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リリカシア=アジャ-アズライアの日記  作者: 真夜中 緒
航海編
52/520

五十七日目

 朝からとにかく街に出た。

 ラジャラスと同じで、仕入れが目につく。仕入れの邪魔にならないところでしばらく眺めている事にした。

 港に上がる新鮮な魚は、次々に買い手がついて売れてゆく。大きな魚は運ぶのが大変だからか、港で解体してしまうらしい。ちゃんと屋根や作業台が用意されていて、すごい速さでさばいてゆく。

 港のはずれには魚を干すための場所もあって、これは女性の作業らしく、何人かで開いた魚を渡した棒にかけていく。鳥や獣に取られないように、簡単な屋根をかけ、網をはってあった。

 干し魚は市場でもよく売られている。

 全体に肉よりも魚が多く、肉の中では鳥が多い。

 豚はほとんど飼われていないそうで、羊はもっといないらしい。

 鳥はまず鶏、それから雉と鳩。雀とかいう小さな鳥。あとは鴨も食べるらしいけど、市場では見かけなかった。

 魚はとにかくたくさんあって、どれが何なのかよくわからない。

 海老も、貝も、なんだかよくわからないぐにゃぐにゃして足のたくさんある生き物も、海のものなら概ね食べるらしい。

 あとは豆。

 豆を使った食べ物が本当に多い。

 昨日食べた納豆をもっとゆるくして豆の形のわからなくなったみたいな味噌。茹でた豆を潰して漉した豆乳。豆乳を作った搾りかすのおから。それからどうやってか豆乳を固めたという豆腐。

 なんか面白くなって店でやたらと聞いてしまったけど、きっとここの人間は、米と豆にあと青菜か海藻でもあれば足りるとか思ってそうな気がする。

 米は粥、飯(固く炊いた米はそういうらしい)餅(粒が消えるまで突き固めたもの)とあって、餅に砂糖を混ぜたきなこ(豆を炒ってひいた粉)をかけたものを食べたけど、ほんのり甘くて香ばしくて、なかなかおいしかった。

 パンは確かに見当たらなくて、こねた小麦を揚げたものくらいしかみかけない。

 雉の炙ったのなんか、パンと食べると絶対美味しいんだけど。

 雉はピリ辛だけどラジャラスとはちょっと味が違う。独特の爽やかな苦味みたいな後味がある。

 ちまちま食べてお腹も膨れたので、今度は雑貨の並んでいる方へ移動した。

 昨日も思ったけど布で目立つのは大陸の東端にある煌国のものだ。どっしりした絹地には様々な色糸や金糸銀糸も使って絢爛な織り模様がはいっている。

 この国の生地は織り模様は地紋程度で、むしろ刺繍に凝っているらしい。市をゆく女性の袖にも時々花や鳥の刺繍を見かけた。同じ刺繍でもリカドと違ってあまり紋様っぽくはない。むしろ糸で描いた絵のようだ。

 漆を塗った木工も多い。スッキリとした形の箱に、青貝と銀泥で花弁を散らしたものは、とても美しかった。

 そして刃物。青味を帯びて濡れたように光る刀身は、なんとも言えず美しくて恐ろしい。龍の島は玉鋼を作らせたら右に出るものはないと言われる産地だ。ナイフ程度のものでも切れ味が違う。この旅でぜひ欲しいと思っていたものだったので、店先で真剣に選んだ。

 一番小さいものだけでも結構な数があって悩んだけど、握りに綺麗な組紐を巻いたものが良さそうだったのでそれに決めた。木でできた鞘がついている。調理にも扱いやすそうだ。銀貨3枚という値段は並んでいた中ではちょうど真ん中ぐらいで、それもちょうどいい気がする。

 一日細々買い物をして、夕食には貝と海藻をいれて味噌を溶かしたスープとおむすびと、甘辛いタレを塗った串焼きを食べて船に戻った。

 

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