75話 神様!処刑されます!6
わたくしはハオを見る。
目は開いているが、光を失っていた。
処刑台から外され、今はベッドに寝かせている。治療も行っているが、芳しくない。
体の方は治る。
だが、壊れた心は無理と言われた。
「残念ですが」
わたくしは途方に暮れる。
死んではいない。けど、意識はもう戻る見込みは無いそうだ。これは死んでいるのと同じだと思う。
わたくしのせい?
ハオをこんな目に合わせたのは。後悔と絶望にわたくしは苛まれる。死にたい。死んで詫びを。
果たして、ハオはそれで許してくれるだろうか?
ガチャ。
「失礼する」
クラウド公爵が部屋に来られた。
礼を言って、ハオの状況を説明する。それしか今の自分を支えられないからだ。
「成る程。分かった。で、どうしたい?」
「……………………ハオを助けたい」
「そうか。ならば、試す価値はあるやもしれん」
クラウド公爵が精霊を呼び出す!
羽根の生えた小さな精霊が姿を表すのだ!
「何とかなるか?」
「分からない。でも、繋ぐ事は出来る」
繋ぐ?よく分からない。
でも、今は何でもすがるべきだ!
「マチルダ様、死ぬ覚悟がおありで?」
「………大丈夫です」
クラウド公爵の説明が始まる。
ハオの精神へ入るとの事だ。入室は2人まで。
そこで、死ねば死ぬ。
精神が戻って来られなくなる可能性もある。
「覚悟の上です!お願いします!クラウド公爵!」
「マチルダ様の思い、確認した。では、俺も同行しよう」
「え!?」
「何、邪魔等せん。惚れた相手を見たいだけさ」
「分かりました」
こうして、クラウド公爵とわたくしは、ハオの精神へ侵入する事になった。戻れる保証は何処にも無い。助けられる保証も。
でも、絶対に助けてみせる!
そして、好きだと言われてみせるのだ!
「では、行きますよ!」
精霊の力を借りて、クラウド公爵とわたくしはハオの精神へ。思った程に簡単だった。ハオと手を繋ぐだけで良かったのだから。
メイドに簡単に説明しておき、途中で起こされない様にした。
「ここがハオの精神?」
「見た事が無い光景だ!素晴らしい」
石の建物が聳え立ち、100メートルはあるのではないだろうか?それが1つではない。沢山あるのだ!道は整備されており、白いラインが引いてある。赤や青に点滅する光りも面白い。
「あんな所に人が!?」
石の建物に人が居た!
デカイ!何やら話をしている様だ。見慣れない文字が浮かび、そして消える。横に流れては消え、場面も切り替わるのだ。
「あの鉄の乗り物は便利そうだ」
鉄の箱が動く。
かなり早い。馬よりも早いのだから、便利だと思う。
「人が沢山歩いているな」
「同じ服装で気持ちが悪いですね」
正装しているとは言い難い。
だが、見た目は悪くないのだけれど。頭も同じ形で、ハンカチで世話しなく額を拭くのだ。
「ん?場所が変わったな」
家の中である。
赤ちゃんをあやし、膝の上に乗せている。この人はハオによく似ていた。いや、ハオ本人だと思う。かなり老けているからだ。30くらいだろうか?
場面が変わり、嫁と思わしき人物とケンカしている。
片付けろ!使った食器は台所へ!
優しく言われればわかる!
優しく言っても片付けないやろが!
お前の誠意が足りんからや!
更に場面が変わる。
はぁ、何処か遊びに行きたい。
毎週連れて行ってるやろ?
お前のはええな。
はぁ!?家帰ってきて、ご飯用意してるのにか!?
たわいもないケンカ。
ケンカの内容は、嫁が家事をしない。ゴミを捨てない。片付けない。
これで、よくも離婚しないと思う。
たいして、顔もよくないのに。お世辞にも可愛いとは口が避けても言いたくない。
またケンカしている。
頬のかさぶたがどうとか。
シミが目立つから、かさぶた作ってるんや!
意味分からん。
かさぶたが治ると、シミが薄暗いなるんや!
意味分からん。
男の子が現れる。
ハオによくなつく。お母さんからは虐待されている様だ。
洗濯物を何かの箱に詰め込んでいた。
ハオが言う。
何かしているの?
お母さんが!お母さんが!もうお前の洗濯物は洗濯しないって言ったんや!だから、僕が自分ので洗うしかないんや!
お父さんが全部洗ってあげる!7歳の子供に洗わせるとか、本当にクズや!クズ以下やわ!糞が!!
ハオが男の子を抱き締め、泣いていた。
何でもこうも切ない気持ちになるのだろう?あの箱が何か分からない。でも、何となくだけども分かる気がするのだ。
あの憎たらしい嫁が出てくる。
わたくしももう見たくはない。ここまで人を嫌いになった事は一度も無いのだけれど。
離婚しよう。
分かった。子供は二人共引き取る。
分かった。・・・いや、娘は引き取る。男の子は苦手やであれやけど、娘を生きる希望にしたい。
いや、僕が二人共引き取る。
いや、娘は引き取る。
何で?
子供が出来ん様に手術したやろ?もう子供産めないさかい。
はぁ?46にもなってまた産むの?
そして、ハオはベッドに座っていた。
三角座りをして動かない。子供は二人共、連れて行かれたみたいだった。わたくしはハオに触れようとする。しかし、それは叶わない。すり抜けるだけだ。
「うっ…………ううう!!」
わたくしは泣く事しか出来ないのか?
ハオを救う事も出来ない。ここまで来て、悔しくて歯痒くて、手で顔を覆うしか今は。




