七日目
いつの間にか一日が過ぎていた。
エドに貰った本とエリシアに貰った本を読み比べていて、魔法陣を大幅に簡略化させて魔術を発動させる方法を思いついたのだ。
戦闘魔術に魔術の発動動作を簡略化する方法がある。
精度の低下と、魔術が余計にいるようになりがちなのが難点だけど、戦場では少々精度が悪くてもすぐに使えることに値打ちがあるらしい。
それで、魔術の発動動作の理論とその簡略法を見ていて気がついたのは、これは結局魔法陣なんだということだ。すごく大雑把に言えば魔術の発動動作が言葉で、魔法陣が文字みたいなものだ。一つの文脈が幾つかの言葉でできているように、魔法陣も複数の要素に分解される。簡単なものでも、その術の本体部分と安定性を司る部分、精度を上げる部分ぐらいには分けられる。戦闘魔術の簡略動作はこの「安定性」の部分と「精度」の部分をできるだけ省略しているわけだ。(だから、魔力消費量が増えて精度が落ちる。)
もちろん魔法陣を使う魔術は安定性や精度を重視するものが多いので、そういう荒っぽい方法は使いにくい。ただ、役割によって分割するという考え方そのものには使いみちがあると思う。
それで色々と試していたら一昼夜たっていたらしい。
熱でも出したのかと心配した船員に晶屋ごしに呼びかけらられて、初めてそれだけの時間がたっているのに気づいた。晶屋の中に昼夜の差はないので本当に気づかなかった。時間を測る仕組みを考えて、用意しようと思う。
久々に晶屋から出るとちょうど昼で、心配してくれた船員に食堂へ連れてゆかれると、燻製肉と野菜をたっぷり入れた煮込みだか、スープだかがでた。煮込みにしては汁気が多く、スープにしては具がやたら大きかったので、どっちなのかはわからない。
久しぶりの温かな汁物は美味しくて、かなり固くなったパンを浸して最後までゆっくり堪能した。
雨も揺れもすっかり止んで、船員の何人かがまた釣りに興じ、今度は成果があったそうで、夕飯は魚の入った汁物だった。思ったよりも生臭くもなく、いいだしがでて結構美味しかった。
乗客の一人の初老の商人にだけ焼いた魚が出て、連れの商人とつついていたが、あれは自分で釣り上げたものらしい。ちょっと美味しそうだったので、機会があったら釣りに挑戦してみるのもいいと思う。
戦闘魔術は武術的魔術と戦術的魔術を含みます。
魔法陣を使わず、動作と詠唱もしくはそのどちらか片方で発動させることが多く、剣などの武具との連動を行うものも少なくありません。
魔法陣は図形を用いて魔術を発動させる仕組みです。安定性にすぐれ、陣を描いた本人でなくとも魔力さえ供給すれば使えるところが便利です。