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第5話 無限属性

 ────広場にて。


「それが飛行魔法……!!」

「そう。スザクもやってみて。」

「あぁ……【飛行(フライ)】!!」


 しかし、失敗した。夢はまだ叶わなかった。だがまだまだ!


「【飛行(フライ)】!」


 次は少し浮いた。次こそは……


飛行(フライ)】、【飛行(フライ)】、【飛行(フライ)】……。


 少しばかりの運動神経を駆使しつつ、頑張ってどうにか形にはしました。どうにか。


「大体そんな感じ。次は当然、無詠唱。」


 スザクにとって無詠唱によるイメージでの方がなんとなく感覚が掴みやすいのだ。無詠唱が慣れてくると、自然と飛行技術が上達した。


「やったあ!」


 こればかりはスザクも子供のようにはしゃいでしまった。何しろスザクの小さい頃の夢の一つに「空を飛ぶ」があったのだ。うんうん、夢があるのは宜しい。北海道にある像のあの人も大志を抱け的な事言ってたからね。


「お見事。」


 あれ?ユナが褒めてくれた……。明日は隕石でも降るのかな。


「何故かスザクがとても失礼な事を言った気が。」

「そ、そんな訳無いよ。」

「分かった。」


 二人は練習がてら残りは【飛行(フライ)】で競争する事にした。


「絶対、負けない。」

「俺こそ、負けないよ?」


 互いを見た。これを見た者は、おしどり夫婦め!などと叫ぶ事だろう。だが二人はそんな事は気にしない。気にすべきなのは今のバトルだけだ。

 二人は全力でスタートをきった。


 広場の草々が二人の巻き起こす暴風に千切れそうだ。一瞬後には何も残らなかった。


 飛行バトルのコースはこうだ。

 まず、孤児院を出る。その後、グレイロス王国王都の大聖堂の一番上にそびえる鐘を周り、孤児院へと戻ってくる。

 通常の【飛行(フライ)】ならばこのコースは1時間以上掛かる長距離コースであるが、体内に含む魔力(チャーム)が一般人の比では無い二人は、このコースは大体10分程度で戻ってこれるだろう。


 飛行バトルの最初は明らかにユナの方が優勢であった。慣れたと言ってもまだまだスザクは練習不足だ。

 しかしこの差は王都へ着く寸前で僅差となった。現在、ユナとスザクの差は1mもない。


「弟子のくせに生意気……!!」

「そっちこそ!格好つけなくてもいいんだぜ!」

「「……!!」」


 互いに言い合いをしつつ、スピードは全く緩めない。どちらかと言えば段々とスピードが上昇している。こんな状態であれば、普通は会話不可能なはずだが……二人には関係ないようだ。


 結局、勝利したのはユナだった。


「やっぱり師匠には勝てない。」

「もうちょっとだったのにー!!」


 スザクはまだまだ子供。だと思っているユナもいたりする。


「今日はこれで練習終了。」

「じゃあ、調べてきた事をまとめよう。」

「分かった。」


 まずはスザクから報告した。

 真魔導書(ベルム・グリモア)のこと、無限属性のことを。

 聞いたことも無い事を聞き、驚いたユナだが実物を見せてもらえば、流石に認めざるを得なかった。


「報告する必要は無いと思うけど。」


 そう言ってユナが報告した内容はスザクの調べた内容と殆ど同じであった。様々な本を読んで得た情報に匹敵する情報量を調べてきたユナの情報網は今後とも侮れないだろう。……今後、何に使うのだろうか?


