第45話 廻り始める夜明け
あの襲撃事件から1週間。
ネクストは全く動きを見せなかった。
輪廻の世界での哨戒中も出会うのは迷い込んだ一般人とネクストのメンバーではない前世持ちの数人程度だった。
泥人形は1体も見ていないし、驚いたことに迷い込んだ一般人の中に来世保持者が1人もいなかった。
来世を持つ人がそれほどまで少ないことに驚かされた。僕らが来世を持ったことが奇跡のようなものだ。
皆自分の任務を行ってくれていた。
たまに神社で話をしたりもした。
皆笑顔だったり和気あいあいとした雰囲気だったが、多分皆無理をしている。
ソラがいなくなったことによる心の穴はすぐには埋まらなかった。それはみんなも同じはずだ。
そんな心情の僕はしばらく学校を休もうと思っていた。
しかし、ミナトやクローがそれを止めた。
『学校の友達との絆を大切にした方がいい。いつ失うかは分からない。今のうちに出来るだけ関わっておいた方がいい』
「それに、学生時代は1度しかないからな。もっと青春を楽しみな」
そんなわけで僕は今日も学校に向かうのだった。
高校はいつもと変わらず平穏だった。
何がある訳でもない。ただ授業を受けて休み時間は友達と話をして、放課後になったら帰る。
学校に来たことで、つい最近まで溜まりに溜まっていたストレスが少し和らいだ気がした。
何も変わらない日常だ。
何も起こらない平穏だ。
僕にはそんな"日常"でさえ愛おしかった。
心の傷や不安なく毎日を過ごすことが出来る皆が少し羨ましかった。
少し少なくなったクラスメイトの会話の輪に耳を傾ける。
「昨日さーTPSやってたらオールしてたんだよねー」
「マジか!それで勝ったん?」
「最高で2位だったー」
「惜しい!」
ゲームの話。
「今何のアニメ見てる?」
「最近は見てないなー」
「前は何か見てた?」
「あの自動人形のやつ」
「あーあれか!良かったよなー!」
アニメの話。
「最近彼氏が全然電話してくれないんだよねー、、、、」
「きっと忙しいんだよ!気になるなら聞いてみようか?」
「ううん、もう少し待ってみる」
カップルの話。
色々な人がいる。
皆自分の趣味や好きな物、夢を話している。
何人がその趣味をいつまでも貫けるだろうか。
何人が同じ人を愛し続けられるだろうか。
何人が夢を叶えられるだろうか。
人の脆く儚い一面を見てしまったことでそう思ってしまった。
僕達は永遠に生き続けることは出来ない。
いつかは必ず死ぬ。
それなら今ある有限の時間をもっと有意義に過ごすべきだ。
僕は心の中で彼らに語りかけた。
現実世界での駅前は今までと何ら変化は無かった。今日も人の往来は絶えない。
八百屋のお兄さんも元気に呼び込みをしている。
僕は改めて「輪廻の世界」という異世界を実感した。




