48話 神様!人生で最悪のピンチが訪れました!
この話から登場するユフィはサクラとは同一人物ではありません。世界には自分と瓜二つな人間が3人います。
NTRはありませんので、ご安心してお楽しみ下さい。
僕を迷っていた。
人生にはずっと迷っているとか、そんな事では無い。まぁ、迷ってますけどね。
勢いで飛び出したはいいが、城の中で迷子になった。もう2か月も居ますよね?とかツッコミは不要ですから!
「どうした?」
聞き覚えの声がした。
20年ぶりか。まだ脳が覚えていたとは。不意に後ろから声をかけられた。心臓が逆立つ。爆音と共に嫌な汗が流れた。頭の中は真っ白となり、本能のまま後ろを振り返る。
そこには、サクラが居た!
「あ、あ、あ、あ、ああああああ」
「大丈夫か??」
目の焦点が合わない!
心臓がギューっと締め付けられる!僕は心臓を手で押さえた!それでも、激しい動悸は収まらない!寧ろ酷くなる一方だ!
「はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!」
過呼吸になり、俯く。
顔からは尋常もない汗が吹き出した。
目の前には、過去に付き合っていたサクラが何故かいる。姿も当時のままだ。もしかして、異世界へ転移させて貰ったのか?世界の理を解いて・・・。
肩に手が乗る。
僕は反応して見るしかなかった。顔を直視したら、やはりサクラだ。
「あああああああああ!!!!」
僕はサクラを指差す!
手が震え、腰を抜かした。地べたに尻を付き、後退りする。
「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!!あああああああああ!!!!来るなぁ!!!!!!はぁはぁはぁはぁあっ!?」
僕はそこで意識を断った。
「誰か!誰か!!」
「何でしょうか!!ユフィ様!!」
兵士が駆け寄る。
「この者を部屋に運びなさい!」
「はっ!」
「こいつは何者だ?」
「はっ!この者は、マチルダ様の専用執事です。ユフィ様!」
「そうか。ならマチルダを呼ぶのだ」
「畏まりました!」
(腹が立つ!人の顔を見た途端に、騒いで気絶するなんて!失礼極まりないな!この償いはマチルダにしっかりさせなくては!)
病室にとりあえず運ばれる事になった。
まだ意識を取り戻していない。マチルダもまだ来ていないのだ。私は窓の外を見ていた。すると、慌ただしい声がする。
「ハオが倒れたとお聞きしました!通して下さい!」
いつものマチルダらしからぬ、慌てぶり。
私はこいつが嫌いだ。お父様に気に入られているのも気に食わない。可愛いふりをして、求婚も縁談も断り続けているからだ。さっさと結婚しろ!
「ハオ!ハオ!目を覚ますのです!」
「マチルダ!先に私に話すのが筋じゃない?」
「はっ!これは失礼しました!ユフィお姉様!ハオはどうされたのですか?ご存知ありませんか?」
「マチルダの執事なのか。なら、話が早い。こいつは私に無礼を働いた!だから、その償いをして貰うぞ」
「え!?ハオが失礼な事を!?」
「私は辱しめられた。だから、謝罪を要求する」
「・・・それは大変失礼しました。ハオの代わりにわたくしが謝罪させて頂きます。執事がご迷惑をお掛けしました。申し訳御座いません。ユフィ・ランドバーク様」
「ふん!」
反発するかと思ったが、素直に謝罪してきた。
もしかして、この執事が大事なのかも?そう思えてならない。
「・・・ん、・・・・こ、ここは!?」
「ハオ!目を覚ましたのですね!わたくしの事が分かりますか?」
「マチルダ様?はっ!?申し訳御座いません!ご迷惑おかけしました」
「謝らなくて良いのです。本当に大丈夫───」
「あ、あ、あああああ」
私を見て震えている!
