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輪廻の扉  作者: ゑ兎
第1章
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第1話 今日というある日




『将来の夢、、?』


『そう、あなたは将来とか来世があるとしたら何になりたいの?』


『うーん、、、人間!』


『人間?』


『うん!先生は?何になりたい?』


『そうね、私は──』











-放課後-



 ファミレスで特にすることも無くただぼーっとしていた。ここにいると落ち着く。

 他の客達の明るく弾む会話、カチャカチャと鳴る食器、それらの音が毎日のストレスだとかを洗い流してくれる。


 注文したコーンスープの表面に薄い膜が張ってきた頃、後ろの席の女性2人の会話が耳に入ってきた。

「また遺体が見つかったらしいよ」

「最近ニュースになってるアレ?」

「そう、連続殺人事件。今回の現場はここからそう離れてないらしいよ」

「早く捕まってくれないかなー」

 もう1人もイヤだねーと、意見の一致を行ったところで2人組の会話は他のものへ移っていった。

 確かに最近この街で殺人事件が起こっている。


 ここ柳市は結構大きい。つい1ヶ月くらい前、隣の小さな街を吸収して更に面積を広げたらしい。

 そのせいかは知らないがこの街で起こる事件も増えた。その中でも一番大きな事件が今の話の殺人事件だ。

 今まではここから正反対の方向で起こっていたため他人事と高を括っていたが、今の会話によると今回はかなり近いらしい。

 気をつけなくてはいけないかもしれない。


 しかし、今回で一体──

「一体何回目だ?」

 突如横から聞こえた声に驚いて膝を机にぶつけた。ほとんど飲んでいない水がコップから跳ねて机を濡らす。

 ズレたメガネを直しながら横を見ると、店員の格好をした光祐(こうすけ)が料理片手に立っていた。

「外で待ってろっていつも言ってるだろ」

「ごめんごめん」

 溜息をつきながら料理を机に置く光祐に、あははと笑いながら謝る。


「もう少しであがれるからそれまで待ってろよ?」

「分かってる」

 そう言うと光祐は厨房の方へ消えていった。


 机に目を戻すとさっき光祐が置いていった料理が置いてある。それを注文したのは僕で間違いないが、食べるのは僕ではない。

 僕はすっかり冷めたスープとパンを食べ始めた。


 しばらくすると学校の制服に着替えた光祐がやって来て僕の前に座った。そしてそのまま何も言わずにさっき自分で運んできた料理を食べ始める。

 僕は無言で食べ続ける目の前の少年を眺めていた。


 ファミレスを出ると外はすっかり暗くなっていた。

 僕と光祐は駅に向かって歩いていた。


 前を歩く光祐が立ち止まって、「そういや春輝、」と僕に話しかけてきた。

「何?」

「お前って来世とか信じる?」

「来世?信じない訳では無いけど」

「そうか」

 そう言うと光祐は肩を若干震わせた。隣まで追いついて顔を見ると笑っていた。

「なんかあった?」

そう聞くと光祐は教えてくれた。


「昨日部屋の押入れ漁ってたら小学校の卒業アルバム出てきてさ、中見たら自分のクラスの俺の一言コメントのとこに来世は暗殺者になりたい、って書いてあって、なんか幼稚だなぁって思ったら可笑しくて」

また光祐が笑いだしたから

「ファミレス店員の間違いだろ」

と言ってやった。

頭部に平手打ちを食らった。

 僕は来世に何になると書いたのだろうと考えながら駅へ歩いた。




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