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第7話 上級魔法

 ────広場にて。


「なんでリエルと一緒?」

「り、リエルとたまたま会ってな。そうだよな!リエル!」


 スザクは必死にリエルにアイコンタクトを送った。どうやら気付いてもらえたようだ。良かった。


「私がスザクの部屋を訪ねたの。」

「おいおいおいおい!」

「?」

「必死にアイコンタクトで言わなくて良い、って伝えただろ!」

「え?OKって意味かと思った。」

「そうですか……ごめんなさい、俺が悪かったですよ。」

「仕方が無い、許す。」


 まさかアイコンタクトが効かないとは……。恐るべし天然(?)リエル。まあ、ユナが許してくれたから良しとしよう。


「そう言えばユナ。リエルが上級魔法使えるみたいなんだけど。」

「うん、それが?」

「一緒に練習に参加したいって……。」

「嫌だ。」

「そこをなんとかっ!」


 スザクは頼み込んだ。美少女に囲まれたいとかそういう理由ではない。いや、そういう理由もあるが、一番の理由はリエルに友達を増やして欲しいのだ。上級魔法を使えるリエルならば、俺とユナみたいに弟子と師匠という形式上の関係を築く必要が無い。

 友達になりやすい、ということだ。是非、ユナとリエルには友達になって欲しい。

 と、師匠に伝えた所、意外とOKされた。最初嫌がっていたのは、理由の五割ほどを占める、スザクの美少女に囲まれたいという思惑がバレていたようだ。流石、師匠っす。


「じゃあ、始めようか。」

「「分かった。」」


 あれ?何故、弟子が師匠が言いそうな言葉を言うのだろう。立場逆転してる……。


「スザクは中級魔法は完全に覚えた。」

「次は上級魔法ね。」

「そう。」


 師匠会議なようだ。弟子はそれを眺める。やはり美少女が揃ったら眼福だなぁ。ありがとう!神様!ん?大災害を起こしたのは神だったじゃないかって?そんなことはどうでもいい。結果が全てなんだよっ!


「じゃあ上級魔法の解説をする。」


 ユナは上級魔法の解説をしてくれた。

 上級魔法と言うのは、中級魔法の上位魔法であり、特級魔法の下位魔法である。

 中級魔法で属性が十二に派生したが、上級魔法になると派生せず、基礎六属性に戻る。上級魔法の六属性が本来の力を持った属性という事だろう。

 上級魔法の各属性は、火であれば火にまつわる魔法、水であれば水にまつわる魔法全般を習得できる。まさに本来の力なのだ。

 このような理由から上級魔法の魔法総数は、無限とも言われる程に多い。多過ぎる。よって上級魔法の魔導書(グリモア)はあっても完全ではない。完全な魔導書(グリモア)を作れば、それこそ本のページ数や重量、金額などなど大貴族でも買えなくなりそうだ。


「上級魔法は徐々に覚えていけばいい。」


 というユナ師匠からの有り難いお言葉で火属性から頑張ることにしました。


「ユナ。何から覚えるの?」


 リエルはユナとの話し合いで、ユナの事を先生と呼ぶのは禁止となった。どちらもスザクの師匠だからだ。立場が紛らわしくなる。


「使う武器などに付与(エンチャント)可能な魔法もあるけど、武器なしで使える魔法を優先的に覚える。」

「賛成。」

「りょーかいー。」

「まずは広範囲魔法から覚える。【爆発(エクスプロージョン)】。」


 こんにちは。スザクです。今、孤児院から数キロメートル離れた森にいるのですが、更地になりました。


「「「……」」」

「じ、じゃあ試そうか!込める魔力を少なくするねー【爆発(エクスプロージョン)】。」


 ……また一つ森が失われました。すみません。


「お、覚えたね。次は……【(けい)(そう)(ほう)()】。」


 なんか光ってる火の槍の形をしたなにかが、真っ直ぐに飛んで森を焼きました。まあ、【爆発(エクスプロージョン)】よりは威力は低いです。先程からユナ師匠が必死に合成属性の木魔法と希少属性の精霊属性で森を再生しています。頑張れ!


