31話 神様!夜会のお誘いを受けました!
「夜会ですって!?」
僕は夜会に誘われた。
夜の会。普通に考えればエッチな事をするムフフな会合である。が、貴族の夜会といえば、背後からは演奏が。そしてダンスをしてお酒や、豪華な食事をバイキング形式での立食パーティーらしい。
「え!?そのダンスは僕には無理かと・・・」
そう。僕は小学5年の時に、一度だけ踊った。
ポークダンス、女の子と手を繋いだのが、人生で初めてだったのを思い出す。握ってもらった手を、ポケットへ何度も押し込む!
「タカちゃん!何してんの!?」
「いやいや、記念にポケットにしまっておく」
「何それ?おかしー!」
好きな女の子と手を繋いだのだ!
大切な思い出を、僕はポケットへしまったのである。初恋の相手の名前は今でも覚えているよ。松永 梓。
「ミッシェル様。僕はダンスを踊れません。ですので、夜会のお誘いはお断りします。大変申し訳ありません」
「それはダメよ。決定事項だから」
何故、決定しているのかは分からない。
僕はダンスを踊れない。恥をかかせたいのか?
「バニラビーンズ………いらないの?」
「うぐ!」
現在、ミッシェル様の領地に来ている。
お茶会に招かれたのだ。しかも、マチルダ様の執事としてでは無い。ハオ個人としてだ。
以前のお茶会で、ミッシェル様にバニラビーンズの提供をお願いした。だが、何故、夜会へ誘われたのだろう?こちらが接待する理由はあれど、誘われたのは意味が解らない。
「困りましたわ。ハオはダンスが踊れない。仕方ありませんね。夜会への参加は出来ません。ミッシェル様、これは仕方無い事です」
「ちょっとお待ちを!ダンスが踊れれば良いのですよね?」
「ハオ、ダンスは踊れますか?」
「すいません。マチルダ様、ミッシェル様。僕はダンスは全くダメです。練習もしてませんし」
ミッシェル様の眉がピクリと動く。
何か良い考えでも浮かんだのだろうか?これは嫌な予感がする。
「もしかして、マチルダ様は執事にダンスの練習もさせておりませんの?それは愚策ではなくて?お側に置いておくならば、それくらい出来て当然ですわよ?おほほほほ」
「ハオは何かと忙しいのですよ。何処かのじぃやと比べられても、ね?お菓子作りや、今はマヨネーズを作らせている所なのです!奇跡の調味料をじぃやに作らせる事が出来て?」
「むきぃ!!じぃやなら!マヨネーズを超える調味料を作る事等、造作も無いですわ!ねぇ!?じぃや!!」
じぃやさんの上着は汗でベタベタになっていた!
顔から汗が吹き出し、以前とは比べ物にならない勢いだ!ミッシェル様!敷居が高いを越えて、ぶち当たってますよ!
マヨネーズを超える調味料等、現代でも無いのにな。
XOジャンとかあるよね?とか思った人もいるけど、それは誤解である。全ての食材に合う調味料は、塩、以外無いのだ。マヨネーズもこれに負けるのだから。
醤油あるだろ!とか思うかもしれないが、それは日本人だからだろう。僕も醤油は大好きだ!家のお婆ちゃんが桃に醤油をかけて食べる。しかも、それはオカズとしてだ。ご飯も、もりもり食べてるし、それは僕にはハードルが高い。でも、ミカンに醤油は結構好きだ。これもお婆ちゃんの知恵だけどね。
「ハオは夜会に出たいのですか?」
「僕は夜会に行きたいですね。でも、ダンスが踊れないので夜会には参加しません。経験はしておきたかっですけど」
「ハオ………」
(ああ、可哀想なハオ。何でも知ってるし、何でも出来るハオが、ダンスを踊れないなんて!わたくしは嬉しい。今度、ダンスの練習をしませんと。ハオと二人きりで………)
「では、私が教えて差し上げますわ!」
「ぇ!?」
(ちょっと待って!ミッシェル!ハオはわたくしとダンスの練習をするのです!何故、貴女が言い出すのですか!?ハオ!貴方は当然、断りますよね?ね?)
「ミッシェル様。ご冗談を。光栄過ぎてビックリですよ」
(ああ!流石はわたくしのハオ!ミッシェル相手に断るなんて!やはりダンスはわたくしと練習したいのですね?したいのですね!)
「もう!遠慮なさらずに!」
(ハオ!断るのです!ダンスの練習はわたくしと!)
「ミッシェル様。ハオさんが困ってますよ」
(ナイス!レイア!さぁ!ハオ!断るのです!)
「でも、まぁ、練習はしておいた方がいいよね」
(シーア!?まさか!貴女が裏切るなんて!?)
「さぁ!ハオ!エスコートするのです!」
(ダメダメダメダメ!ハオ!断って、わたくしとダンスをぉ!)
「はぁ、足を踏んでも殴らないでくださいよ?」
(ハオの馬鹿ぁ!!)
僕は左膝を付き、右手を差し出す。
手のひらは上向きだ。少しだけ指を曲げ、相手の指がひっかかるようにする。
ミッシェル様の手が僕の手に触れた。
少し小さな手は、とても華奢な感じがする。それを握りしめ潰さない様に、優しく持ち上げた。
そのタイミングで、自分たちも立ち上がる。
頭を下げ、ここで一言、お礼を述べるのだ。
「本日はダンスの練習にお付き合いして頂き、誠に感謝致します!」
「少しは礼儀が出来るのですね………まぁ、いいでしょう。足を踏んでも構いません。一人前にしてみせますわ!」
僕は苦笑いした。
足を踏んでも知りませんからね。
マチルダ様の方を見ると、何だか怒っている気配だ。何故?礼儀作法は間違って無かったバス。僕は怒られる運命からは逃れられないのだろうか?




