29話 地球の神様が異世界の神様と会うそうです!1
ここは真っ白な空間。
何も無い。ただただ白い光景がずっと続いている。どこまでも果てしなく、最果てはあるのか?と、疑問に思える。
何も無いとは言ったが、無い訳では決してない。空気はあるのだ。窒素、水素、炭素、酸素、二酸化炭素とその他、様々な元素と呼べるモノは存在する。
ただ、人間が生きていくには、少し厳しいだろう。酸素の濃度は0.5%くらいしか無いからだ。海の生物ならば、生きていけるかもしれない。だが、水が無いので、エラから酸素を取り込む事は出来ない。この空間が水で満たされていたならばの話である。
そよ風が吹いた。
でも、それは心地良いとは思えない。冷気マイナス98℃では瞬間的に凍ってしまうだろうから。
そんな最悪な環境でも、ここには誰かが居る。そう、この場所に異質な空間が存在するのだ。ログハウスがこんな所にあるなんて。浮いているとも、固定されているとも、何ともいえないそんな風にだ。
そこに、久しぶりの訪問者が現れる。
チリンチリン!
「やぁ!久しぶり」
「ん?君は地球の神だね。どうしたんだい?珍しい………300年ぶりじゃないか。さては、何かやらかしたのかい?」
「ははは。まさか!異世界の神に会いに来ただけさ」
「それは無い!君は絶対に、用が無いと訪れないからね」
「バレてたか………じゃあ、もう傍観してる?」
「ああ、無茶苦茶面白い逸材だね」
「だろ?世界の理を解いたんだ。どうだい!」
「あのね。君が自慢してどうするさ!彼が解いたんだろ?」
「まあ、まあ、固い事言わない!
ほら!お土産を用意したんだ!これで気を緩めてよね」
「地球の神よ。僕は騙されないぞ?いつぞやに"じょりきあ"を食べさせたのを忘れたかい?あの時は、流石の僕も3日も寝込んだじゃないか!ああ!怒りが沸々とこみ上がってくるのは気のせいかい?」
「異世界の神よ。それくらい水に流す度量が必要だと思うよ?ほら、これはウイスキーといってね。とても美味しいお酒さ」
ピクリと異世界の神は反応してしまう。
これはハオとかいう異世界人が作っていた飲み物だったな。それを試飲したいと思っていたが、まさか持ってくるとは。
その反応を地球の神は見逃さない。
自分の悪さをした事を帳消しにする為に、ここぞとばかりに攻める。
「まぁ、いいさ。これは持って帰るから」
「ちょっと待て!地球の神よ!解ったから!過去の事は水に流そう!そうだ!ツマミに丁度良いビーフジャーキーを出そう!な!」
地球の神は悪びれた顔をし、座り直した。
「では、乾杯しよう」
「ああ、そうしようか」
お互いのグラスにウイスキーを注ぐ。
大きめの氷がカランと音を立てた。グラスを持ち上げ、上に掲げる。カンと小さい音を鳴らし、一口、口に含む。
「こいつは旨い」
「だろ?」
「これがもう暫くしたら、飲み放題になるのか!
あの異世界人には頑張ってもらわないとね」
「その事でお願いに来たんだよ」
「僕に出来る事かい?」
「ああ、見守ってあげて欲しいんだ。彼は地球で人生に絶望してね。それで、こっちに送ったんだよ。だから、ね」
「ふーん。地球は住み心地が悪いのかい?」
「それは人それぞれじゃないかい?」
「住めば都、この異世界で異世界人の彼は何を求めるのかね」
「それでさ。ちょくちょく来るから、報告して欲しいんだよ」
「いいよ。でも、対価が欲しいね」
「等価交換の原則か………いいよ」
「地球の神よ。じょりきあは、もうゴメンだからね?」
「はは。まだ根に持ってるね!」
「あれは衝撃的な辛さだったからね。
もうトイレで悶絶はしたくない!」
「では、頼んだよ。ハオの事、宜しく頼む」
異世界の神は頷いた。
そして、また乾杯する。空になったグラスの氷をいとおいしくい見つめていたのだ。




