三十一日目
朝、目が覚めたらもう出港するところだった。
綱が解かれて岸から離れてゆく。
本当にもう一枚木綿の布を買っとくんだったなあ。
久しぶりの船はちょっと退屈だった。
湾から出ると遠くに火の島が見えた。結構煙が濃い。風向きのおかげでラジャラスにはほとんど影響なかったけど、結構派手に煙を吐いて、時々山頂に赤い火も見えてるのだそうだ。相変わらず周辺の海域は立入禁止になっているらしい。
ここからは島伝いに東へ向かうので、ちゃんと野菜も出るそうだ。ただ、船の扱いはずっと難しくなるらしい。島が多いということは見えない岩礁も多いということで、通れる場所が限られるんだそうだ。
ラジャラスから乗客も増えた。
わりといかついめの男三人組。ラジャラスの貴族からの依頼とかで、断りきれなかったと船長が渋い顔をしていた。
渋い顔をする理由はすぐにわかった。夕食のときにからんできたからだ。自分たちで持ち込んだ酒を飲みながら、酌をしろとか言い出したので、とっとと部屋に戻った。
途中誰かにあうたびに部屋に鍵をかけとけと忠告されたので、部屋の戸に封印の魔法陣を仕掛けた。外から呼ばれてもわからないのも困るので伝声の魔法陣も足しといた。
めんどくさいし迷惑だなあ。