第30話 弾劾と波乱
-送電所-
ピリピリとした空気が場を埋めつくしている。
主にその原因は術使い、リガルディによるものだった。クリスは相変わらず地面に乱雑に置かれた過去の新聞を読んでいる。
「なぁ、オノ。セイメイが寝てる今だから言うが、お前本当にネクストなのか?」
リガルディはオノを疑いの目で睨む。対するオノは気にする様子もない。
「そうだけど?というか何かしたっけ?」
「お前この前の戦いであの"翼"にとどめ刺さなかっただろ」
「刺さなかったね。それがどうかしたのかい?」
食ってかかるリガルディをオノは軽くあしらう。
リガルディは自分でも怒りが湧き上がっていくのが分かった。
「どうしたもこうしたもねぇ!何で敵の戦力を減らさなかったんだ!?あそこで殺しておけば面倒な敵が減って俺らが動きやすくなっていた!!」
「じゃあ逆に聞こうか。この前俺らにセイメイは何と言った?殺せと言われたか?少なくとも俺は聞いていない」
オノは言葉を少し強めた。
リガルディは記憶を遡って戦いの前の会話を思い出そうとする。
「、、、、確かに殺せとは言われていない。じゃあお前はこれからも戦いでいくら敵を瀕死にしても、コアを破壊寸前まで追い詰めても命令が無ければ殺さないのかよ!?」
「あぁ、そうだね」
それを聞いたリガルディは言葉を詰まらせる。
こちらの殺気立った言葉のナイフをオノは全てへし折って溶かしてしまう。そして相手からは棘のついた毬が返ってくる。言葉に含まれる棘がリガルディにとって痛いところを突いてくる。こうも簡単に言葉を返されると、リガルディはまるで自分が責められているような気分に陥っていた。
「、、、、お前はセイメイの操り人形なのか?それでお前はいいのか?」
「君達だって操り人形だろう?」
「あぁ!?何だと!!」
「所詮君達もセイメイの命令無しじゃ動かないだろう?動かないのではなく、命令が無いと動けない、何をすればいいのか分からないんだ。だから、セイメイに従っていさえすればいい。命令に乗っかっていれば動けるなんて、それは操り人形以外呼び方が無いと思うが?」
リガルディの怒りが沸点に達した。
「お前、、、、!!」
リガルディは術式を展開させる。
オノは日本刀を呼び出し、抜刀して切っ先をリガルディに向けた。
双方とも1ミリの無駄のない動きだった。
常人では認識出来ない速さで2人は戦闘態勢に入っていた。
2人はいつ動くか分からない。
より一層緊迫した空気が流れる。
クリスが新聞を閉じた。
「お前らそろそろ止め、、、、」
「2人とも止めなさい!」
クリスが言い終えるより先に声が建物内に響いた。
リガルディの術式が消滅した。
オノの日本刀が消失した。
2人の間に少女が立っていた。
両腕を左右に突き出し2人の顔の前に構える。少女の足元は白い煙が渦巻いていた。
「ウィル、、、、お前」
「何よ」
「そんなに小さかったっけ?」
「失礼ね!」
リガルディがそう言うのも無理はない。
なぜならウィルの外見は12歳くらい、小学校を卒業したかしないかくらいのものだったからだ。
「ウィルが実体で現れるなんて久しぶりだな」
クリスが目を丸くしながら言った。
確かに、ウィルが霧の状態を解除するのは2、3ヶ月ぶりだった。ずっと霧の状態で活動していたため皆ウィルの容姿を忘れかけていた。
口調はお姉さんのようだったから、久しぶりに現れたその身体にリガルディが違和感を抱くのも当然だった。
「前世使ってあなた達を止めたところで止めないでしょう?」
「あー、、、、」
リガルディはオノをチラッと見た。
「それに、これのお陰でリディも少しは怒りが引いたでしょう?」
そう言われてみれば、リガルディはさっきまでの怒りが無くなっていた。
「あぁ、そうだな。、、、、悪かったよ」
リガルディの言葉にオノは肩をすくめただけだった。
「それはそうとして、オノ」
「まだ何か用かい?」
今度はクリスが口を開いた。
「お前はセンセイとセイメイについて何か知っているのか?」
「何でそう思うのかい?」
「お前がアストレアと接触したところをウィルが目撃していた。そこであの2人について何か話したんだろう?」
オノは顎を触りながら「そうだねぇ」と呟いた。
「俺も詳しくは知らないさ。ただ、、、、」
「僕がどうかした?」
「、、、、!」
オノが喋ろうとしたところにセイメイが現れた。
「寝てたんじゃないのか、、、、?」
「今起きた」
「そうか、、、、」
「それで、僕になにか?」
セイメイが再び皆に聞いた。
皆はお互いの顔を見合わせる。
「いや、何でもない、、、、」
「そう、ならいいや。僕のことはどうでもいい。これからのことについてだ」
リガルディが唾を飲み込む。緊張よりも興奮を飲み込むためだった。
「もしかして、また戦いか?」
「あぁ、次はこっちから攻める」
「狙いは?」
「今回は"翼"だ。あれを殺す」
リガルディはオノを見た。オノは眉1つ動かさなかった。「殺せ」という命令に対してどう考えているかは分からない。
「倒していいんだな!」
「あぁ、頑張ってよ」
リガルディの瞳が輝く。
リガルディが1人で盛り上がって騒ぐ中、セイメイは部屋を出ていった。
部屋を出る際、クリスはセイメイに肩に手を置かれたような感触がした。
「、、、、?」
クリスはその手に何か不思議なものを感じた気がした。




