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リリカシア=アジャ-アズライアの日記  作者: 真夜中 緒
神威編
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八十八日目

 午後からリカドの商館に行くと、案の定というかザウィーダ商館からのお招きが来てた。ちょっと考えたけど断ってもらうことにした。商館長も夫人もその方が賢いと言う。かなり警戒してるみたい。

 それから旅程について相談した。相談とは言ってもここしばらくのバタバタの間に心は決まっていて、龍の肩まで街道を行き、肩からは舟で顎まで。魔術師の塔から項へ降りてそこから船で煌を目指そうと思う。

 街道よりも船のほうが楽なのではないかと言われたが、急ぐ旅でもないし、どうせ大陸は行路を行くことになるので、いくらかでも慣れた龍の島にいる間に、ちょっと歩いてみようと思ったのだ。

 服装も長く歩く事になるので、神威で地元の旅装を整えるつもりだと言うと、夫人が熱心に賛成してくれた。リカドの服は龍の島を歩くのには向いてないし、女の子は目立たないほうがいいという。早速婦人と一緒に買い物に出た。

 いつも商館ではリカドの服を着ている夫人だけれど、買い物に行くのに着替えて来たのは神威の衣装だった。上等の麻の切袴に胡蝶の刺繍を散らした裙、袖に朝顔唐草の刺繍を施した紫の単。頭から日除けに白無地の透ける単を被っている様子は、裕福な商人の奥方のようだ。私はいつもの侍女服だから、それこそ奥様と使用人に見えるだろう。夫人に言わせると商館でリカドの服装でいるのは仕事着で、出かけるなら神威の衣装の方が楽に決まっているという。私も同じ意見だ。

 新しい服はそれこそ悪目立ちするし、値段も跳ね上がるので、夫人が懇意にしているという古着屋で相談の上、買ってもらった。

 もちろん自分で買うつもりで用意はしていたのだけど、婦人に押し切られたというか、古着屋に代金を受け取ってもらえなかった。夫人は買い手だけでなく、良い売り手なのだそうで、この先の円満な取引のためにも逆らいたくはないそうだ。

 旅装は男装になった。

 龍の肩までなら女性の旅人も結構いるらしいけど、さすがに一人旅は珍しいらしい。

 それで男物の上頸あげくびの狩衣とか言う上着に、脛までの括袴を二組用意した。単は三着、念のための小袿を二着。

 草鞋は一番安いものを大量に用意した方がいいという。道によっては一日に何足も履きつぶしてしまうそうだ。どこの宿場でも草鞋は目立つところに売っているらしい。

 烏帽子は被らなくても大丈夫だろうとの事だ。私ぐらいの体格と見た目なら、男ならまだまだ子どもで通るという。男装で旅をする女性はそれなりにいるけど普通は烏帽子は被らないそうで、そういう意味でも、悪目立ちしないほうが良さそうだ。

 それから、当座必要な食べ物なんかを持つために地味な風呂敷も用意した。人前で気楽に晶屋を開けると目立つし、手ぶらの旅人なんて違和感しかないだろう。帰りに竹の水筒も買ってもらった。

 この旅が決まったときからまわりに助けられっぱなしだ。

 いつか返せることってあるのかなあ。

 

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