何なんだ!?こいつは!?頭を抱え、うずくまっていた。
「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!」
「ハオ!?どうしたのです!?」
「あわあわあわあわあわ・・・あああああ!!来ないで!もう来ないでぇ!!あっちに行って・・・」
ガタガタと震えて出す!
そんなに私が嫌いか!マチルダの執事のくせに!生意気な!
「マチルダ、気が変わった。お前の謝罪では許せない。詫びたいならば、こいつに謝罪させろ。私は部屋に戻る。もし、謝罪しなければ、処刑は免れんから」
「そ、そんな!?ユフィお姉様!」
「お前にお姉様と呼ばれる筋合いは無い!!」
私は部屋に戻り、マチルダの執事がどんな人物なのかを調べさせる。
「何でも料理が得意な様です」
「ふん!料理等、誰でも作れる」
「それが、王宮コックよりも優れておりまして・・・」
「ん?それは本当に?」
「はい、これがその料理です」
「パンではないか!馬鹿にしているのか!?」
目の前にはパンがある。
これの何処が料理と言える?こんなモノ!腹が立って仕方無かった!だが、食べてみなければ評価も出来ない。そう思い、一口噛った。
「ん♪な、何だこれは!?」
「シュークリームと言ってました」
「名前では無い!こんな!こんな旨いパン初めてだ!」
「えーと、パンではなく、お菓子と申してました」
「お菓子だと!?何故、私の所に持って来ない!?」
「姫様は本日、久しぶりに戻られたではありませんか」
「そ、そうだったな。すまぬ」
驚きだ!
こんなお菓子食べた事が無いぞ!私はパンを見つめた。3か月留守にしていたのだ。知らなくて当然か。
「これの他にアイスクリームも御座いますが、如何なされますか?」
「それもだ!早く!」
アルフレッドは部屋を出て行った。
この私が動揺するだと?マチルダの執事を思い出す。私を指差し、化け物でも見るかの如く、叫ぶ。ああ、忌々しい!!また腹が立ってたので、パンを一口噛る。うん!旨い!食べ物には罪は無いからな。あの執事!どうしてくれよう?
「姫様、アイスクリームに御座います」
「うむ」
何だこの白い塊は?
これが食べ物だと!?馬鹿にして!でも、食べれば案外旨いかもしれない。さっきのパンを思い出す。
「ぱく………んんん♪はぅ♪な、な、な、な、な───」
「アイスクリームに御座います」
「つ、冷たい♪んん♪美味しい♥」
「いつもの姫様ではありませんな」
「馬鹿者!これは何だ!!旨いを通り越しているぞ!?」
「私めも最初驚きましたから!」
「………王宮コックでも敵わない訳だ」
空になった皿を見つめた。
私はお菓子は好きでは無いが、これならば、いくらでも食べられる。ええい!マチルダめ!余計に腹が立つ!こんな優秀な執事を抱えているとは!!そして、その執事をけしかけて来るとは、誠に遺憾だ!
「あの執事、只では済まさんぞ」
「姫様、申し上げて宜しいでしょうか?」
「何だ、言ってみよ」
「あれは精神疾患を患っていると思われます」
「精神疾患だと?」
「はい。戦場でよくあの光景を見ておりますので。パニック障害とも言えるでしょう。味方が撃たれ、それを目撃する。自分もそうなるかもしれないと、戦意喪失となるのです」
「どう見ても、あの執事は兵士では無いぞ!」
「そうですね。多分、違う理由があるのかと」
「私は気に食わん!そんな理由で、私のプライドは汚されたのだからな!如何なる理由も、私には通用せん!例え、病気であってもな」
「お厳しいですね」
「何だ?アルフレッド!まさか気に入ったのか?」
「ははは!そうかもしれません」
「マチルダに大きな借りを作らねばな!!」
さぁ、マチルダ!早く私の所に執事を連れて来るのだ!
ああ、このアイスクリームとやらは旨いな!もっと欲しい。もっとだ。




