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リリカシア=アジャ-アズライアの日記  作者: 真夜中 緒
航海編
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四十五日目

 木綿の布があった。しかもラジャラスよりも安い。

 嬉しくなって二枚買ってしまった。やっぱり白い線で模様を入れた青い布。模様は鳥と蝶だ。 売り子の女の子が布を巻くだけじゃなくって首の後ろでくくるような着方をしていたので、やり方を教えてもらった。これなら上から魔術師の衣を着れば、布を切らずに使えそう。

 青以外の色もあるけれど私は断然青が好き。

 船が港に入ったのは夜が明けてすぐのことだった。早速空の水樽が降ろされる。今日中の出港なので大急ぎで水をつめるのだ。

 それからラジャラスからの荷を下ろす。この島はラジャラスの国の一番東側に当たるらしい。出港までは港周りぐらいなら見てまわってもいいと言われたので、ちょっと船を下りてみた。

 港にはちいさな市ができていて、結構いろんなものを売っていた。

 それで見つけたのだ、木綿の布を売る店を。

 布を買った店で、さらに布を結んで袋状にする方法も教わったので、一枚を袋にして肩にかけ、もう一枚を放り込んだ。どうもこのあたりでは、布は切らないでなんにでも使うことになってるらしい。

 ここの市は変わったものが多い。

 海獣の角で作った笛とか、透かし彫りの入った大きな巻き貝とか。 

 中でも興味深いのが透き通った赤い塊で、ナイフで削って火にくべるとふわりと独特の良い香りが立ちのぼる。ちょっと甘いような苦いような香りだ。これは何かの木の樹液の固まったものを更に海にさらしたものなのだそうで、木滴とかいうのだそうだ。

 木滴は人肌程度で温めてもほのかに香るのだそうで、小さな珠に加工したものも売っている。香りもだけでなく色も綺麗なのがいいと思う。

 色と大きさを選んで六十粒ほど買った。

 選ぶときに何度も木滴をつまんだ指先には香りが染みていた。

 食べ物で面白かったのは粥だ。

 米という穀物をたっぷりの水で長い時間かけて茹でた粥は、見た感じは白いつぶつぶしたスープのように見える。匙ですくうととろっとしていて、ごくごくほにかに甘い。少し塩を入れるとその甘みが引き立つ。香草やプチプチした魚卵、小海老をサッと茹でたものなんかも加えると、一品で結構しっかりした食事になる。

 店の脇の簡単なベンチに座って粥を食べていると、船長が木滴を仕入れに来るのを見かけた。赤い塊を吟味しながら、次々と選んでゆく。どうやらこの島に寄った主な目的は、木滴の買い付けだったらしい。私に気づいて何を買ったか聞いてきたので、木滴の珠を見せると、それも大量に買っていた。

 そろそろ出航すると言われたので、粥を食べ終わると船に戻った。

 夕食も粥だっった。茹でた鶏肉を裂いたのと香草がはいっていた。ここから神威に近づくに連れて米を食べる割合が増えて、神威ではもうほとんどパンは食べられていないのだそうだ。

 港の市場ではそれほどとも思わなかったけど、自分の船室に戻ると木滴の香りが結構染みていたのに気づいた。たくさん木滴を売っている市場はほんのりと香りに包まれてしまっているのかもしれない。

 木滴は神威で香の材料として使われています。産地によって品質に差があり、この島で取れるものは南木滴として喜ばれます。双璧をなすのが北木滴ですが、これは世界の反対側、北の果に近いところでとられるため、生産量が少なく貴重です。

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