14話 神様!桃の紅茶は如何ですか?
僕は廊下を急いで走っていた!
このままでは、ミネアさんとフローラさんが危ない!一刻も早く料理を作って、戻らなければ!マチルダ様のお仕置きを思い出すと、ゾッとする!!可愛い声で攻めてくるんだよな・・・おっと、それよりも本題を考えなくては!
厨房に着くまでの間に、新しい一品を考えなくてはならない。フレンチトーストは決定している。ならばデザートだろう。
だが、時間も無い。
どうすれば!?そんな事を考えていたら、到着してしまった。厨房へ入ると、テーブルのは桃が剥かれて置いてあった!こ、これだ!!
「ボブソンさん!こんにちは!
また厨房貸して下さい!お願いします!」
「げ!あん時のガキじゃねーか!!」
僕はとりあえず許可を貰ったし、フレンチトーストの材料を用意する。
「そこに置いてる桃は貰っても良いですか?」
「はぁ!?ふざけるな!あれはソフィーア姫様のデザートだ!やる訳ねーだろ!それと、厨房いじんな!許可した覚えはねぇ!!」
くそ!桃は貰えなかった。
どうする!?デザートは厳しい・・・ならば、ドリンクはどうだ?桃の紅茶なんてのは?作った事は無い。だが、やるしかないだろう。
「あらあらあらあら!もしかして、サラが絶賛してた例の執事ちゃんじゃない?」
「ヤダ!?本当にまた来たの!!キャー!サラは今日はいないよ?」
見た事の無いメイドさん達だ。
二人共に可愛い!異世界は美人が揃っているのが、当たり前なのか!?羨ましいぞ!来て良かった!異世界!!
「お姉さん達!お願いがあります!この紅茶を選別して欲しいんですよ。この形と大きさので、色が変色してないヤツを」
「いいよ!でも、高くつくよ?」
「僕に出来る事であれば!」
「よし!乗ったぁ!」
「ボブソンさん、桃はまだありますか?」
「あれでシマイだ。残念だったな!だから、早く帰れ!」
「では、桃の皮をくたさい」
「はぁ?皮に残った身でも食うのか!?この貧乏人が!そんなモン欲しけりゃくれてやる!」
「ありがとうございます!」
桃の皮を受け取ると、それを一定の大きさに切る。よし!準備完了だ!後は、フレンチトーストを作るだけ!
「おい!それ昨日作ったのと、違うじゃねーか?」
「同じ料理ですよ。でも、昨日のは病人用で、今日のは元気な人用ですね」
「はぁ!?意味わかんねぇ」
食パンに十分染み込ませたので、後は焦げ目を付けるだけだ。フライパンを巧みに操り、ひっくり返す。
「ボブソンさん。料理は心、つまり思いやりです。相手に合わせ、美味しく思ってくれるかですよ。病気だと濃い味はキツイですからね。作っている時に食べてくれる人を思いながら、愛情を込めるんですよ。そうすれば旨さも格段に違ってきます。
思い出して下さい。最初に料理を作った時の事を。誰に食べさせたかったですか?その人は美味しいと言ってくれましたか?」
焦げ目が付いた。
さて、お皿に盛り付けて完成だ。暇潰しに話していたが、まぁ、いいだろう。と、ボブソンさんを見ると号泣していた!え!?何故!?何処に泣く要素あった?
「ぐおおお!俺が間違っていたのか!うううう!そういえば、あの時の事は忘れていた!!どうして、こんな自己満足するヤツに成り下がっていたとは!!母ちゃん!!!」
あー、もう解らんし、放っておこう。
料理も冷めるし、早く戻らないといけないからね。おっと、対価を忘れる所だった。選別しおえた残りの茶葉と、刻んだ桃の皮をポットに入れる。お湯を注いで、メイドさん達へ渡した。
「良かったらどうぞ。お好みで砂糖を少し入れて下さい。このご恩は出世払いで!では!!」
僕は急いで戻って行く。
マチルダ様の部屋に到着すると、まだ説教タイムの途中だった。もしかして、あんな事やこんな事をされて、身悶え喘いで……いや、もとい苦しんでいるかもしれないな!とりあえず呼吸を整え、扉をノックした。
トントン。
「ハオです。マチルダ様」
「まぁ!丁度良い所に来ました。どうぞ」
僕は軽くお辞儀すると、押してきたカートを部屋に入れた。マチルダ様は表情を変えない。料理が冷めない様に蓋をしたからだ。勿論、紅茶にも匂いが漏れない細工を施してきた。
マチルダ様から目線を離すと、ミネアさんとフローラさんは、まだ正座させられている。どうやら罰はまだだった様だ。説教をたらふく貰って、今にも泣きそうな顔をしているけど。間に合って良かった。
「それでは、お待たせしました。どうぞ、お召し上がり下さい」
カパリと蓋を持ち上げると、フレンチトーストが露になる。香ばしく甘い香りが部屋を満たすには、時間はかからなかった。
「こ、これが、フレンチトースト、ですか?」
「は、ハオ!?これは昨日のと違う・・・あっ!?」
「ミネア!お馬鹿ですぅ!」
マチルダ様は肩を震わせていた!
