七十二日目
朝食の折に玉藻様にパンを渡した。
あとでお茶うけに食べようとおっしゃる。やはりお菓子扱いらしい。せっかくなのでとっておきのアジャ蜜とアジャの花の砂糖漬け、それからアジャの花茶も少しづつお持ちした。
幸いどれも気に入って頂けたようだった。
午後はちょっと頑張って櫛の加工に励んだ。まつりに一つあげると喜んでくれた。しょっちゅう湯につかれる楼ではいらないかなと思ったのだけど、まつりは近々嫁ぐそうで、侍女勤めはひくのだそうだ。
年を聞くと同い年だった。
私は今のところ嫁ぐ予定もないし、上級魔術師ともなると嫁がない女性も多いから、まるっきり他人事なんだけど、考えなくてもそういう年なんだなあ。
晶屋で机にしていた箱が手頃なので、神威への荷物を詰めようと思う。机のことは、まあ後で考えよう。神威でなら座卓が探しやすいということもあるし。
もしかしかしたら私が戻る頃には、結構塔の顔ぶれが変わっているのかもしれない。そう思うとむしょうに手紙が書きたくなったけど、何を書くかといっても思いつかない。
だって別に具体的に変化があるとわかったわけではないのだし。
ただ、なんとなく落ち着かなくて焦る。
こういう気持ちってどうすればいいかわからなくて、本当に困る。