第28話 マイ
僕はあれからしばらく神社には行かなかった。
スミハやソラにも会っていない。
何となく会う気になれなかった。
あの場所、大通りで起こったあの出来事が僕にはどうしても納得出来なかった。
あのやり方で本当にいいのか、そう思い続けている。
「割り切らないといけないこと、か、、、、」
僕は魂の抜けた男の顔と、ソラのあの辛そうな顔が頭の中で交互に出てきて、どうすればいいのか分からなくなっていた。
何が正しくて何が間違っているのか。
この世界に1つの正義なんてない。人の数だけ様々な考えがあればそれに伴う正義と悪がある。
アストレアの正義と僕の正義とを天秤にかけたとき、どちらが幸福になれるのか。どちらの方がより多くの人が笑顔でいられるのか。考えていると治ったはずの頭痛が再び僕の頭を襲う。
結局のところ僕はアストレアの活動に少々の違和感を感じていた。
そんなある日の放課後、スマホにメッセージが来た。マイからだった。
久しぶりのそのメッセージは普段の愚痴とは違ってとても端的だった。
「話があるからここに来て」
そのメッセージの下には住所が書かれていた。
特に他に何も書かれていなかったので今から行くことにした。わざわざ輪廻の世界に行く必要も無いと思ったのでそのまま電車に乗って行く。
僕に話があるというのだから光祐を連れる必要も無いと判断した。
書かれていた住所は僕の家のある街とは別の街の住宅街、その中の1軒だった。
表札は付いてないから誰の家かは分からない。ただ、メッセージの場所がここを示しているということは、恐らくマイの自宅なのだろう。
僕はインターホンを押そうとした。
「ああぁ!待って待って!」
ボタンを押し込もうとしたとき、横方向から声が聞こえた。指を離して振り向くとマイが息を切らして立っていた。
「来るの早すぎ、、、、」
「呼んだのはそっちでしょ?」
「それはそうだけど、、、、はぁ。場所を変えるわよ」
マイは自分の息が整う前に再び移動を開始した。
「どこ行くの?」
「あっち側ならどこでも」
マイが向かった先は街外れの小さい川。その川に架かる橋だった。
「ここから飛んで」
「無理」
マイは目線だけこちらに向けて、それから自分の足を低い手すりに乗せて跨ぎ越した。
そのままマイは飛び降りた。
そこまで高くはないが着地に失敗すれば骨折くらいはしそうだった。
「ちょっ!?」
慌てて手を伸ばしたが、マイに届く前にマイの体が消えた。
「え、、、、?」
スマホが振動する。マイから「早く」と急かす内容が送られてきた。
僕は訳が分からないまま橋から飛び降りた。
気付くと知らない公園にいた。
何でもないどこにでもあるような小さい公園だった。公園にはブランコと滑り台しかない。
「さっきの橋は私しか知らない、こちら側に来る方法なの」
そう言ってマイはブランコに座った。
僕もそれに習ってブランコにそれぞれ腰掛ける。
「それで、話って?」
「あんたは、ハルキはアストレアに戻らないの?」
「別にやめた訳ではないけれど」
「でも最近来てないでしょう?」
「それは、、、、」
言葉に詰まった。
それは、何なのか。
僕がアストレアに対して抱いている違和感というのが何なのか、自分でもよくわかっていない。頭の中でもやもやと渦巻いているけれど、考えていることを掴もうとするといつも逃げられてしまう。
自分のこの感情を表す言葉が見つからなかった。
「ハルキが何を考えているのかは知らないし、何があったかも知らない。でも助けてもらったことがあるのならそれの恩は返しなさい。私がそうだったようにさ」
「マイが、、?」
「私は」
そこでマイは1度言葉を切って1呼吸置いた。
「私は死のうと思ってたの」
次はマイの過去編です




