34話 神様!キスの約束をしました!
タッ!タタタ!タッ!
夜の月明かりの下で、足音がする。
はぁ、はぁ、と乱れた呼吸も時々あるのだ。エッチな想像をしたかもしれない。だが、これは違う。僕は今、ミネアさんとダンスを練習をしているのだ。
「ど、どうですか!はぁ、はぁ」
「さっきよりはマシだけど、まだまだだよ」
「もう一度お願いします!」
(ハオは頑張っている。けど、センスが無い。勘や感覚を教えるのは難しいよ。でも、何でこんなにも頑張るんだろう?
夜会に参加しなければいいじゃないか。ハオは体を動かすのが苦手だ。だから、頭を使う事に専念すればいいのに。
でも、僕は嬉しい。ハオとダンス出来るのだから。こうして触れ合っていられるのは、とてもドキドキする。
この時間が止まってしまえばいいのに・・・)
「そこ違うよ。こう!そして、こう、ね」
「………すいません」
「少し休憩する?」
「ですね」
僕は月を眺めていた。
この異世界には月が2つある。そして、今日はダブル満月なのだ。とても綺麗だと思う。黄色の月は日本から見るのと、対して変わらない。だけど、紫の月は神秘的だ。吸い込まれそうな気分となる。
「二つの月が満月ですね」
「そうだね。でも、そんなに珍しい?」
「僕の国では、月は1つしか見えませんから」
「ハオの国からは月は1つしか見えないか。何だか不思議だね。2つ見えないのは変だよ」
「そうですか。僕は2つのが違和感ありますよ」
「月には神様がいるからね」
「そうですか。月の話をしても?」
ミネアさんが此方を見る。
昔話とか無いのだろうか?か⚪や姫とか思い出す。
「むかーし、昔、ある所に、おじさんとおばあさんがいました。満月のある日、星が落ちてきました。おじいさんは慌てて、星を見に行くと、そこには黄金に輝く岩がありました。
おじいさんはそれを持って帰ると、おばあさんに言いました。お空からこんなモノが落ちてきたんじゃ!おばあさんはそれを見て言いました。割ってみましょう!
すると、その中から、女の子が出てきたのです!おじいさんとおばあさんは驚きました!
おばあさんはその子を抱き抱え、思いました。自分達には子供が授からなかった。しかし、こうして神様が恵んでくれたのだと!
ははは。つまらないですよね?」
僕はか⚪や姫のパクりで即席に話を作った。ミネアさんからのツッコミを期待していたのだが、何も無い。滑ったのだろうか?
「いいから続けて!」
「ふえ!?」
「凄く気になる!お願い!」
「あ、はい」
「おばあさんは言いました。この子は岩石姫と名付けます!と。おじいさんは言いました。それは可哀想だろ!と。
しかし、改名する事はありませんでした。
岩石姫はスクスクと成長し、通常の5倍の早さで大きくなりました。3年を過ぎた時、岩石姫は美しい美貌で誰しもが二度見するくらい、変貌を遂げていました。
色々な貴族が妻にと、言い寄ります。
しかし、岩石姫は全て断るのです。それを見かねた国王陛下は、自分の妃とする事に決定しました。
岩石姫は言います。
ダマスク鋼鉄か、ダマスクの羽衣か、孔雀の首飾りの何れかを持って来た者と結婚します!と」
ふと、ミネアさんを見ると、物凄く食い付いているのが分かる。話を中断するのは可哀想なので、話ながら話を作っていこう。
「しかし、そんなモノは何処にもありません。何故ならば、3000年前に失われた物だったのです!
国王陛下はお怒りになりました。
探しても、探しても見つからないからです。色々な手を尽くしましたが、それでもどうしようもありませんでした。
そこで、国王陛下は言います。
岩石姫!妃とならぬならば、死刑だ!と。
それでも、岩石姫は頷きません。
家来に宥められ、その日はお城に帰りました。
岩石姫は泣きます。
月に帰りたい。
そして、名前を改名したい。と。
おじいさんとおばあさんは岩石姫を説得しました。けれど、岩石姫は泣くばかり。どうして良いか解りません。
ある日、岩石姫は言いました。
おじいさん、おばあさん、今までお世話になりました。わたくしは次の満月に月に帰ります。
おばあさんは驚きました!何が不満なんだい!どうして、もっと早く言っていくれないのか!と。
おじいさんは走りました。
お城にやってくると、カクカクシカジカで、国王陛下は大激怒します。
月に帰してなるものか!家来を集め、岩石姫を守ります。2000人の兵士が月に槍を立てます」
ミネアさんはうるうはと涙を溜めていた。何処に泣く要素あった?僕は笑わそうと、こんなに頑張っているのに!
