四十八日目
朝、髪をとかしていて唐突に思いついた。髪の汚れを取る魔法陣ってもしかしたら櫛に組み込んだほうが便利なんじゃない?
自分の櫛に彫ろうかとも思ったけど、今使っているのはアリアにもらったきれいな模様を彫り込んだ物だったので、思いとどまった。確かもっと簡単な予備の櫛があったはずだ。
晶屋の床下をひっくり返し、櫛を見つけ出してから元通り荷物をしまうのに、結構時間がかかってしまった。ペタンとした単純な形の櫛に汚れを落とすための魔法陣を彫る。もうちょっと工夫して装飾的な文様に仕上げるといいかもしれない。
とりあえずは簡単に彫って試してみた。
これはいい感じじゃないかな。
術の発動もスムーズだし、櫛でほぐしながら使うから、汚れも落としやすいみたい。
櫛だし、抵抗はあったんだけど、よくよく洗ってから漕ぎてのたまり場に持っていった。経験上漕ぎての髭が一番汚れる。力仕事だからじゃないかな。
試してもらうとやっぱり好評だった。符より使いやすいという。
これで路銀稼ぎのネタが一つできた。この形なら市場とかでも売れそう。文様を工夫して可愛くしたら女の子にでも売れるかも。
夕飯の時にジェムさんに櫛についてきかれた。漕ぎての誰かに聞いたらしい。いくつか作る気があるなら買い取りたいといわれた。作るにしても、まだ値段も決められないし具体的な話はできなかったけど、ちょっと嬉しい。