九十四日目
朝食のあとにまつりを見つけて文箱を渡すと、とても喜んでくれた。
ついでに文机で悩んでいる話をすると、買うべきだと力説された。まつりも悩んで買いそびれた簪の事が、今でもぐるぐるして眠れない事があるという。
少なくとも「やめよう」と納得できるまでは現物を見て悩むべきだと言うのだ。
なので今日も櫛を卸してから文具屋に行った。
やっぱりいいなあと思う。
飾り網もしっかりしてるし、香を炊くための引き出しもきっちりはまってるのにするりと動く。
今日見てみると紙ををしまうためのものらしい引き出しの底にも、簡素な網が張られているのに気付いてしまった。紙に香を焚き染められるようになっているらしい。
色も木肌を活かして漆を塗り込んだ焦げ茶色で、年輪の曲線が幾分硬い形を和らげて見せているようだ。
見れば見るほど気に入ったけど、金貨一枚。
うーん
どうしようか。
結局今日も決められずに店を出た
本当にどうしよう。
帰りに安い脇息を探した。ついでに安い机も見たけど納得のいくものはなかった。脇息もしっかりしたものはそれなりの値段がする。
大ぶりのものなど上でちょっとした書き物ができそうなくらいだ。
悩みながら今日は月とり網を買った。
神具に使うだけでなく、ほのかに甘い月光糖は口さみしいときにぴったりだからだ。買っても安いけれど自分ですくうのはちょっと面白い。
それから櫛を店頭にあるだけ。
旅立つ前に出来るだけ卸してくれと言われてるし、多少は手元にもおいておきたい。