「やがて、月から迎えがやって来ます。カボチャの馬車に乗った執事が言います。
岩石姫を迎えに来ました!その女性は、僕と結婚するのです!と。
国王陛下は血管がぶちギレる程、怒ります!
岩石姫を易々と渡してなるものか!兵士達よ!槍で迎え撃て!矢を放て!
しかし、矢は届きませんでした。槍もです。
何故ならば、兵士達は動けなくなってしまったからなのです!
国王陛下は走ります!しかし、岩石姫を捕まえる事は出来ませんでした。
岩石姫はカボチャの馬車に乗って言います。
おじいさん、おばあさん、今まで育ててくれてありがとう!そして、名前を改名してくれなかった事を一生恨みます!
おばあさんは泣きました。おじいさんは愚痴を溢します。岩石姫じゃなくて、黄金姫にすれば良かったと………。
月に帰った岩石姫は未来永劫、幸せに暮らしましたとさ!おしまいおしまい」
「う、う、ううう!岩石姫ぇ!!!」
「え!?」
「えがった!月に無事帰れて!ひっく!」
何処に泣く要素があったか解らん。
とりあえず、適応に話を作ったら感動してくれた。まぁ、嬉しいという事にしよう!
「………ハオは凄いな。………月1つでこんなに語れて」
「僕は凄くないてますよ。先人の力です。はは」
まさか、こんな悪改されるとは思ってなかっただろう。本当にすいません。ここでお詫び申し上げます!
※ながらで、ノリ書きしてたとは、言えない。
「そうか。やはり月には神様が住んでいるのだね」
「え?月には何も無いですよ?」
「へっ!?」
「生き物はおろか、水、植物もありません。あるのは岩石くらいですかね」
「・・・」
「ほら!見て下さい。あの影」
僕は指差す。
丁度、うさぎさんが餅をついているかの様だ。
「あれ、何に見えます?」
「カニ?」
「正解です」
「え?」
「でも、違います」
「僕を馬鹿にしているのか!?」
「いえ、僕はミネアさんを馬鹿にしてません」
「なら、僕に解るように説明してよ!」
「カニに見えるし、うさぎさんが餅をついてる。人によって見え方は違います。正解なんてありませんよ」
「正解………が無い?」
「あれは窪みです。何十キロという崖ですかね。窪んでいるから、太陽の光が反射しない。だから、影になるんですよ。その影の見え方は人によって異なる。それは感覚や、捉え方が違うからなんですよね」
プスプス。
あ、ミネアさんそろそろ爆発しそうだ。
「僕はダンスが下手です。感覚も捉え方もミネアさんと違うんですよね。それは仕方ない事です。だから、ご褒美を下さい。今度の夜会で、落第点が貰えれば、キスを」
「……………………………………………へ?」
(え?どうしてキスを約束するの!?)
「ミネアさん!お願いします!」
(ふぁ!?いつもなら、ですよねぇ、で終わるのに!こんなに食い付いてくるハオは初めてだ!そんなに僕とキスしたいの?何で?)
「ど、ど、どうして………………………キ、……ス…………を?」
「したいからです!ダメですか!?」
(あわあわあわ、き、キスしたい!?)
「ぼ、僕とキス、しても嬉しく………ないよ、ね?」
「そんな事ありません!ダンスのご褒美にキスして貰えるならば!僕は頑張れます!勇気を下さい!ミネアさん!」
「ひょえ!?………僕で良かった、ら」(小声)
「いょっしゃあーーーー!!ご褒美のキスして貰える様に、頑張るぞぉ!!!さぁ!ミネアさん!ダンスの稽古の続きを!さぁ、さぁ、さぁ!!!」
「ちょっと!ハオ、待って!」
ミネアさんとのご褒美キスを約束して貰い、僕はテンションがマックスを超えた。




