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輪廻の扉  作者: ゑ兎
第2章
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第24話 文化祭ストーム3




朝起きると空は快晴だった。雲1つ無い青空の中を飛行機が空高く飛んでいる。

もう9月だというのに照りつける陽射しはいまだに厳しい日も幾日かある。

僕は降り注ぐ日光に顔をしかめてから駅へ歩き出した。

本日は文化祭2日目が開催される。



駅で待ち合わせた光祐と話しながら教室に入ると、何やら教室の中央に人だかりが形成されていた。何かと思って僕も輪に加わわった。


──美少女がいた。


昨日僕が着ていたあの青いドレス衣装を身にまとった可愛らしい少女がそこに立っていた。まるでアニメの世界からそのままやってきたのではと見紛うほどだった。

周りの、主に女子がしきりに褒めているのに対して本人は顔を赤らめて恥ずかしそうにしている。男子は輪から少し離れてから「可愛かった」と友達と言い合っていた。


そこに清水さんが入ってきて手を叩き、皆に指示を出す。

「ホラ、みんな準備準備!あんまりすみれに見蕩れてたらダメだからね!」

清水さんは皆をグイグイと押して話題から引き剥がしていく。

そのとき誰かがポツリと呟いた。

「すみれって誰?」

その声に反応して清水さんがその人の元に向かっていく。

「誰って、山崎さんに決まってるじゃない」

そう言って青いドレスの少女を指差した。

それを聞いていたクラスの人々が驚きの声を上げる。

「えええええ!?」

勿論僕も少なからず驚いた。

まさかあのとても静かな印象の山崎さんが、清水さんにサポートされながらではあるが文化祭実行委員をしていた山崎さんがここまでするとは誰も予想していなかった。

普段誰かと話すことも無く、笑顔も見たことも無かった彼女が、今はどうだ、服の裾を握って恥ずかしがっている。チラチラと清水さんに視線が向くところが愛らしくもあったりする。


人間って何があるか分からないんだなぁ。


そう思った朝の出来事だった。


昨日頑張った分、今日は色々なところを見て回る予定だった。写真撮影は山崎さんが変わってくれるということだったので、僕は何の気兼ねも無く学校中を回ろうとしたのだったが、清水さんに呼び止められた。

「さすがに完全に自由にさせる訳にもいかないから、これ来て行ってきて」

そう言って渡されたのは1着の衣装だった。

嫌な予感がしつつ目の前で広げてみると、案の定いつか見た魔法少女の衣装だった。

「なんでよりによってこれなの!」

「ごめんね、他の人がそれ以外全部着ちゃってて余ってるのそれしか無かったの。まぁでも、似合うと思うから」

清水さんは無理に笑顔を作って去っていった。

多分その他「似合う」は山崎さんに向けられる「似合う」とは別の意味合いだろう。

僕は、今日も女装をすることに少なくない違和感と不満を覚えつつ袖に腕を通した。




昨日は行く時間が遅かったため、ほとんど売り切れて買えなかったのだが、その経験を生かして今日は先に3年生の食品販売から回ることにした。

校舎を出て校庭に続くアスファルトを歩いていくと、焼きそばのいい香りがしてきた。まだ朝だというのに食欲が湧いてくる。

まだ文化祭が始まって間もないのにも関わらず、既にテントの前にはチラホラと立ち止まって購入したものを食べている人の姿がある。

まだ完売までには余裕で時間があるが、気持ちが僕を急かしてくる。

「焼きそば2つください!」

「ありがとうございまーす!焼きそば2ー!」

注文を受けた店員はすぐに後方で焼きそばを作る係に声を掛けた。すると既に作り終わっていたのかタイムラグ無しで焼きそばの入ったトレイを渡され僕の元へやってきた。

「お待たせしましたー!」

僕はそれを受け取ると少し離れたところでパンフレットを眺めていた光祐の元へと歩いていき、1つを光祐に渡した。

「はい奢り」

「ん、サンキュー」

「何見てるの?」

「パンフレット」

「それは知ってる」

「次どこに行くか」

「どこにする?」

光祐はパラパラとページをめくって折り目をつけたところを見比べた。

「折角だし後輩の所にでも行くか」

そう言って光祐はパンフレットを閉じた。

光祐の後輩ってことは前に入ってた陸上部かなとそのときはなんとなく思った。


校舎に入ると光祐は迷わず4階へと階段を登っていく。4階に1年生の教室があるからだ。

校舎は上から見るとコの字型に曲がって造られており、昇降口を境にして1、2年生と3年生で分けられている。受験勉強に差し支えないようにという考えらしい。僕と光祐はまだ2年生だから、来年は向こう側に登校するようになる。

ただ、向こう側に行ったところで特に心躍るようなこともないだろう。どうせ勉強で終わるだけだ。


1年生のブースは想像以上に完成度が高かった。今年初めての文化祭にしてはどこもそれぞれ趣向を凝らしている。僕らのコスプレ撮影なんかより断然良い。

昨日はやってくるお客さんの相手をするのに手一杯で全く気が付かなかったが、どうやら面白かったブースに投票をすることが出来るようで、教室から出てきた人に「投票お願いしまーす!」と声を掛けている生徒が見受けられる。投票数が多いと優勝とかあるのかもしれない。

光祐はある教室の前で立ち止まった。廊下の天井からは所々先端が破けた黒いビニールが垂れ下がっている。壁にはこれもまた黒いペンキで塗られた大きいものが貼り付けられていて教室のドアにも黒い画用紙が貼り付けられていた。全体的に暗さをアピールしている。

ここの出し物がお化け屋敷だということは受付の係の生徒のおでこに三角の白いものを巻いていたからだ。もしそれが無かったら闇鍋でもしているのではないかと思ったかもしれない。

校舎の最上階まではまだ来る人も少ないようで、待つこともなく中に入ることも出来た。



中の感想を1つ挙げるとすれば、「ただただ赤かった」というのがまず一番に出てくる内容だった。

色々なお化けや生首などの死体が沢山出てくるのは良かったのだが、何故か全部血塗れだった。実体の無いはずの幽霊にも赤いものがべっとり、、、、。

そういうものを「文化祭だから」で片付けるのならそこまで悪い出し物ではなかった。自分達のところと比べるつもりはないが、結構上位の方には入るのではないだろうかと思う。


「それで、後輩には会えたの?」

「ここじゃなかった」

「もしかしてどこのクラスか知らないの?」

「まぁな」

「見つかるまで全部回るつもり?」

「別にそこまで会いたい訳では無いけど、お前のその姿を見せたらどうなるかと思って」

「それってどういう、、、、?」

「せんぱーい!」

どういうこと?と聞こうとしたところで後ろから僕達を呼ぶ声が聞こえた。どうやら光祐の後輩とやらの様だ。しかし、僕らを呼ぶ声に聞き覚えがあった。

恐る恐る、というかもう結果は目に見えていたが、それでも信じたくなくてゆっくり、ギギギと音が鳴るのではないかというほどゆっくり振り向いた。






実はフルネーム出てくるのは今のところ春輝とすみれだけだったりします。

すみれと清水さんの話は別の作品で書くことにしているので投稿したらぜひそちらも

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