「どんどん行くよー。」


 この三人から遂に言葉が消えました。いちいち威力がおかしいからですよ。最低限の魔力しか込めていないのに森が焼けてしまいます。火属性だからでは無く、威力が強すぎるからです。怖いです……上級魔法って。


「【(れん)()(ほう)(えん)】。」


火弾(ファイアーバレット)】の数倍の大きさの火の玉が砲弾並の速さで飛んでいきました。魔物相手に放ってます。数百の魔物が焼けました。


「【()(れつ)(こう)(こう)】。」


 対象を燃やす魔法みたいです。それはもう輝くほどに闇夜で激しく燃えていました。可哀想に。


「【(りょう)(げん)(しょう)(しつ)】。」


 広範囲を焼き払い、何もかも消えてしまう魔法です。よく禁忌魔法(タブーマジック)に指定されないよな、これ。


「【(ごく)(えん)(りん)(じゅ)】。」


 地獄の炎を持った人魂が対象を呪い殺すようです。すみません、これ禁忌魔法(タブーマジック)に指定して下さいよ。どう見たって殺戮魔法(ジェノサイドマジック)じゃないですか。……あ、相殺出来る魔法があるみたいです。良かった、良かった。


「【(おう)(えん)()()(じん)()】」


 熱い炎が焼き尽くし、さらに焼き尽くした事で燃え残りも無いほどオーバーキルする魔法みたいです。やばい……。襲って来てた数万の魔物が全て逃げてしまったぞ……。そういえば四字熟語じゃなくなったんだな。六字熟語?いや、熟語なのか?


「こんな感じね。」


 リエル師匠は、良い汗かいたとばかりに額の汗を拭っています。いや、魔力消費量を気にしてよ。


「じ、じゃあスザク、無詠唱を覚えて。」


 ユナ師匠ごめんなさい。折角謝ったのにまた怒られるよ。自然は大切にね。


 この後、数時間ほどで無詠唱を覚えました。やはり上級魔法ともなると無詠唱は大変ですね。孤児院付近の森は半径十キロメートル近く焼けてしまいました。ユナ師匠が各所に謝りに行き、森を再生したようです。住んでいた精霊達も呼び戻したとか、どうとか。ユナ師匠は流石です。リエル師匠の魔法も素晴らしいです。


 孤児院ではお偉いさんに怒られました。ですがユナ師匠の人脈はここでも使えるのです。指導というと渋々了承してくれました。森をきちんと再生した事が高評価だったようです。


 この日のスザクの日記は大変充実したものとなった。


 ……もう、こんな日は来なくてもいいや。


 * * * * *


 ────明くる日の事。


「どうしたの?スザク。」

「ん?リエルか、おはよう。朝食だよ。」


 二人がいるのは食堂だ。スザクはいつもよりも遅い時間に朝食をとっていた。孤児院の子供が何人か朝食をとっているが、スザクの姿を初めて見た少年、少女達は興味深そうにスザクを見ていた。そして、そこにあの引っ込み思案のリエルが話し掛けているために視線が痛い。


「リエルも遅いんだな。」

「私は今日、朝の授業は無いの。」

「そうなのか。俺はユナ師匠が体調不良で朝練が無かったんだ。」

「え!じゃあ、この後見舞いに行こうよ。」

「そうだな。見舞いの品を持っていきたいんだけど、何か良い物あるか?」

「あ……スザクはこの孤児院の売店に行ったことないのか。」

「……そうなんです。」


 優しい優しいリエル師匠は売店の豊富な品揃えを、熱烈に語った後に二人で行くことにした。


「二人で歩くのも久しぶりな気がするね。」

「そうだな……。普段はユナ師匠がいるからな。」

「そろそろ、その師匠っていう呼び方辞めようよ。」


 リエルが頬を膨らませて言った。プンプン!という音が聞こえてきそうだ。ここは素直に従っておこう。怒る姿も可愛いからもっと怒って欲しい気もするけど。


「分かった。リエル、でいいよね。」

「ユナも!」

「分かった分かった。リエルとユナ、だな。」

「うん!」


 いや、訂正。怒るリエルより笑ったリエルの方が数百倍可愛い。輝いてるよ。


 ────二人のイチャイチャぶりを見ていた周りの人は、おしどり夫婦という二つ名が付けたりするのだが、それはまた別のお話。


 * * * * *


「本当だ。ここの売店の品揃えはすごいな……。多すぎないか?」

「欲しい品があるか分からない時は、売店のオバチャンに聞く。これ常識。」


 え?常識なのか、それって。人をアテにしてるだけだろ……。取り敢えず聞いてみるか。


「すみません、見舞いの品でいい物ってありますか?」

「スザク、それ人に聞くものじゃないでしょ。」

「良いのよ。そーねぇ。その子が好きな物って何か知ってる?」

「「知らない。」」

「……あ、そうなの。じゃあ遠回しに聞いてみたら?最初は見舞いのお花だけ持っていくとか。」

「あ、それイイですね!ありがとうごさいます。では、お花を買えますか?」

「分かったわ。お花は色々な資格を持ってる私が選んであげるわ。」


 どうやらこのオバチャンは、花関連の色々な資格を持ってるらしい。さらに華道家だったりする。


「ありがとうございます。」


 料金はリエルが払った。本来なら男のスザクが「ここは、俺が払うよ。」とか言うところなのだが、何しろタイムスリップをしてきたスザクは、お金を一銭も持っていない。ここの通貨に銭など無いが。

