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リリカシア=アジャ-アズライアの日記  作者: 真夜中 緒
航海編
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五十四日目

 一昨日と昨日は本当に辛かった。

 一昨日の午後には熱が上がってきて、全身がだるいだけでなく痛くなった。夜には喉もかなり痛くなって、夕食はパンどころか粥の上澄みを啜るぐらいしかできなかった。

 昨日の午後になってちょっと落ち着いてきて、そうすると強烈にアジャ蜜が食べたくなった。

 実は、持ってるのだアジャ蜜。この旅に出るのを知らせたときに実家から送ってきたので。

 しまい込んでいたのをなんとか引っ張り出して少し小皿にとった。お茶は贅沢してアジャの花茶。温かいお茶を飲みながら、ほんの少しずつなめる。

 ふわりとしたアジャの香りと甘さがじんわりと身体にしみこんでくる。

 アジャ蜜は花からとる蜜ではない。

 アジャの実が熟す頃になると、どこの家でも炉の隅にアジャ蜜の壺をすえる。

 熟した柔らかいアジャの実をぎゅっとつまんで種を出すと、種は炉のそばにつった籠に入れ、残りは炉の壺に放り込む。壺の中に貯められた実は暖炉の熱でとろりと溶けて、赤味がかった金色の蜜が壺に貯まる。アジャの実の季節の終わる頃には壺三つか四つ程度のアジャ蜜が出来上がる。

 実家ではこの蜜を本当になんにでも使った。

 料理の味付けにも、ほんの少しパンに塗ってお菓子がわりにも、薄めてしばらくおけば酒を仕込むこともできる。

 籠にわけた種は乾燥したら別の壺にとっておく。

 炉の灰に埋めて焼くとほくほくと香ばしくて美味しい。

 そのアジャ蜜を実家が一壺丸々持たせてくれたのだけど、今回はしみじみとありがたかった。体調の悪い時に慣れた甘みは本当においしい。

 小さい壺を買って、ちょっとわけて取りやすいところに置いておこうと思う。しまい込んでしまうと、本当に欲しいとき取り出すのがとても大変なのだと、よくわかった。

 昨日は夕食に具を抜いた粥を貰い、今朝はちょっとだるいだけになっていたので普通に粥を食べた。

 それからとりあえず晶屋を片付けた。

 昨日アジャ蜜を出すのに散らかして、本当に足のふみ場もなかったので。今は船室で寝られるけど、ちゃんとしておかないといざというときに困ってしまう。

 で、片付けるとへとへとになってしまった。

 今日はもう夕食までは寝よう。

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