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三十五日目
昼ぐらいから、船酔いだったはずの乗客が一人、のそのそ起き出してきた。船酔いに酒は良くないんじゃないかと気づいたらしい。気づかなくてよかったのに。
幸いまだ調子が良くないみたいで、水を入れたジョッキを手に甲板でぼおっとしている。それでも無理に関わりたい相手ではないので、用のない者はみんな甲板から消えてしまって、ぼおっと座っている周りには無人地帯が出来ていた。
そうなったからにはとっとと酒にかけた魔術を解いておく。
いたずらは引き時が肝心なのだ。そこさえ間違わなければ、少々疑われてもすましていられる。
夕食時には残りの船酔い組ものこのこ出てきた。
今日のところはとりあえず大人しかった。
明日はどうかな。