「やはり無限属性(インフィニティ)は強大な力を持つ。」

「全属性使用可能か……。」

「周りの人には言わない方がいい。」

「広まれば狙われる、か。」

「その通り。」

「そう言えば今の状態で全属性すべて使用可能なのかな……??」

「試してみれば?」


 お言葉に甘えて、全属性を順々に試すことにした。

 基礎魔法の六属性と飛属性は、既に使えるので試さない。試すのはその他の属性だ。


 試した結果としては、全て使えた訳ではなかった。

 使えた属性は、基礎と中級と上級の全属性に加えて、派生属性、複合属性だけだった。まあ、これだけでも充分なほど素質がある。世の中には、基本魔法を全て使えない魔術師もいるのだ。


 上級魔法の上位に位置する特級魔法、その上に位置する超級魔法、そして最上位の属性である最上級魔法、希少属性、固有属性(ユニーク)は全く使えなかった。


「まだまだ練習が必要。」

「そうだなー……。」


 無限属性で大体の属性が使えるとしても、使いこなせるとは同義ではない。練習は必須だ。


「まずは中級魔法はクリアする。」

「了解っ!」


 スザクは勢いよく返事した。未来での生活が上手くいくとは端から思っていない。自分で自分の居場所は作らなくてはいけない。サバイバルのようなものだろう。すなわち、全てはこれからだ。


「攻撃魔法を覚える。」

「ああ……そうだね。」


 何故かさっきから言葉のやりとりが続かない。……何故だろう。


「まずは何を覚えるの?」

「まずは熱属性。熱属性は、温度の変化を利用する魔法。火属性の派生属性だけど、絶対零度から火山級の高温まで自在に温度を変化させる事が出来る。」

「簡潔に言えば?」

「絶対、覚えた方がいい。」

「りょーかい。」


 ユナがスザクにまず教えた熱属性の魔法は、単純に周囲の気温を変化させる魔法。魔法名は【気温操作】である。ここでスザクは考えた。何故、英名が無いのだろうと。そして、気付いてしまった。「気温」は日本語以外では殆どの国が長いスペルとなってしまうのだ。要するにダサくなる。

 そんな事を考えつつも、【気温操作】を試す。


「あ、出来た。」

「スザクは基礎魔法が完璧だから中級魔法も恐らく難しくないはず。」


 との事だ。


「一つ一つ教えるのも大変だから、一番難しい熱属性魔法教える。」

「おい。」


 スザクは思わず突っ込んでしまった。適当すぎるだろ。しかし、スザクの突っ込みなど露ほどにも気付かないユナは言葉を続けた。


「熱属性最難魔法は二つある。一つは最も冷たい熱魔法【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)】。そして最も熱い熱魔法【灼熱地獄(インフェルノ)】。」

「おおっ、なんか強そう。早速試そう!」


 試すにあたってユナは簡単に二つの魔法について説明してくれた。まず【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)】だ。この魔法は対象の空間座標を指定する事でその範囲のみ絶対零度まで冷やす事が出来る。逆に【灼熱地獄(インフェルノ)】は、対象の空間座標を指定すれば、その範囲を凡そ100万℃まで熱する事が可能である。二つの魔法は対称の魔法であるため、片方の魔法効果を防ぎたければ、もう片方の魔法の発動が必要となる。

 この二つの魔法は熱属性最難魔法と言うだけあって、必要な魔力量も膨大だ。中級魔法の中でも最も魔力量を必要とする。

 この魔法は中級魔法を軽く凌駕する程の威力がある為、危険指定されている程だ。


「こんな魔法は広場では危ない。少し離れた森に行く。」


 ユナのアイデアで孤児院を凍らせることも燃やすことも無く、二人は練習する事が出来た。

 スザクも二つの魔法を使ったが、威力調整が出来なければ危険な魔法でしか無い。他の魔法よりも数倍落ち着いて魔法を発動させた。……やはり、完璧だったが。


────────────


「疲れたー。」

「お疲れ様。」


 熱属性最難魔法を覚えてから二週間ほどたった。

 俺からの要望で師匠には、【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)】と【灼熱地獄(インフェルノ)】の練習に付き合ってもらったのだ。

