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輪廻の扉  作者: ゑ兎
第1章
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第11話 最終確認




「おはよう、ハルキくん」


「おはようございます」

「ノット敬語」

「.........」


「まぁいいや。全員揃ったね。じゃあ最終ミーティング始めようか...」

 ソラが話を始めるので一旦それを遮る。


「ち、ちょっと待ってください。まだコウスケが来てません」

「あー、、コウスケなら」


 そのとき、部屋の奥の扉が開いて中からコウスケが出てきた。

「おーハルキおはよう」

「おはよう。、、何してたの?」

「トイレ。外で待ってたら寒くて腹痛になったから先入ってた。悪い」

「うん」


「もういいかな?」

 ソラがこちらを伺って問う。

「あぁ、大丈夫だ。止めてすまない」

 コウスケが謝る。


 まだ歳上に敬語を使わない、というのに慣れていなくて「はい」とか「すいません」とか思い浮かんでしまって上手く話せない。


 僕とコウスケはソラの向かい側のソファに座った。

 マナハも座ればいいのにと思ったが、まだ僕達に慣れていないのだろう。


「それじゃあ改めて、これから最終ミーティングを始めます。まずはこれを見て」

 そう言ってソラは一枚の紙をソファの前のテーブルに置いた。

 アマセとヨシナギも寄ってくる。

 その紙は新聞の切り抜きだった。


「今朝の新聞なんだけど、また死体が見つかったらしいわ。場所は今回も二子山。あそこを拠点にしているネクストと敵対してる勢力、と言っても小規模だけど、があるから被害者はそこの人だと思う」

 新聞によるとその死体は頭部と体が離れたところにあり、両眼を銃で撃ち抜かれていたという。


「人形と闘っていたところを撃ち抜かれ、視界を失った所で斬り捨てられたか」

「酷い、、」

 アマセとヨシナギが呟いた。

「これはなるべく早く行った方がいいな」

「そうね、ユキが危ないわ」

 ミナトの言葉にソラが同意する。


「そういえばそのユキさんはどちらにいるんで、、どこにいるの?」

「ユキには先に行って偵察してもらってるんだけどね。戦闘向きの力じゃないから襲われたらかなり危ない。、、、、やっぱり敬語の方が話しやすい?」

「はい」

「じゃあそれでもいいよ」

「ありがとうございます」


 頭の端っこで、昨日僕をせせら笑ったスミハの顔が思い出されて、今更ながらまたイラッときた。


「話を戻しましょうか。今日はネクストの支配下に置かれている二子山の奪還、排除作戦ですよね」

 ソラが頷く。

「えぇ。それと今言ったこちら側の小コロニーの人達の保護ね。どう、スミハ?」

 ソラの横で話を聞いていたスミハは顎に手を当てて考え込んでいた。

 今はメガネを掛けているから能力でも使っているのだろうか。


「大丈夫だと思います。戦闘に適している人達はネクストの排除を、それ以外の後方組はコロニーの救出、と役割を分けましょう。あまり時間は掛けられません。ネクストに救出している所が見つかればハルキ先輩達も危険ですし」

「そうですね。一時的にでも私が新しく空間を創ってそこに避難させれば素早く終わらせられます」

 アマセの意見に僕も賛成した。


 アマセの空間に入ればネクストも襲うことは出来ないだろう。

 これ以上の死者を出さずに済む。


「じゃあ、それでいこうか。あとなにか質問ある?」

 ソラが皆を見回す。


「あ、はい」

「どうぞ、ハルキ君」

「ユキさんはどうするんですか?あと、二子山の人達の居場所も分かれば」

 ソラは「んーと」と軽く考えてから答えた。

「じゃあユキはこっちのグループで回収するわ。もう一つの質問だけど、、、、ミナト、どこか分かる?」

 ソラは体を半分後ろに回して、壁に寄り掛かっているミナトに聞いた。

「先週あの辺りに行ったときは山頂にある送電所の建物にいたな。それからどうなったかは知らないけどそこに行ってみる価値はある」


「だよ」


 うわ、この人他人の言葉を自分が言ったことにしてるよ。


 結局、山頂まで登らなくてはいけないようだ。

 山登りもとい運動が苦手な僕としては避けたかったのだが。麓を拠点にしてくれればよかったのにという愚痴が浮かんできたが心の中に留めておく。


「他には?」


 今度はヨシナギが口を開いた。

「質問って訳ではないんすけど、今分かっているネクストの勢力って、銃使いと魔術師、刀使いとそれらをまとめるリーダーてとこっすよね?」

 スミハが頷く。

「そうですね。今までの事件から分かっているのはその4人くらいですね。ですが今、二子山にどれだけの規模のネクスト前世持ちの者がいるかは未知数です」

「私達もネクストの能力持ちと戦うのは初めてだから、どんな奴がほかにいるか資料もないからね。慎重にいかないと死ぬね」

 ソラは淡々とそう言い放った。


「さて、そろそろ行こうか。早めに終わらせて午後を有意義に過ごしたいしね」

 伸びをして立ち上がるソラはどこかこれからの戦いに対して軽く見てるところがあるような気がする。

 その性格からも何となく分かっていたが恐らく創立時の初代メンバーなのだろう。

 彼女なりの慣れなのだろうか。

 そうでないとすれば歴戦による感覚の麻痺というやつだ。


 ともかく、ミーティングが終わったメンバーが立ち上がるのに続いて僕とコウスケも部屋を出る。


「あ、そうだ。スミハ、これは返しておく」

 僕は今の今まで手に握っていた黒い袋をスミハに押し付けた。

「着てみました?」と、にやつきながら聞いてくるスミハに軽く顔をしかめて部屋を後にした。


 神の社の外は、神社の境内。


 というのが通説だ。しかし、僕らがアストレアにとってはそんなもの吹けば消し飛ぶ紙設定の様なものだった。

 アストレアの拠点の神社を出ると、そこは駅を挟んだ向こうに構えるはずの二子山、その麓の木立前だった。

 そびえ立つ巨木を見上げる面々の後ろでアマセに呟いた。

「便利な能力だね」

「ありがとうございます。、、、、私には敬語ではないんですね。いえ、別にいいです。ソラとミナト以外あなたと同じ学年かそれより下ですから」

 アマセはニコリともせずにそう返した。


 目の前にある山のどこかに僕らの仲間がいる。


 そして、敵もいる。


「じゃあ、行こうか。ここからは別行動になるからくれぐれも気をつけて。何かあったら連絡をくれればなるべくすぐに向かうから、それまで持ち堪えてね」

「はい。それじゃあ」

 また後で、と口にしてソラは、ソラ達討伐組は山に入って行った。


「僕達も行こうか、、、、」

「そうだな。、、なんでため息なんかつくんだよ」

 コウスケが不満そうに問い掛けた。

「、、、、山を登るのがツラい」


「能力を使えば身体能力も向上するんで登りやすくなるっすよ。それに、今日は風も気持ちいいっすし」

「涼しいのは確かにそうだけど、僕はまだ能力使えるようになってない、、」

 そう毒づいてみたが返答は無かった。




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