74話 神様!処刑されます!5
「マチルダ様、そこで待機していよ。合図を送る。そのタイミングで川を渡ってくれ」
「わかりました」
馬から降りて、クラウド公爵は剣を抜いた。
川に刃先を向けて、溜める。重心を落とし、剣に意識を向けた。多分、スキルを使うのだろう。
クラウド公爵は、剣の達人だ。
ユフィお姉様の騎士、アルフレッドさんとタメを張るらしい。そんな人がわたくしを妻にと思う。
でも、わたくしは揺るがない。
それだけ、ハオを愛してるのだから。
「今だ!」
クラウド公爵の合図だ!
まだスキルは使われていない。が、信用するしかないのだ!ハオを助ける為に!
「真空烈風斬!」
下から上に斬り上げる!
風圧と斬撃により、川は真っ二つなった!
その隙に、馬を走らせ駆け抜ける!
段差や高低差を何とか乗り切った!向こう岸で、クラウド公爵が帽子のツバを掴む。
「クラウド公爵!ありがとうございました!」
「礼には及ばん!愛する人を助けてこい!」
わたくしは振り返えらなかった。
無駄にはしない!決して!ハオを助け、クラウド公爵に礼を言うその日までは!
太陽か天高く昇る。
多分、昼過ぎだろう。城へとわたくしは戻った。
広場には、人だかりが出来ている。
柵が張られ、中央には男が縛られていた。意識があるかは不明だが、木の板に手と頭を挟まれている。そして、斧を持った処刑人が今か今かと待ちわびているのだ。
そして、やはり待ち人は居た。
フローラである。
「そこを退きなさい!フローラ!」
「絶対に退きません!マチルダ様!」
人々が道を空ける。
柵の前まで、一本の道が出来た。
「大地よ!凍りなさい!ダイヤモンドミスト!」
「燃やし尽くしなさい!フレアバースト!」
氷と炎で相殺された!
フローラよりも魔法はわたくしの方が上回っている。が、相性でその差を埋められた。氷は炎に弱いからである。
フローラの得意魔法は、火風土。
わたくしは氷しか無い。扱えない訳では無いのだが、フローラよりも劣る為、役には立たないのだ。
高位魔法を使えば話は変わってくるだろう。
だが、そんな溜める時間を与えてくれるとは思えない。
今はあの柵を越えて、ハオを救う。
フローラの相手をしている場合では無いのだ!
「只今より、公開処刑を始める!」
「え!?」
時間が無い!
わたくしは焦った!ハオが死ぬ!この世から居なくなる!それだけは承認出来ない!わたくしの命に変えてでも!
斧が振り上げられる!
あれをどうにかしなくてはならない!
「輝きを放て!ブラストフロー!」
「させるか!大いなる風よ!我に力を!エアーブレス!」
氷の矢は斧に命中する事無く、フローラによって阻止された!
バキーン!
「な!?何故!?阻害したのに!!」
「へっへーん!私も参戦しますよ!」「微力ながら、お供します」
「スミス!サラ!」
反らされた氷の矢は、メイド2人により軌道修正された!
そして、処刑人の斧は弾き飛ばされるのだ!
わたくしは、ゆっくりと歩く。
柵へ近付く為に。二人によって、柵が壊される。わたくしは優雅に振る舞うのだ。
「アーサー王!マチルダ・クロスロード!ここに参りました!」
「何用だ?」
「わたくしの伴侶となる者への不当な処罰をお辞め下さい」
「お前はクラウド公爵に嫁いだのではないのか?」
「それは昨日、破棄されました」
「それは解って言っておるのだな?」
「はい」
「だが、この処刑は覆らん。残念だったな」
「そうですか。ならば、わたくしとハオの二人を国外追放して下さい」
「それはならん!絶対にだ!」
アーサー王は怒り、立ち上がる!
青筋を立て、わたくしを睨むのだ!それでも、目を反らしてはならない!引いてはならないのが今なのだから!
「理由をお聞かせ下さい!」
「理由だと!?」
「事には原理、原則があります!お答え願います!」
「ぐぬぬぬぬ!!」
恥をかかされた。
だから、処刑する。単純明快だ。
だが、そんな王を国民はどう思うだろう?
不振を抱き、いつかは爆発する。そうなればまた内乱が勃発し、事態は悪化を辿るのだ。
「もう、宜しいのではないですか?貴方」
王妃が口にした。
それに反論が出来ず、アーサー王は立ち尽くす。
事態を重くみた公爵達は、その場を抑える為に、処刑の中止を告げた。これにはアーサー王も従うしかなかったのだ。