 やはり、師匠は練習相手としては申し分ない力を持っていた。流石、師匠っ!初めは空間座標の指定がとても大変だったが、今ではそれも楽々と行える。その後、何度か魔道人形(ゴーレム)に対して二つの魔法を使ってみたが、威力は壮絶だった。【灼熱地獄(インフェルノ)】を使った時などは魔道人形(ゴーレム)が溶けてしまっていた。二週間の猛特訓の末に完璧に使いこなす事に成功したのだった。


「よし!」

「スザク頑張った。」


 そう言って師匠は既に日課となっている、練習後の冷たい真水をくれた。これがまた美味しいのだ。病みつきになる。水で、だ。


「次は何をする?」


 ユナは可愛く首を傾げる。そう、可愛くだ。ここ、大事。


「師匠のおまかせで。」

「じゃあ、炎属性は後回しにして、氷属性を覚える。」


 炎属性は熱属性よりも強い魔法が無いのだ。そして使い勝手があまり良くない。どちらかというと使用用途が少ないのだ。熱に比べると。そこで氷属性を覚える事にした。

 練習メニューはまた同じである。最も基本となる魔法を覚える。それが楽々と使用出来れば、試しに最難の魔法。出来なければ基礎練習の積み重ねである。

 日を改めて練習は始まった。


「氷属性の最も基本の魔法【氷粒(アイス)】。」


 はっ!あの美味しいアイスクリーム、だと!?…………勘違いでした。すみません。

氷粒(アイス)】は最小でミリ単位の最大で拳大の大きさの氷の塊を対象に放つ魔法である。これが基本の魔法だ。ポケ〇ンで言う所の『こおりのつ〇て』という技だ。なんと分かりにくい。

 これが意外と苦戦……いや、勿論完璧だよ?


「流石スザク、じゃあ最難魔法【樹氷世界(アイスワールド)】。」


 ユナが魔法を発動させた。その瞬間、スザクとユナの周りに巨大な樹氷が幾つも出来た。まさに樹氷世界である。綺麗な魔法だが、何の使い道が?そのスザクの疑問に気付いたのか、ユナが答えた。


「この魔法の使い道は気温の低下や樹氷を折って攻撃の武器にする、或いは樹氷自体を対象に放つ等にある。」

「危険な魔法……なのか?」


 イマイチである。聞いた所の感想がそれだ。もう少しマシな使い道は無いものだろうか。……だが、考えていても時間が過ぎるばかりだ。実行すべし。


「【樹氷世界(アイスワールド)】。」


 パキッ、という効果音が聞こえてきそうである。スザクはユナほどでは無いものの、樹氷が数本出来た。スザクは試しにそれを折って振り回してみた。


「剣としても使えるかもしれないね。」

「強度が……。」

「あ~それがあった。じゃあボツか。」


 そんなこんなでスザクはどんどん中級魔法の難関魔法をクリアしていった。

 攻撃魔法として利用できる中級魔法の属性の最難魔法を全て覚えている内にスザクが孤児院に来て七ヶ月経っていた。


「もう七ヶ月か……。」

「時が過ぎるのは早い。」

「そうだな……。」


 思い返してみれば、沢山の事があった……気もする。

 本を読んだり……本を読んだり……ユナと会ったり……変な本の管理人になったり……魔法練習したり……。

 ……あんまり無いな。よし、これからも頑張ろう。


────────────


成河(なりかわ)朱咲(すざく)


職業:魔術師見習い

適正属性:無限属性(インフィニティ)

称号:なし

階位:D級魔術師

備考:無詠唱魔術師

得意魔法:

『炎属性』【烈火噴火(イラプション)

『熱属性』【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)】【灼熱地獄(インフェルノ)

『氷属性』【樹氷世界(アイスワールド)

『雪属性』【吹雪世界(ホワイトアウト)

『嵐属性』【黒塵竜巻(ダストハリケーン)

『飛属性』【疾風穿斬(ゲイルスラッシュ)

『鋼属性』【錬金術(アルケミィ)

『輝属性』【中級回復術(ヒーリング)

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