 この時代の通貨は金本位制であり、『王貨』>『白金貨』>『大金貨』>『金貨』>『銀貨』>『鉄貨』>『銅貨』という価値である。


 銅貨百枚=鉄貨一枚、鉄貨百枚=銀貨一枚、銀貨百枚=金貨一枚、金貨百枚=大金貨一枚、大金貨百枚=白金貨一枚、白金貨一万枚=王貨一枚のようだ。

 王貨の価値がおかしいがそこは気にしないでおこう。


 因みにこれが世に出回る通貨だが、王家や上級貴族などでは使われる『聖貨』と『神貨』という貨幣が存在する。

 価値的には『聖貨』は『王貨』が一万枚で一枚の価値を持つ。『神貨』は『聖貨』が百万枚で一枚の価値だ。

 どうしてこの時代にはインフレが起こらないのだろうか。


 話が逸れてしまったがリエルは花を銅貨三枚で購入した。銅貨一枚が百円程度だろう。


 スザクとリエルは、ユナの部屋が分からなかったので学校まで行き、職員室の事務員に聞き出した。


「まさか……職員の住宅は孤児院とは別の敷地にあるなんて。」

「俺も予想外だったよ。」


 孤児院の大人達を始めとした職員達の住宅は、孤児院の敷地外にある。どうやら政府からの援助のようだ。職員の集合住宅までは、専用の転移装置(テレポーター)が用意されているため、行くのには苦労しなかった。


「ユナ~、お見舞いに来たよ~!」

「ん、リエル。ありがとう。スザクも。」

「おう。」


 ユナは風邪のようだ。少し鼻声である。


「やっぱり原因は昨日の雨か。」

「うん、そうみたい。」

「昨日?練習無いって言ってなかった?」

「スザクが新しい魔法考えたからって。」

「もう、スザク。」

「……ごめん。」


 こんな所で言い訳するなど男としての名折れだ。どちらにせよ原因は俺なのだから素直に謝る。


 * * * * *


 スザクとリエルはユナと世間話を多少して、部屋に戻ることにした。


「今日は、ありがとう。」

「いえいえ~。お大事にね。」

「ホント、ごめんな。」

「大丈夫。気力で治す。」


 おーい、ユナさん。小さくガッツポーズしているのは可愛いけど、そんな男勝りな事は言わないでね。乙女なんだから。


────ユナは次の日にはすっかり風邪が治っていた。


「ユナ、今日は練習休みにしてくれ。」

「スザク、風邪?」

「あぁ、感染ったみたい。」

「しっかり、治す。」

「そうだな。という事で授業はどうした?」

「あ……。」


 そうして今日もユナは遅刻するのでした。


* * * * *


成河(なりかわ)朱咲(すざく)


職業:見習い魔術師


適正属性:無限属性(インフィニティ)


称号:真なる魔導書の使い手


階位:C級魔術師


備考:

無詠唱魔術師

真魔導書(ベルム・グリモア)Collection:07『図書館』所有者


得意魔法:

〈中級魔法〉

『炎属性』【烈火噴火(イラプション)

『熱属性』【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)】【灼熱地獄(インフェルノ)

『氷属性』【樹氷世界(アイスワールド)

『雪属性』【吹雪世界(ホワイトアウト)

『嵐属性』【黒塵竜巻(ダストハリケーン)

『飛属性』【疾風穿斬(ゲイルスラッシュ)

『鋼属性』【錬金術(アルケミィ)

『輝属性』【中級回復術(ヒーリング)


〈上級魔法〉

『火系属性』【爆発(エクスプロージョン)】【(けい)(そう)(ほう)()】【(れん)()(ほう)(えん)】【(りょう)(げん)(しょう)(しつ)】【(ごく)(えん)(りん)(じゅ)】【(おう)(えん)()()(じん)()

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