これは怒っている!どうしよう?言い訳は通用しないぞ。
「ミネア?どう違うのですか?」
「はい………それは、その………スープ仕立てでした」
マチルダ様は、まぁ?本当に?と言うワザとらしい芝居をしている。これはどう考えてもおかしい。頼んだモノと違う。ラーメンを頼んで、うどんが出てきたらどう思うだろうか?いや、違いますよ。え?滅茶苦茶美味しいんで、是非食べて下さいだって?あのね!ラーメンが食べたいんですよ!今日はそんな気分なんです!何でうどんを食べないといけないのか!?な感じなのだろう。
そして、僕の方を向いてニッコリ微笑む。
「ハオ。これは昨日の料理では無いですね?」
昨日の料理は、病人食で薄味にしたんだ。
そんな事通じる相手ではない。罰を重んじて受けようではないか!
「マチルダ様、申し訳ご───」
コンコン!
「スミスです!宜しいでしょうか?マチルダ様」
「まぁ、お入りになって」
スミスと名乗る女性は、先程お手伝いしてくれたメイドさんだ。僕は謝るタイミングを逃してしまった。しかし、何の用件だろう?もしかして、もうさっきのお手伝いの対価を要求しに来たのか!?それとも、材料のお金を請求に来たとか!?うわ!!僕はお金持ってないぞ!どうする!どうするよ!!おい!?
「あれ?まだお召し上がりになっておられないのですか?」
「ええ、それがね。昨日の料理と違うモノが出てきたのです。それで、わたくしビックリしまして、どうしようかと」
スミスさんは僕を見ると、あら?的な顔をする。そして、何か考えて手を叩く動作をした。
「成る程。おもてなし、ですね」
「おもてなし?」
「ハオさんは言っておられました。相手を思って料理すると。
私が思うには、マチルダ様に美味しいと思って貰う為に、そうしたのだと思うのです。相手を思いやる心こそが料理道だと!」
「ハオ、どうなんです?」
「あの、昨日のは病人食で薄味なんです。食感も殆どありません。本来のフレンチトーストでは無い、マガイ物なんですよ。これが正しい正式な料理です。それを食べて頂きたいなぁと思いまして」
マチルダ様から、あの威圧感が無くなり、パアッと笑顔になった。
「ハオのおもてなしの料理・・・
はむ!モグモグ!お、美味しい!!」
それから夢中になって食べてくれた。僕は嬉しくて嬉しくて、堪らなかったのだ!
あ、そうそう。持ってきた紅茶を出すか!
丁度、喉も渇いた頃だろう。ポットにしておいた細工を外す。すると、桃の良い香りが部屋を一瞬で満たした!
「何んという香り!これは紅茶なのですか!?」
「少々お待ち下さい」
ティーカップに少し入れた。
そして、少し傾け回し、カップを温める。それを捨てて、一気に注いだ。砂糖はスプーン1掬い、入れてかき混ぜる。
「どうぞ」
「はぁ!!桃の紅茶!なんて素敵なのです!!」
マチルダ様は香りを楽しむ。
そして、少しだけ口に含んだ。みるみると表情は和らぎ、今では穏やかになっている。ああ、僕はこれを見たくてここに来たのかもしれない。他人まで笑顔にしてしまう魅力が、マチルダ様のはあるのだ。きっと、本人には自覚は無いだろう。
「ハオ、お代わりをお願いしますわ!」
「イエス!ユア、マジェスティス!」
「うふふ。
ハオは分かってその言葉を使っているのかしら?」
「マチルダ様の思うがままに」
そんなやり取りをしていると、スミスさんが居ないのに気が付いた。あの助け船がなければ、僕はどうなっていただろう?大きな借りが出来てしまったな。これも出世払いで!出世しないけどね。
「そうですわ!」
「どうされました?」
「わたくしお茶会を開きます!それをハオに頼みますわ!」
「え!?」
こうして、お茶会が開かれる事となった。
お茶会って、何するんだよ。この時は、そうボンヤリ考えていた。
因みに、ミネアさんとフローラさんは、マチルダ様が紅茶を飲み終えた後、罰を受けたとの事。後片付けで、厨房に行っていたから、何をされたか解らない。多分だが、痺れた足のツンツンされただろう。僕が部屋を出た時から、正座させられていたのだ。足の痺れも半端無いだろうしね。
マチルダの痺れ攻撃がレベル2に上がった。
ミネアの痺れ耐性レベル1を得た。
フローラの痺れ耐性レベル2を得た。
ここだけの話だが、ハオが痺れ耐性を得られなかったのは、マチルダの手加減が原因である。
ハオはソフィーア姫様の桃を1切れ拝借していた。その果汁を紅茶に混ぜていたのは内緒にしてあげて欲しい。




