28話 神様!異世界で初デートです!後編
すっかり太陽も真上から降りてきた。
昼を過ぎているな。僕は背負ったバケットを降ろす。中からシートを取り出し、広げた。二人には大きいが、そんな事は気にしない。弁当を真ん中に置いて、紅茶を入れる。
「ミネアさん、どうぞ」
「………うん。………ありがと」
くぅ!可愛いぞ!
普段はボーイッシュだが、こんな姿は滅多に見られない!超可愛い!俯き加減で、目線は反らされているのが解る。
「今日はいい天気ですね」
「………うん」
会話が続かない。
これはこれで困る。僕は恋愛経験が豊富では無いのだ。気の効いた台詞が思い付かない。そういや、夜会とかのダンスの時は、何を話しているのだろう?不思議だ。
「ハオ………美味しい」
「あ、ありがとうございます」
「お礼を言うのは、こっちの方だよ」
目と目が合う。
こんな時はイケメンならば、何て言うのだ?はぁ、だから僕はモテないんだよな。溜め息を付く。
(やっぱり怒ってるのかな?僕が部屋で待ってなかった事………どうしよう)
「あの………」「ハオ………」
気まずい雰囲気が流れる。
「美味しい………ですか?」
「………うん」
かぁ!僕は何を言ってるんだ!?さっきミネアさんに美味しいって言って貰っただろが!!どうする!他に何かあるだろ!!
「ここにはよく来るんですか?」
「………そうだね。ここは僕のお気に入りなんだ」
やった!繋がったよ!
よし!では、次の言葉を………ぐあ!思い付かねぇ!!誰か!誰かデートマニュアル下さい!
「………怒らないんだ」
「え?」
「いつもと………対応が…………………違うし」
「僕はいつも怒ってますかね?」
「僕に対して………扱いが………あっ、でも、優しい、と思う」
扱いが悪いのに優しいだと!?
僕はどう思われてるんだ?はぁ、恋愛経験が低い僕には解らん。
「川の流れるせせらぎがとても心地良いです」
「ハオは頭が良いのか悪いのか解んない」
「それ貶してる?それとも馬鹿にしてる?」
「あはは!いつものハオに戻った!」
誤魔化す様に、僕は紅茶を口にする。
今日はおにぎりを作った。海苔が無いので裸だけどね。ママ!裸じゃ嫌!・・・これ分かる人は僕と同年代だろう。
米は流通量が少ない。
水に左右されるからだ。この異世界でも干ばつ被害は少なくない。水の確保は非常に大切な事だ。地面を掘る事が無いので、川の近くが発展していく。
「これ何ていう食べ物なの?」
「僕の国の国民食で、おにぎり、と言います」
「へー、ハオの国のかぁ」
「これでも再現出来て無いんですよ。30点くらいかな?」
米の質が良くない。
安定供給出来てないのだから、仕方無いだろう。でも、それが原因では無い。品種改良された日本の米は、最高レベルと言って良いだろう。基準が違い過ぎるのだ。タイ米やアメリカ産の米よりも、遥かに劣る。
「僕はハオの事は、何も知らないな」
「それは僕も同じですよ。ミネアさんの事、全然知らないし………年が幾つかも………」
「女の子に年齢を聞くんじゃない!」
「ですよねー」
僕は頭を掻く。
「……17」
「はい?」
「僕は17だよ!全く!」
「1こ上ですね」
ミネアさんは不意に立ち上がる。
そして、手を差し出した。僕はそれを掴み、立ち上がる。
「散歩日和だから、少し歩こう」
「案内お願いしますね」
ミネアさんと手を繋いだまま、川沿いを歩く。
自然と顔がニヤけてしまう。はぁ、女の子とこうして、手を繋ぐのは何時ぶりだろう?10年ぶりか?嫁はノーカンにして、11年ぶりだな!こりゃ。
ドキドキが堪らない。
このエッチするまでの工程が最高なんだよな。いつしか忘れてしまう、この瞬間に僕は酔いしれた。キスの1つでも出来れば、後はいう事ないだろうがね。この時間を大切に思う。僕はそう感じたのだ。
次の日、マチルダ様から呼び出される。
「ハオ、昨日は何をしていましたか?」
「え!?昨日は………休暇をエンジョイしておりました」
「ほぅ。一人で、ですか?」
僕はミネアさんを見る!
ミネアさんは左右に首を振ると、口を継ぐんだ!
「誰と一緒だったの、ですか?」
「み、ミネアさん、と、です!」
マチルダ様がミネアさんの方へ体の向きを変えた。
ミネアさんが口パクで言っている。「裏切り者!」僕にはどうしようも無い。
「それでねぇ。ハオはお弁当を持ってましたねぇ」
「ひぃ!?」
フローラさん!それも言ってしまう!?
「詳しく聞きたいですね♪」
顔は笑ってるけど、目が笑ってない!
マチルダ様!怖いです!
「ミネア、最初からお話してね?」
「さ、さ、最初ですか?え?」
「ええ!お誘いの所から♪」
「ま、マチルダ様!どうか!ご勘弁を!!」
「ハオ!」
「ひっ!?」
「どうやって、デートに誘ったか実演お願いしますよ?」
こうして、昨日の話を実演して、報告する事になった!
人生で5番目に恥ずかしい出来事が更新されたのだ。
「最初からもう一度、頼みますわ♪」
僕はもう二度と、マチルダ様に隠し事をしないと誓った。




