二十三日目
今日は朝からいい風がふいて、かなり航程を取り戻せたらしい。
やっぱり自然というのはすごいと思う。同じことを私が魔力でやろうとすれば、ぶっ倒れる羽目になるだろう。方向転換させるだけで実質ぶっ倒れたようなもんだし。そもそもあんまり思ったようにはいかなかったし。
思うんだけど、船に中級以上の魔術師が何人か乗ってたら便利なんじゃないかな。リカドだと手習いに通いさえすれば初級の一番下の資格はとれるから、初級資格者は珍しくない。この船だと船長と風読みのじいさまは初級の上位資格を持ってる。もうちょっとで中級なのにもってないのは、たぶん中級になると塔に所属させられるからだ。
初級資格者は正式には魔術師扱いされない。資格試験も各地で季節ごとにやってるから、働きながらほとんど独学で階位をすすめる人も多い。初級資格があればできる仕事も増えるからだ。リリカスでなら、簡単な浮遊摩術を使える荷揚げ人夫とか、魔術で冷やした飲み者を売る屋台とかは珍しくない。
でも、中級となると話が違う。
必ず塔に所属しなくてはいけないし、塔からの依頼を受ける義務を負う。だから取れる実力があっても中級資格をとらない者が増えるのだ。
でも、船に中級資格者がいれば、絶対に便利だ。
船員は誰でも階位はともかく初級資格は持ってるんだから、取ろうと思えば取れる者はそれなりにいると思う。昨日の作業だって私一人だったから大変なだけで、中級資格者が五人ぐらいで協力するほうが、多分やりやすかったはずだ。
そういう職場は多分結構あるんじゃないかなあ。
後にリカドでは中級中位までは塔に登録のみする形になって、魔術文化の隆盛を迎えました。
リリカシア=アジャの改革は多岐にわたりますが、これは初期に行われた中では代表的な改革なります。