62話 神様!試し打ちしました!
僕達は馬車に揺られ、城下町を目指す。
マチルダ様に乗り心地を体感して貰う為だ。ユフィ様を試乗させた事がバレて、僕はお仕置きをされている。馬車の中で。
「わたくしが初めてではありませんよね」
「そ、そうですね。でも、あれは試乗しただけで、今回が本番ですから!こ、これが正式な初乗りですよ!マチルダ様!」
「物は言い様ねぇ」
「ど、どうですか?乗り心地?」
マチルダ様が何度も何度も、僕に意地悪をしてくる。そんなに根に持つタイプだったのか?本当に分からん。女の子ってヤツは。
「そう、ですね………これは凄いと思います………が」
「何か不満でもありますでしょうか?」
横目でマチルダ様が膨れた顔をする。
「こんなの卑怯です!」
「はぁ」
目を閉じ、少し俯く。
そして、僕の方を見た。
「ですが、これは良い足掛かりとなりますわ!ハオの貴族への第一歩として!!」
「そんなに僕を貴族にしたいのですか?」
僕には貴族になる意味等無い。
マチルダ様にお仕えし、妻となる相手が居ればそれで良い。僕の希望としては、ミネアさんだけど。
マチルダ様がこいつと結婚しろ!
と、言われたら、それを拒む事が出来るだろうか?まぁ、そんな事を言う人ではないから、安心はしているが。
ふと、ミネアさんを見る。
僕と目が合うと、逸らされてしまうのだ。やはり最近の僕への態度はおかしい。もしかして、僕の○○○が小さかったからか!?はぁ、凹むよなぁ。
もし、それが原因ならば、僕にはどうする事も出来ない。拡張出来る魔法や薬品を探さねばならくなる。まぁ、そんなモノは例え、この異世界でも存在しないのだが。
「到着しましたですぅ」
「お疲れ様」
僕はフローラさんに労いの言葉を告げる。
顔を逸らされ、僕は苦笑いした。どうやら二人に嫌われてしまったのかもしれない。
「はぁ」
深い溜め息を付く。
溜め息1つで、幸せが1つ逃げて行く。
そんな迷信があるが、それは本当かもしれない。嫁との結婚生活で、僕は数え切れない程、溜め息を付いた。そして、苦しい日々が続いたのである。
やはり、溜め息は付くモノではないと思う。
「ハオさん、ここですかぁ?」
「あ、はい。ここで間違いないです」
雑貨屋とも、お店ともとれない。
そんな屋敷にお邪魔した。これには訳がある。
「すいませーん。ハオです!」
「おお!よく来た!上がってくれ!」
中からお爺さんが出てくる。
この人は、僕が頼んだ物を作ってくれた職人だ。名前はクラス・ニコライ。男爵で変わり者で通っているらしい。
「よくぞまぁ、こんなモノ思い付くかねぇ」
「ははは。でも、大変でしたでしょ?」
「いやいや!楽しかったぞ!こんなの初めてだ!」
「来年もお願いしたいのですが?」
「おおおお!!!勿論じゃ!」
クラスさんに礼を言って、品物を受け取る。
箱には沢山の水晶玉が入っていた。
「これは?」
「魔道具です。マチルダ様」
「何に使うのですか?」
「えへへ。それは内緒です」
「また、はむはむされたいのですか♪」
「ひぃ!それだけは勘弁して!えーとですね。今晩の夜に御披露目しますから!その時まで、楽しみにしていて下さい!」
「仕方ありませんね!」
マチルダ様がプイと顔を横に逸らした。
最近思うのだが、とても表情がコロコロ変わる様になっている。余裕が無いのか?いや、そんな事はないだろう。皇族なんだし、毅然とした振る舞いをされている。
城下町から更に離れ、ここからでは城が見えなくなった。少しだけ薄暗くなっていく。
「では、お楽しみといきますか!」
「まぁ!楽しみですわ!!」
「フローラさん。この魔道具に魔力を込めて、空高く打ち上げられますか?」
「うーん。風系統の魔法ならばぁ、可能ですぅ」
「では、それでお願いします!」
フローラさんが魔道具に魔力を込めた。
水晶玉は赤く光りを帯びる。
「今です!空へ打ち上げて下さい!」
「はいですぅ!」
フローラさんは水晶玉を掲げた!
すると、魔法の起動紋章が浮かび上がる!丸い円の青の起動紋章が、水晶玉を天高く持ち上げて行く!
ヒュルルル!………ドーン!
赤く光った水晶玉は、一定の高さまで上がると、破裂した。その時に生じる光の波動が、全方向へと散らばるのだ。真円、歪みの無い。
「わあぁ♪………綺麗」
マチルダ様がうっとりとした表情で眺めた。
暫くして、僕の方を向く。
「これは素晴らしいですわ!ハオ!」
「ありがとうございます!」
フローラさんに指示をして、もう一発打ち上げた。
ヒュルルル!………ドーン!
今度は緑色に光が散らばる。
そう、これは異世界式の打ち上げ花火だ!
「今度は………違う色………………はぁ、綺麗」
次々と打ち上げる花火にマチルダ様は心を奪われた。目を輝かせ、夢中に光を追っている。
「ハオ、これは何と言うのですか?」
「僕の祖国では打ち上げ花火と言います!夏の祭りの時に、特別な日に打ち上げるのですよ」
「特別な日に?」
「はい。マチルダ様と初めてお会いした時とか………あ、すいません。あ、あのですね。結婚式とか、街をあげてのお祭りの時ですかね。ははは」
僕はフローラさんに打ち止めを伝えた。
まだまだ作って貰う様に頼んだが、そんなに沢山試し打ちは出来ない。
あまり遅くなると、盗賊に出くわすので、馬車に乗り込んだ。
帰りは打ち上げ花火の事で盛り上がった!
まだまだ綺麗な、そして凄い花火がある事を告げると、マチルダ様は目をキラキラと光らせる。ああ、柳の様に垂れ下がるあの花火を、この人に見せたいとそう思った。
まだ、ここでは作れない。
来年は、来年こそはと僕は思った。




