第37話 ミナト・後編
ミナトは人形使い・セイメイを倒そうとするが刀使い・オノに行く手を阻まれる。
影化を駆使してオノを追い詰めていたミナトだったが、ミナトが認識するよりも高速で振られた日本刀によってミナトは右腕を切断されてしまった。
体が熱い。
耳がジンジンする。
心臓は必死に血液を送り出そうと鼓動を速めている。
上も下も無い暗い空間でミナトはうずくまる。
着ていた服の袖をちぎって傷口に被せた。
布はすぐに血液で湿った。
ミナトは必死で考える。
あの速度の斬撃をどう対処すればいいのか。
「片腕は失った。体のバランスが悪いから斬り合うのは分が悪い、、、、。ならば」
ミナトは立ち上がる。
片腕しかないのならば実体で戦ってもどんどん体の部位を失うだけだ。
影のまま戦うしかない。
「いつまで影に隠れているんだい。そろそろ出てきたらどうだ?」
オノは欠伸混じりの声でそう言った。
すると、それが合図になったかのように日本刀が1振りオノ目掛けて飛んできた。
オノは自分の刀で弾こうとした。
しかし、オノの刀は飛んできた日本刀をすり抜けた。
日本刀はそのままオノの前を通り過ぎて向こうの闇に消えた。
今度はオノの横から刀が飛んでくる。
今回もやはりオノの刀はすり抜けた。
「なぁ忍者さんよ、ふざけているのならそろそろ終わりにしないか?」
『あぁ、そうだな。終わりにしよう』
ミナトが姿を見せる。
いや、正確には"ミナトの姿をした黒い影"だった。
黒いミナトは持っていた武器を忍者刀から日本刀に変えていた。
ミナトはオノに向かって走り出す。
オノは刀を軽く握り直し、腰を下げると日本刀を脇に構えた。
「ハッ、、、、!」
「シッ、、!」
刀が交差する。
ミナトは利き腕を失って左手で刀を握っていたためオノに押し負けてしまう。
オノは振り上げた腕を素早く引き戻してミナトの腹に斬りつける。
しかし、その刀はミナトの体をすり抜けただけだった。
「刀だけ実体化させたか」
「フッ!」
ミナトは日本刀を手裏剣に変化させて至近距離からオノの喉に投げつけた。
「くっ、、、、!」
オノはとっさに避けて被弾する場所を喉から左肩にずらした。
手裏剣はすぐに消えた。
ミナトの能力では武器を同時に1つまでしか生成出来ないからだ。
オノの攻撃がミナト本体に入らないため一見ミナトが優勢にも思えるが、切断された部分から血液を失いすぎて機動力が下がっていた。
さらに、意識も若干朦朧としている。
多分、次が最後の攻撃になる。
自分の体力の余力からミナトはそう判断した。
次の1刀に全てを乗せる気持ちでミナトは再び疾走した。
ミナトはオノを斬ることは想像しなかった。
走って付けた勢いのままオノに突き刺す作戦だった。
それ以外は何も考えていない。
「ハァッ!!」
腕を突き出す瞬間、膝に力が一瞬入らなくなった。
刀を握る手がブレる。
コアを狙っていた刀の先端が左の方へずれた。
オノは持っていた日本刀を捨てて、右手のひらでミナトの打突を受け止めた。
「何故だ!何故刀を捨てた!」
剣士にとって刀を捨てることは論外。武士を辞めると言っているようなものだ。
それなのにオノはいとも簡単に刀をほっぽった。
ミナトの不満が溢れても当然だった。
しかし、オノはミナトの言葉には動じなかった。
「これで、いいんだよ」
「グッ、、ゥ、、、、!」
ミナトの腹に日本刀が突き刺さった。
その日本刀は、オノが手で受け止めたミナトの刀の枝分かれしたものだった。
「俺は、俺が持っている日本刀の形を変えられるからね。自分で持っていなくてもこれで済むんだよ」
「なんで、、、、幻影が、、?」
「光に形は無いけど、光を構成する素子はある。だから原子レベルで斬った」
「そ、、んな、、、、。クソ、、、、!」
ミナトは刀から手を離すとヨロヨロと後退した。
とうとう屋上の端まで来ていた。
後1歩でも下がれば地上へ向けて落ちてしまう。
ミナトは下を見た。
ソラはリガルディと戦っていた。
クロー達も人形を突破して前世持ちと交戦しているようだった。
ハルキ達はマイに合流していた。
最後に自分自身を振り返ってみた。
「俺はソラとの約束は守れそうにないな、、、、」
「すまない、、、、」
そして、ミナトは身体を宙に預けた。




