第36話 ミナト・前編
ビル同士の隙間を風が吹き抜けていく。
眼下で繰り広げられている戦いとは逆にとても冷たい風だ。
そんな風を全身に受けながらミナトはビルの屋上に立っていた。
人形使いを探すのにはここが1番見渡しやすい場所だった。
「どこだ、、、、どこにいる」
地上をくまなく探すがそれらしい人物は見つからない。
残る選択肢は建物内にいるか、ミナトと同じように屋上にいるかの2つだった。
建物内にいたとしたらここから探すのは難しいと考え、ミナトは視線を地面から離した。
そのとき、視界の端で何かが動いたような気がした。
ミナトはすぐにその方向を見やる。
確かにその方向に霧ができていた。
ミナトはそれがシェイクスピアのものだと瞬時に理解する。
そして、その近くには2つの人影があった。
1人は恐らくウィルであろう。
もう片方は断定は出来ないが、地上にいる人数とアストレア内での情報から考えるに人形使いの可能性が高かった。
「そこか、、、、!」
ミナトは足に力を込める。
最大まで踏み込んで重心を前方に傾ける。
「瞬歩」でこの距離を一瞬で縮めてコアを破壊する。
頭の中でそう作戦を立てた。
しかし、地面を蹴りだそうとしたまさにその時、後ろで足音が聞こえた。
ミナトはとっさにかかとを踏み込んで後方に飛んだ。
体を捻って腹を空から地面側へ向ける。
足音の正体が視界に映る。
跳んだ勢いのまま忍者刀を足音の正体に向かって振りかざした。
金属同士がぶつかる。
火花が散って、暗い屋上を少しだけ明るくする。
刀同士は弾かれあって、双方とも後方へ押し返される。
「いきなりそれは酷いんじゃないか?」
屋上に現れた男、オノは耳をほじりながらミナトに言った。
オノは日本刀の切っ先を下に向けて油断しきっていた。
ミナトはオノの言葉には答えずに再びオノに突進した。
2人が刀を交える瞬間、ミナトが横に1度回って忍者刀に入る力を強めた。
さっきより大きな音が響いた。
そして、オノの持っていた日本刀の刃が中程で折れた。
さっき1度せめぎあった時にぶつかって少し欠けていたところをミナトは寸分違わずに狙っていた。
「俺はお前にかまっている暇は無い」
ミナトはオノにそう呟いた。
「あっちに、セイメイを倒しに行くんだ?」
「お前に話すことは無い」
ミナトはそこで話を切り上げて助走をつけて屋上から跳んだ。
いや、正確には跳ぼうとしただけで今度も跳ぶことは出来なかった。
「穿て」
「、、、、!?」
真横に刀身があった。
刃はミナトの走る方向へ伸び、ミナトの行く手を阻むかのように直角に曲がった。
ミナトは全速で走っていたため、止まれない。
ギリギリのところで忍者刀で防ぎ、ぶつかった所を支点にしてミナトは大きく前方へ回転しながら飛んだ。
しかしこのままではミナトは地上に落ちる。
とっさにミナトは忍者刀を空中に投げ、それを足場にしてなんとか屋上に戻ってきた。
全て普通なら出来ない所業だった。
「運動神経いいんだな」
「その刀、、、、」
オノの持っている刀。ミナトはさっきその日本刀を叩き折ったはずだった。
しかし今はどうだ、刀身は柄から先端まで元通りになっている。
「俺の刀は形とか自在だからね。ほら」
そう言ってオノは持っていた日本刀を小刀サイズまで小さくしてみせた。
さっき途中で曲がったのもそれのせいだとミナトは納得する。
しかし、納得したところで状況は変わらない。
オノを倒さない限りセイメイのところへは行かせてくれないようだった。
「ならば斬る!」
「いいぜ、来な」
オノは手をヒラヒラさせてミナトを挑発する。
「幻影瞬歩!」
「薙ぎ払え!」
ミナトは影に潜り込んだ。幸い太陽はもう沈んでいたし屋上に灯りもなかったからどこにでも移動することが出来る。
オノは刀身を伸ばして地面を削り取るようにその場で回った。
屋上の床が5cmほど削り取られる。
「無駄だ。光が物体ではないのと同じで影もそうだ。お前が斬ることは出来ない」
ミナトはオノの背後に現れてオノの背中に斬りつけた。
オノの来ている服と皮膚が切れる感覚が伝わってきた。
「、、、、っ。、、、、なるほどね」
オノが振り返るときにはミナトは既に影に消えた後だった。
「納得している暇は無いぞ」
ミナトは少し離れたところから現れると、持っていた忍者刀をオノに向かって投げつけた。
「そんなもの」
オノはそれを弾く。
しかし、忍者刀を弾いた先にはすでにミナトがいて、瞬間、両手で握られた忍者刀は下に向かって振り下ろされた。
オノは飛び下がって刀を横に薙ぐ。
ミナトは体を影化させて刀をすり抜ける。
すかさずミナトはオノの横に現れて忍者刀を横に切った。
オノは刀身の途中から枝のように刃を出してミナトの攻撃を防ぐ。
「同じ手は食らわないさ」
「そんなことは百も承知だ」
「それと、君は影化すれば無傷でいられると思っているみたいだけど」
オノがそう言った瞬間、右腕に痛みが走る。少し遅れて顔に風が吹きつけられる。
そして、ミナトの右腕が斬り落とされていた。
「影化する前に斬ればいいだけの事だ」
オノは刀を左右に振って刀に着いた血を振り払った。
ミナトは激痛を歯を食いしばって耐える。
落ちた右腕はすぐに影になってその場から消えた。
左手で押さえている切断面から鮮血が溢れ出る。
追撃を恐れてミナトは堪らず影に隠れた。
分割部分が中途半端ですみません




