第29話 秘めた力
「私は死のうと思ってたの」
「私は高校に入ってすぐいじめに遭うようになった。理由なんて知らないわ、いじめなんてそういうものでしょ。少し気に入らなければ集団で追い詰める。そういうことをする人は大抵腐ってるけれど。
座面に画鋲が付いてたり、どこで捕ってきたのか知らないけれどカエルの死体とか机に乗ってたり。
最初は面倒くさいから黙っていたんだけれど、毎日ずっと同じことの繰り返しだと段々と嫌になってくるの。
鬱陶しいが溜まると止めてほしいに変わる。
だからいっそ死んでしまおうと思った。
そんなすぐに死のうと思った訳では無いけれど、全部話すと長くなるし私も思い出したくないから話さないわ。
死のうと思ってとりあえず私はさっきのあの橋から飛んでみることにした。あの高さだったら全然恐怖は無かったわ。
でも、飛んでみたらここにいた。
橋から飛び降りたはずだったのに何故かこの公園にいたの。
訳が分からなかった。
少し歩いてみたけど人が誰もいなくて車も通ってなかった」
マイはそこで1度話を止めた。
「それがこの輪廻の世界だった?」
僕が聞くとマイは頷いた。
「そう、来世とか前世を持った人達の世界だった。
私はとりあえず家に帰ろうと思った。勿論こっちの世界の家だけれど。
やっぱり家には誰もいなかった」
「それで、どうしたの?」
「元の世界に戻れなくなって私は軽く鬱になったの。人の嫌なところはさんざん見てきたつもりだったけれど、周りから一人もいなくなったら寂しいものね。
でも、自分の出来ることも何もなくなってこの公園で塞ぎ込んでたらクローが現れたの。
クローは私の話を聞いてくれた。クローがいてくれたから私は自分の心に正直になれた。
だから私はクローにとても感謝しているし、クローが救ってくれたこの命をクローのために使いたいと思ってる。
ハルキも私がうずくまってたときに声を掛けてくれたよね。だから、ありがとう」
「ハルキも同じだよ。助けられたことあるんでしょ?」
僕は頷く。
「ならあなたもアストレアを守らないと。ハルキにだって力はあるんだから」
「でも僕には能力がまだ使えない」
「使えるよ」
「え、、、、?」
初耳だった。
僕はいつ能力を使ったのだろうか。
マイの前で何かした記憶もないし他の人の前でもそうだった。
自分でも使っているという感覚はしなかった。
「僕に能力、、、、?」
「ちょっと私に触れてみなさい」
「???」
訳が分からずとりあえずマイの腕に触れてみた。マイは僕の手を取って自分の指と僕の指を絡ませた。
「なっ、、、、!」
「今私達は触れ合ってるよね?」
「え、、そりゃあ勿論、、、、」
「うん、OK。私は触れ合った双方がそれを認識すれば相手に毒を盛ることが出来るの。あなたは今毒に犯されたわ」
「はぁ?!何でそんなことするのさ!」
なぜ仲間にそんなことをされなければならないのか分からない。最初から殺す目的で呼んだのなら話は別だが。
僕は開いた口が塞がらなかった。
「この毒は即効性、すぐに毒は回るはず、、。何か体に異変は?」
そう聞かれて僕は自分の腕を振ってみたりした。特に体調が悪いという感じはなかった。
「別に、何ともないけど、、、、?」
「そう、それがハルキ、あなたの能力よ」
マイはブランコから立って指をビシッと僕に向けてそう言葉を放った。
「あなたの能力は恐らくだけど今みたいな毒とか、呪いは一切無効化するわ。全ての能力を無効化できるかは分からないけれど。多分その能力は常時発動しているわ」
僕は慌てて自分の左手を見た。
「だけど、紋様が出てないよ、、、、?」
僕の左手の甲には光る紋様はおろか、何も浮かんでいなかった。
「そうね、ハルキはイレギュラーだわ。紋様が出ていないから私も最初は分からなかった」
「じゃあ、いつ気付いたの?」
「ついこの前よ。ハルキに私が名乗ったとき私はあなたに触れてたのよ。ハルキは気が付かなかったでしょうけど。それで、後々になって何で毒の影響を受けてないのか気になって」
「僕が気が付かなかったからじゃないの?」
「生物は無意識でも脳は触れていることを認識しているものよ。それで何で効かないのか考えてたんだけど、目には目を。能力に勝てるものは能力しかない。そこでやっとハルキには能力があると確信したわ」
「なるほど、、、、」
能力があると言われてもやはり実感は湧かなくて、僕は手を握ったり開いたりした。
「それで、もう一度聞くけどハルキはアストレアに戻るの?」
僕は開いていた手を握った。
「戻る」
マイはそれを聞くと優しく笑った。
「そう。なら今から行くわよ!」
「そうだね、皆に謝らないと」
僕もブランコから立ち上がった。
そして、先に歩き始めていたマイの背中を小走りで追いかけた。
この話で第2章が完結です。
第3章では戦闘シーン多めで行く予定です!




