今は眠ってん」

「何で倒れたのかは分かる?」

「医者は『過労だろう』って言うとった」


 やはりそうだったか。

最近というわけではないが、陽菜乃は家事全般を行うことが多かった。両親は共働きで朝早くから夜遅くまで家にはいない。

 僕も手伝ったりはしていたがそれでも食事系は陽菜乃に任せっきりなところがあった。

 そういう日々の疲れがここで一気に襲ってきたのだろう。

 陽菜乃に申し訳ないなと思った。


「医者はそう言うとったけど、うちは他にも理由がある思てん」

 結生はさらに言葉を続けた。


「春輝、最近家に帰ってへんでね?」

「、、、、!?」

 確かに僕は最近家に帰らないことが多かった。家に帰らずに神社で寝泊まりをして、そこから直で学校に行っていた。事実、今日もそうだった。

「陽菜が言うとったで。『最近お兄ちゃんが帰ってこない』って。陽菜は心配しとったんやで」


 あぁ、そうか。僕は妹にまで迷惑をかけていたんだ。僕の軽い考えのせいで陽菜乃に心配をさせてしまったんだ。それなのに僕は陽菜乃がこんなになるまで気付かなかった。

 兄失格だ。


 結生は陽菜乃の顔を見た。

「春輝は昔はどうやったのかは知らへんけど」

そこで言葉を切ると、結生は僕の方を向いた。


「今はもう1人ちゃうんやさかい、もっと周りを大切にしいひんと」

 そして結生は笑顔を見せた。


「1人で何とかしようとしいひんで、周りを頼ってええんやさかいね」


 結生の言葉はまったくその通りだった。

僕は色々なことに対して1人で抱え込もうとする癖がある。今だって僕は陽菜乃のことを自分だけでなんとかしようと思っていた。

 今までこんなに多くの仲間や友達に囲まれたことは無かったし、不安を打ち明けられる人も家族か光佑くらいだった。だから、誰かを頼るということをしなくなっていた。

 だけど今はもう違う。こんなにも沢山の仲間がいるじゃないか。同じものを持っている、心を緩せる仲間がいるじゃないか。


「結生、ありがとう」

「どういたしまして」


 痛みは皆で分け合う。喜びは皆で分かち合う。そんな仲間に僕は囲まれた。


 僕はせめて可能な限り陽菜乃のそばにいようと思った。


 少しでも楽になってほしいと思って手を繋いでいてあげようと思って陽菜乃の腕を掛け布団から出したとき、あることに気が付いた。


「え、、、、?」

「どないしたん?」


 僕の声に結生が身を乗り出した。僕は結生にも見えるように陽菜乃の腕を上げた。

 結生は陽菜乃の手を見ると目を大きく見開いた。明らかに動揺していた。


「そんな、、、、何で!?」


 僕も同じ疑問が頭の中を駆け巡っていた。


 なぜ陽菜乃の左手にあの紋様が浮かんでいるんだ???


 最近は見慣れていたから最初はあまり変に思わなかった。だけど、これが陽菜乃にあるのはどうしても理解出来なかった。


 陽菜乃は過労と日々の不安から倒れたんじゃなかったのか?少し休めばまた元気になるんじゃなかったのか?何でこんなことになってしまっているんだ?


 僕は軽くパニックに陥った。


「とりあえず、湊音(みなと)を呼んで!」


 結生の声で僕は我に返った。僕はスマホを取り出すと病室から出て光祐に電話をした。

 学校はちょうど休み時間だったようで、光祐は電話に出た。僕は湊音に用事があること、緊急であること、助けてほしいことを伝えると電話を切った。

 今は陽菜乃のそばにいなくてはいけない。僕は病室に戻ると陽菜乃の手をしっかりと強く握りしめた。




 しばらくして光祐が入ってきた。

「いきなり呼び出してどうしたんだよ、、、、」

 授業だってまだあるのに、と愚痴をこぼす光祐だったが、ベッドで眠る陽菜乃の姿を見ると口を閉じた。

 光祐も陽菜乃のことは知っている。何度も僕の家に来ているから話もしたことがある程だ。

 だから、この光景を見て光祐も僕と少なからず同じような気持ちになったはずだ。


「あんまり妹に無茶させるなよ」


 光祐も結生と同じようなことを僕に言った。


『それで、俺に何の用だ?』

 光祐の影が不自然に伸びる。病室は電灯で部屋全体明るいのに光祐の影だけはくっきりと床に張り付いている。


「湊音、これを見てほしいんだけど、、、、」

 湊音の視覚と光祐の視覚は共有されているはずだから僕は光祐に見えるように陽菜乃の左腕を傾けた。

 湊音はその手を見るなり、一言呟いた。


『まずいな』


その一言が僕の心をきつく締め上げた。




自分で描いておいてあれだけど、結生ちゃんめっちゃ可愛い

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