3話 神様!女心が解りません!
「マチルダ様!出来ません!」
恐ろしくて声が出ない!
物凄い威圧感で僕は呼吸も儘ならなかった。もしかして、マチルダ様は女王陛下なのか?そういえば裸を見られても、堂々としていたし。
「ハオ様。何故ですか?」
ひぃい!
冷気が僕を包み込んでいるかのようだ!
魔法なの!?何なのこれ!?殺される!?顔は賑やかだが、目が笑ってはいない。見えていないが、何となくそう思う。
考えろ!ここを乗り切るんだ!
僕は嘘を付く事が出来ない。1つの嘘を付けば、それを隠すのに100の嘘を付かなくてはいけないからだ。それに僕は器用では無い。
追い詰められた時程、普段やりなれない事をすればボロが出る。ここは正直に話そう。だが、地球から来た事はギリギリまで濁した方が無難かもしれない。
「マチルダ様!
僕は好きな女性としかエッチ出来ません!」
「ハオ様は心に決めた女性が居るのですか?」
「今は居ません!」
「ならば宜しいではないです?やらしい目付きで、わたくしを舐め回す様に見ておられたではないですか!この陰険ムッツリな殿方です事!」
「マチルダ様の様な美人で可愛くて魅力的な女性ならば、誰でも心を奪われます。裸を見た事は謝罪させて下さい!罰を受ける所存です!あ、でも、死刑は無しでお願いします!」
「なら、抱けば宜しいでしょう?」
「・・・それは出来ません」
「では、罰を与えます!」
僕は目を瞑った。
死刑かもしれない。これまでの色々な事か脳裏に過る。そういや、これまで良い事無かったな。辛い事の連続で、普通の人ならば体験する事等無かっただろう。思い返せば泣けてくるのは気のせいだろうか?ああ、泣きたく無いのに涙が・・・。
引っ越しの手伝いに妹を連れて来たら、警察を呼ばれた。その場は何とか収まったが、また揉めて警察署へ同行した事。
警察署で取調室の狭い部屋で話し合いした事を思い出す。勿論、カツ丼は出なかった。1日に2回も警察にお世話になるのはどーかと思うが。お前は非常識なんじゃ!と罵倒されたのを思い出す。食べた茶碗や、お菓子の包装紙を捨てない、片付けないヤツの方が常識無いと思うのだが。
「もう一度、先程仰った事をお言いなさい」
「ふぁ!?」
マチルダはモジモジと恥ずかしそうにしている。
「ですから、その、あの、んんん!もう早く言いなさい!」
「えーと・・・マチルダ様、出来ません・・・これで良いですか?」
「ああ!もう!違います!その次の!・・・」
「はて?何て言ったか思い出せないぞ」
マチルダ様はニッコリ微笑んでこう言った。
「では、今直ぐに皇帝陛下の元まで行きましょう♪死ぬよりも恐ろしい思いをなさると思いますよ♥」
「マチルダ様は美人で可愛くておしとやかで可憐で魅力的で誰でも心を奪われます!スタイルも抜群で出るとこは出て引っ込む所はしっかりと括れており体が硬直したかの如く身動きが取れませんでした!見てしまった事を深く反省しており謝罪させて下さい!どうかご慈悲を!」
はぁ、はぁ、はぁ、
こんな早口で発言した事は人生39年生きてきたが初めてだ。
「んんん!早口だったからよく聞こえませんでしたわ!もう一度、ゆっくりと仰って下されませんか?ハオ様」
あわあわあわ!
この人怖い!でも、これを断れば皇帝陛下の元へ直行だろう。ああ、こんなに脂汗をかくとはハンカチが欲しいよ!
「あら?こんなに汗をかかれて・・・もう!」
マチルダが僕の顔をバスタオルで拭う。
いやいやいや!!それは貴女の体に巻く物でしょ!何故裸のままなのですか!?そんなに見せびらかしたいんですかね!まさか露出狂ですか!!
「さぁ、ハオ様!もう一度!」
言わなきゃ殺される殺される殺される!!!
「マチルダ様は、美人で、可愛くて、おしとやかで、可憐で、魅力的で、誰でも心を奪われます。
スタイルも抜群で、出るとこは出て、引っ込む所はしっかりと括れており、体が硬直したかの如く、身動きが取れませんでした。
見てしまった事を深く反省しており、謝罪させて下さい。どうかご慈悲を・・・」
マチルダは満足げに笑うと、バスタオルをからだに巻いた。
「うん♪宜しい!」
僕は気が抜けて後ろに倒れる。
「所でハオ様。先程仰った事は本当でしょうか?」
「うひぃ!?また言わせる気ですか!?」
「またわたくしを誉めて下さるのですか?うふふ!嘘です!」
な、何だろう。嘘には聞こえなかった。
果たして無事に生きてて行けるのだろうか?