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輪廻の扉  作者: ゑ兎
第2章
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第26話 報告と戦慄





僕は神社にいた。正確には神社の障子から繋がるアストレアの拠点。名称があるのか知らないから僕はここを「神社」としか呼ぶしかない。


僕がここに来た理由は、文化祭が終わった日の夜に起こった1件ついてだった。


僕が家に帰ろうとしたら、霧が発生して謎の声が聞こえた。


一言で簡単に説明すればこんな感じだった。

あの日は頭がぼーっとしていて何が起きたのか分からなかった。

いや、あの日だけではない。あれから数日は頭痛だったり鼻血だったりと身体的にも弱っていた。学校はもちろん休んだ。

自分の体に何があったのか分からないまま、気が付いたら今日になっていた。


今朝目が覚めると頭痛は治まっていた。

とりあえず学校に行こうとして部屋のドアのノブに手をかけたとき、一瞬体に電流が流れたような感覚がした。そして、あの日のことが脳裏に蘇ってきた。数日経っているにもかかわらず、とても鮮明に思い出すことが出来た。

そこで僕は初めて事の重大さを思い知らされた。

なぜ早く気がつかなかったのだろうか。

脳内に直接話せる奴なんて1人しかいないじゃないか。まして、霧が出ていた状況でなんて、気がつかない方がおかしい。

僕はそれに気がつかなかった「おかしい自分」

に腹がたった。

僕は学校に行く気が失せた。

1日部屋に籠るつもりだった。

それを止めたのは1件の連絡通知だった。

アプリを開くと光祐からメッセージが届いていた。

「明日のテスト範囲間違えるなよ」

なんでもないただの事務的な内容だった。

でもそのメッセージが僕にはとても日常的なものに思えた。

光祐は僕が休んだ理由を聞かなかった。

何かを感じてあえて聞かなかったのか、ただ興味が無かったのかは知らないけれど、このメッセージが僕の心を大きく突き動かした。

僕は午後になって家を出た。


そして神社にやってきた。

ここに1人で来るのは初めてだった。

先に入られていたりはしたことはあったが基本的に光祐と一緒に来ていたから、いつもと違うという妙な緊張があった。


今日はソラがここにいる日だった。

「あ、久しぶりー」

ソラは僕が来たのを見つけると、お茶を持ってきてくれた。僕はお礼を言ってからコップに口をつけた。

「今日はミナトは?」

「今は巡回に行ってるよ。何も無ければもうすぐ戻ってくるんじゃないかな」

「巡回?」

「基本的には何も無い世界なんだけどね、ネクストがいる限りは警戒は怠れないから」

「なるほど」

お茶を一口飲んだ。すると、タイミングよく鈴の音が響いてスミハがやってきた。

「あ、先輩久しぶりですね。元気でしたか?」

「うん、まぁまぁ」

「そうですかー」

嘘だ。ずっと頭痛に悩まされていた。


「それで、今日はどうしたの?」

ソラが僕に聞いた。

僕は一瞬どうしようか迷った。今ここで話せば今すぐにでもネクストを倒しに行こうとするかもしれない。スミハは分からないがソラならやりかねない。

でも、だからといってこのまま黙っているのでは元の世界に戻ったタイタンのメンバーが危険に晒される。ネクストの目的はいまいち分からないところが多いが一般の人だって危害が加えられないとは限らない。

それに、話さないのであればここに来た意味が無い。

僕は決心した。


「現実世界にシェイクスピアが現れました」

「何ですって?!」

ソラがソファから勢いよく立ち上がった。ソファが後ろに倒れるのではないかというほどの勢いだった。スミハも僕の言葉に耳を疑っているようで、飲みかけてたコップをそのまま机に戻した。

「その話、もっと詳しく話して!」

ソラは再びソファに腰を下ろして僕に言葉を続けるよう促した。

僕はあの日起こったことを見たこと、聞いたこと感じたことを全て話した。



「なるほど、、、、確かにそれはシェイクスピアね、、」

「姿は見えなかったんですか?」

僕の話を頭で整理し終えた2人が口を開くまでに少し間が空いた。

「うん、近くに人の姿は見えなかった。声だけだった」


「シェイクスピア、、、、。彼は実在しなかったという説もありますからね、、。姿が見えない、というのも能力によるものかもしれません。まぁネクストの方では女らしいですけど」

「どちらにしても、現実世界の方にネクストが現れた、というのはかなり危険な状況だわ。今まではそんなこと無かったから勝手に思い込んでいたけど、ネクストの方も世界を行き来出来るということになるし」

2人は少しずつ焦りを見せ始めた。

「とりあえず、元タイタンの人達に警戒するように言わないと危ないと思う。多分前に襲撃されたときに顔を覚えられているだろうから」

「あ、、うん、そうね、、。じゃあそれはクローに頼みましょう」

ソラは僕の声に少し驚いて、慌てて答えた。


他に僕らができることは何があるだろうか。今までは輪廻の世界だけだったから、最低限自分の身を守るだけでもなんとかなった。でも、現実世界の方にも現れることになった今、一般の人も守らなければいけない。

そんなことが僕に出来るだろうか。


沈黙した部屋に鈴の音が響いた。壁に障子が現れると外からミナトが入ってきた。

ミナトは僕らの暗い顔を見て足を止める。

「、、、、何があった?」

「あ、ミナト、、、、ちょっといい?」

ソラは立ち上がってミナトと隣の部屋に入っていった。


しばらくして二人が出てくると、まずミナトが口を開いた。

「ハルキ、今からコウスケを呼べるか?」

僕は時計を確認する。時刻は4時を過ぎていた。

今日は丁度コウスケのバイトが休みの日だった。この時間ならもう学校も終わって家に着いているだろう。

「連絡してみる」

僕は早速コウスケに電話をかけた。

異世界ではあったが電波は通った。

コウスケを呼んだついでに、さっき送られてきたメッセージにも返信しておいた。


「でもなんでコウスケを?」

僕は素直に気になった疑問を質問してみた。

「せっき外で前世持ちを見つけた。まだネクスト側には付いていない様子だったから対処しようと思って。いつか聞いてきたことがあっただろう、どうやってネクストを無力化させるのかって。それを教えるためだ」

たしかに、そんなことを聞いたこともあった。二子山でその機会は無かったから僕らはまだその方法を知らなかった。

「ただ、少し不快に思うかもしれないから覚悟しておいた方がいい」


僕は若干の不安な気持ちと共にコウスケが来るのを待った。




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