76話 神様!異世界の神様とお会いしましたわ!
「やぁ、お困りかい?」
「え!?」「むう!」
「警戒しないて。僕味方だよ」
皇帝が着るよりも豪華な服を着ていた。
髪は白く背中まである。顔は整っており、今まで見た誰よりも美しい。
この精神へは2人までしか来れないのだ。
手が2つしか無いかららしい。魔法でここに来る事は出来ないし、どう対応して良いか分からない。
「普通はさ、信じないものさ。人間は疑う事から始める生き物だからさ。でもね。これだけは言える。ハオを助けたいならば、僕の言う事を聞いてくれないか?」
「その前に、貴方は何者なのです?」
「ああ、この世界の違う異世界の神様さ。地球の神様と名乗っておこうかな」
「か、か、神様!?」
「ほぅ、これは素晴らしい」
「君達は名乗らなくていいよ。知っているから。それでは改めて礼を言おう。ハオを今まで助けてくれて」
「今までではありません。これからも!です」
「あははは!うん!いいね!」
「で、地球の神よ。どうするのだ?」
「あ、そうだったね」
地球の神様は説明してくれた。
異世界の神様がハオと接触した。
ハオの精神崩壊を魔法で凍結させたらしい。
魔法はやがて溶ける。そうなれば、また精神崩壊が進み、もう取り戻せなくなるとの事だった。
時間もあまり無い。
ある部屋に案内された。そこを開けると、腕が床から伸びている。ん?床では無い。沼の様な、水の様な。
「この腕がハオのだよ」
「え!?」
地球の神様は腕を伸ばし、制止させた!
「この沼に落ちたら最後。もう二度と出られなくなるよ。それでも助けてあげられるかい?」
わたくしは縦に頭を振った。
この扉から、何とか腕を伸ばせば届く!左手で扉付近の壁を持ち、右手を伸ばす!何とかハオの腕を掴む事が出来た!
「俺も力を貸そう!」
クラウド公爵が扉に近付く!
が、それは出来なかった。
「ぐああ!何だこの灼熱の様な痛みは!?」
「これがハオの感情だからだよ」
「何故、わたくしは平気なのです?」
「愛だからだよ。愛する故に、ね」
「すまぬ!これ以上は無理だ」
「いえ!クラウド公爵!ありがとうございます」
わたくしの力で、何とか頑張ってみる!
が、ヌルリと滑り上手く掴めない!少しずつだが、ハオは沈んで行く!ダメ!それだけは!
「ハオ!ハオ!ハオ!!!わたくしの手を掴んで!お願い!」
何も聞こえない。
響かない。届かないのだ。この手の温もりさえも。
「いや!ハオ!沈んじゃイヤ!うう!お願い!」
手首から手のひらへ。
そして、今は指を辛うじて掴んでいるに過ぎない。
「ハオが沈めば、もう助ける事は永久に出来ない」
地球の神様が言う。
神様が出来ないのだから、そうなればわたくしでは無理なのだろう。
「この沼に落ちたら、もう二度と戻れない」
そうか。
わたくしは間違っていたのだ。
指からハオの手が滑り落ちた!
ああ、やっと分かった。自分がどうすればいいのかを。
わたくしは飛び込んだ!
沼に落ち、ハオを抱き締める!何とか頭を引き上げ、わたくしは決意した!もう二度と離さない!この精神世界から出られなく。ハオと一緒ならば、何処でだっていい。
「ハオ!もう離さない!絶対に!」
沼が光る!
激しく輝き、そこには何も無くなっていた。
いつの間にか、あのベッドの上に居る。
わたくしは三角座りのハオを抱き締めていた。頭を何度も撫でて、嗚咽を吐くハオを慰める。
「ああ!ああああ!ぼくはこれを望んでいたのだよ!あはは!奇跡!これこれ正にそう言うに値する!神の力を超えたこの光景を!奇跡と呼ばず、何と言えばいい!!そうだろ?異世界の神よ」
「そうだね。約束を破ってすまない。地球の神よ」
「愛する力。愛するが故。
愛に溺れ。愛に悲しみ。愛に怒り。愛に嫉妬し。愛に苦しみ。愛に憎しみ。愛に期待し。愛に恐怖し。愛に後悔し。愛に焦燥し。愛に絶望する。
そして、愛に目覚めるのさ。
人は愛無しでは生きてはいけないのだよ。その力は神をも超える。それを見れて、僕は満足、いやご満悦だ。
それに、君は約束を破ってはいない。彼はキチンと断っただろ?異世界の神よ」
「何でもお見通しか。そうだね。あの時もそうだった」
「すまぬ。異世界の神様と地球の神様よ。ここからは出られそうなのか?」
「ああ!すまない!君は出てもいいよ!ほい!」
「え!?あ!?ちょま、て!?」
「無粋だなぁ!地球の神よ」
「このアツアツな二人の邪魔をする方が無粋さ!異世界の神よ」
「なぁ、もう暫くここに居てもいいだろ?この奇跡という名の愛を見届けるのを」
「嫌と言われても、後ろから覗いてやるさ!」
「そうだね。次見れるのは、何時になるのだろうね」
こうして、二人が満足するまで、見届けるのであった。
僕達には無い薄れた感情を確かめる様に。羨ましくもあり、妬ましい。でも、こういうのも久しぶりに悪くないと思う。




