73話 神様!処刑されます!4
窓に駆け寄ると、そこにはミネアが居た。
馬に辛うじて乗ってはいる。いつ落馬するか分からない。それくらい状況は厳しかった。
「クラウド公爵、失礼しても宜しいでしょうか?」
「………構わん」
わたくしは一礼し、玄関へ走った!
一体何が起こったの?もしかして・・・不安が過る。
確認しなくてはならない。
が、躊躇ってしまう。それくらい何かがある事くらいは解っている積もりだ。わたくしには覚悟が足りない。そう自覚せざるおえないのだ。
「ミネア!」
「………ハオが…………ハオがぁ!ううう!!」
ミネアは泣いた。
でも、それでは分からない。ミネアには可哀想だが、聞くしかないのだ。
「落ち着きなさい!ミネア!」
「うぐ………はい」
感情に流されてはいけない。
最悪のケースを思い浮かべる。ハオが死んだ。ハオがユフィお姉様と結婚した。消えて居なくなったと。
「ミネア、どうしたのです?」
「はい………ハオが明日、処刑される事になりした」
「!?」
最悪では無い。
が、かなり厳しい状況ではある。ここから馬車で1日半。間に合わない。わたくしは顔を歪める。何か方法はないか?短縮出来る事は?
馬車で1日半。
ならば、荷台を無くせば半日は無理でも、もう少し短縮出来るのでは?希望が見えた。
「では、馬に乗って向かいましょう!」
「マチルダお嬢様、それは無理です」
「何故、ですの?」
ミネアは申し訳無い顔をする。
「馬に休憩をさせねばなりません。かなり浪費しております。僕の乗って来た馬では、逆に時間がかかると思われます」
わたくしは考える!
このまま諦めてしまうのか?答えはノーだ!ハオと一緒になりたい!だから、ここまで来たのだ。断りに。
クラウド公爵の気持ちを考える。
わたくしならば、顔も見たくない!出て行け!と言うだろう。それくらいの事はした。
アーサー王の直々の褒美で、わたくしと結婚するする事になった。しかし、蓋を開けて見れば、処女でも無い。好きな男がいる。
印象は最悪だ。
そんな相手に馬を貸すとは思えない。
それでも、わたくしは恥を忍んでお願いするしかないのだ!
「クラウド公───」
「馬を手配しよう」
「え!?」
失礼にも聞き返してしまった。
わたくしは恥ずかしくて堪らなかったのだ。顔を赤くして、俯くしか出来ない。
生きているならば、恥は返せる。
無理矢理自分に言い聞かせるのだ。
「ありがとうございます。クラウド公爵。ですが、わたくしは返す宛もありません。それでも宜しいのでしょうか?」
「マチルダ様が惚れた相手を拝める。それで十分さ。さて、アーサー王にも一つ小言を言ってやらねばなるまいがな」
わたくしは思う。
ハオが居なければ、間違いなく惚れていただろう。それくらい寛大な心の持ち主だと感銘を受けた。
「ローゼフ!馬の手配を至急頼む!」
「はっ!畏まりました!クラウド様!」
「ミステーネ!手当てを頼む!」
ミネアの傷を魔法で癒す。
わたくしは自分の無力を知る。そして、この恩を返すのだと誓った。マチルダ・クロスロードの名にかけて!
「マチルダ様!それでは参りましょう!」
「はい!お願いします!」
馬を二頭用意して貰った。
一頭だと二人乗りとなり、スピードも落ちる。更に浪費も激しく、休憩も取らなくてはならない。最悪、一頭捨てても良い。それくらい急務だとわたくしは考えていた。
ミネアから話を少し聞いている。
フローラに邪魔されたのだと聞く。色々と思うフシはあるが、今更それを言っても仕方無い。
これからどうするか?
では足りない。ハオを助ける!わたくしはそれしか考えられないからだ!フローラが現れたら、その時に考える。今はそれでいい。
クラウド公爵と馬を走らせ、8時間が経過する。
少し休憩を提案されたが、直ぐに断った。が、馬を休めないと、ここからは厳しいと告げられ、現在川の近くで休んでいる。
「クラウド公爵、我が儘を言ってすいませんでした」
「気にするな。最愛の相手がいれば、俺も同じ事をするだろう」
クラウド公爵は馬に水を飲ませていた。
わたくしもそれに習う。自分の疲弊させた馬なのだから。
「間に合うと良いのだが」
クラウド公爵は小言で囁く。
「間に合わせてみせます!」
わたくしは肩を震わせ、怒りをぶつけた。
クラウド公爵に怒ったのではない。このわだかまりを何処にやれば良い?クラウド公爵には悪いと思った。
「………そろそろ行くとしよう」
小雨の中、馬に股がり、歩を進めた。
道中、難なく進めたが、最後に罠が仕掛けてあったのだ。
「来た時には橋がありましたのに・・・」
「そうか。橋を落とされたか」
川が流れ、かなり流れは強い。
馬を引いては無理だろう。ここは引き返して、違う道を選ぶしかない。
だけど、そんな余裕はわたくしは無い。
もう日が明けて、太陽は高々と登っている。一刻も早くここを通貨しなくてはならない。
「わたくしはハオを救う事は無理なのでしょうか」
頬を涙が伝う。
呆然と向こう岸を眺める事しか出来なかった。




