第46話 空回る考え
2週間──
僕は学校帰りのマイと巡回に出ていた。
こちらの世界にネクストが現れたのは今のところ1回しかないが、警戒はするに越したことがない。
ここ2週間毎日街の見回りをしているが、まだ異変は起きていない。
「ハルキはこっちでウィルに遭ったことがあるから知ってると思うけど」
「うん?」
僕の隣で歩いていたマイが唐突に話だした。
「現実世界でも能力は使えるから。私も何かあれば使うかもしれないから気を付けてよ」
「分かった」
僕ならきっと大丈夫だろう。僕にはマイの毒は効かない。
「私の針で蜂の巣にされても知らないわよ」
そっちの能力の方だったか。針はさすがに僕でも無効化できないから気を付けなくてはいけないと思った。
「そういえばさ、前に話してくれたことなんだけどさ、、、、」
「何?」
マイの家の近くを通ったとき、ふと前にマイが僕を呼び出したときのことを思い出した。
「今はこっちの世界に戻ってきて学校に行ってるみたいだけど、その、、」
僕が先を言いづらそうにしていると、マイが僕の言葉を繋いだ。
「いじめは大丈夫なのかって?」
「、、、、うん」
マイはいじめが原因で自殺をしようとして、気が付いたら輪廻の世界にいたと話をしていた。
アストレアが助けに行くまでずっと現実世界には戻れなかったわけだから、当然高校にも行っていなかったわけだ。
その間こっちの世界でマイの所在についてどのような処置をしていたかは知らないが、久しぶりに戻ってきたとしていじめが無くなったとは考えにくい。
「そのことならもう大丈夫よ」
「え、、、、そうなの?」
「転校したからね」
あぁ、なるほど。
マイは現実世界に帰ってきて元の環境に戻るのを拒んだんだ。
いじめから克服するのではなく逃げを選んだんだ。
別にそれが悪いとは言わない。生きるために、自分の身の安全を確保するための逃げは全くダメな事じゃない。でもずっとそのままでいるのは良くないと思う。
いつかは自分の力で断ち切らないといけない。
「ハルキが手を貸してくれるならそれも考えるわ」
「それは、、、、」
「一緒に抗議してとかじゃないわ。背中を押してくれるだけでいい。それがあるだけで私はきっと立ち向かえるから」
それくらいなら僕にも出来そうだと思った。
僕がきっかけを作ってあげられるならいくらでも手を貸してあげようと思った。
日が沈んでも街は明るく輝いている。
相変わらず人は多い。
比較的新しい街にこれだけの人の多さというのは他の地域から来た人にとってみれば驚く程だろう。
この中で僕らのように輪廻の世界に足を踏み入れてしまう不幸な人はどれほどいるのだろう。
来世を持ったことによってネクストに狙われる人もいるだろうし、逆に前世を持ってしまったことで僕らの保護出来ない範囲に行ってしまう人もいるだろう。
何も知らないまま誰もいない世界に迷い込んで僕も最初は混乱した。それでもソラとミナトが助けてくれた。
だけど、僕と違って助けがないまま死んでしまう人も出てくるだろう。
僕らはそれを防がなくてはいけない。
この広い街の中から前世を持ってしまう人、既に持ってしまった人から何も持たない人を守らなくてはいけない。
現実世界とか異世界とか関係無しに殺人はしてはいけない。
元々普通の人だったのに前世持ちになったことで衝動に駆られることもあるかもしれないから、前世を持ってしまう人が一概に悪いとは言えない。
正義なんてものは1つじゃない。
それでも僕は来世保持者である以上前世持ちを悪とするしかないのだ。
僕と同じものが仲間でそれ以外が敵。
そうして分けていかないといけないのだ。
僕はこの任務をしているときとても悩まされるのだ。
そうして今日も巡回を終えた。この日も何も起こらなかった。
このまま何も無いのではないかと思いながらも僕とマイは明日も巡回を行う約束をして別れた。
最初のは襲撃事件から2週間経ったという意味です。




