四十三日目
昨日約束した補給を受けると、出発は昼過ぎになってしまった。
港から出るまで気を抜けないから大変だった。
警備隊長が挨拶に来たりもしたし。
港から出て、汚さないうちに服を着替えられた時はほっとした。
そういえば、三馬鹿は船にいる。
船長はなんとか警備隊に押し付けようとしたみたいだけど、うまくいかなかったらしい。残念。
さすがに船長がやんわりではなく苦言を呈して、更に部屋に閉じ込めといたらしいけど、港を出たらのこのこ出てきた。
なんであんなに頭悪いんだろう。
いきなり絡んできた。
なんだか勝手に記憶を色々書き換えたみたいで、彼らの中では私がヘボな術で彼らの武器まで取り落とさせた話になっていた。
なんかもう、ぶつんと切れた。
絡んできた場所は食堂で、食堂には魔法陣がいっぱいだ。そういやこいつらのために仕掛けたんだった。
どういうわけだか三馬鹿以外の乗客や船員が、夕食を抱えて次々離れていく。なんでこんなに察しがいいんだろう。
ばちんっっっとすごい音をたてて三馬鹿の大将が吹っ飛んだ。残り二人も次々飛んだ。椅子が倒れたのはごめんなさい。あとでなおすから許してほしい。机は床に留めてあるので倒れなくて、そのぶんぶつかったのは痛そうだった。いいきみだ。
平手でぶったりしたわけじゃない。手が痛いの嫌だし。電撃を使ってふっ飛ばしたのだ。これなら触らずに済ませられる。
「船内の綱紀を乱したこと。戦闘中の妨害行為。リリカスの上級魔術師に対する侮辱。」
奴らの罪を数え上げる。
「諸々正式にラジャラス宮廷に、上級魔術師アジャ−アズライア名において抗議いたしました。また船内においては自室での謹慎を申し付けます。さっさと消えなさい。」
口を開けてる連中は船員が連れ出してくれた。
さっき隊長が挨拶に来たときに、宮廷への文書を預けてある。特に知りたくなかったお馬鹿大将の名前は、イール·ガジェロと言うんだそうだ。
椅子を起すのも手伝ってもらった。
夕食の続きを食べていると調理人が果物を綺麗に切って盛り合わせたものを机に置いてくれた。ついでに去っていくときに頭をなでられた。
もしかしてお駄賃だったりしないだろうか。どうなんだろう。