百七十日目
革を使って馬具を作った。
こういう作業をしていると、魔術師になってよかったとしみじみと思う。この作業を魔術なしでこなすのは大変だから。
買ってきた革を何本もの革紐にする。腹帯の分は太く取って、馬の身体に当たる部分は、切り口の角を取って当たりが柔らかくするようにする。
この、角を取る作業が本当は大変なのだ。
蜜蝋やらコテやらで角を丸くするのだけど、魔術で削れば簡単に出来る。革に油を染み込ませる作業だってすぐだ。
腹帯についてはちょっと手間をかけることにした。
頑張って私の刺繍をいれたのだ。本当に簡単な刺繍だけど、これが入ると自分の持ち物って感じがする。この刺繍だって魔術を使わなければ大変な手間だけど、模様にあわせて魔術で穴をあけておけば、かなり簡単になる。
さすがに今日中に作るのは無理だったけど。
馬具用の硬い革を一日触っていたのでちょっと手が疲れた。龍の島もそうだけど煌も食事は箸なので、手が疲れてるとちょっと辛い。もっともナイフでお肉を切ったりしなくていいのは楽なので、結構どっちもどっちなのかも。
夕食の席で馬具を作っている話をすると、馬の話で盛り上がった。馬琴さんは騎射の名手だそうだ。夕食後に弓を見せてもらったけれどかなりの強弓だった。
ひとり、異国の小娘が混じって、扱いづらいだろうと思うのに、皆さん親切だ。この旅で私は人に縁には恵まれているように思う。
リカドの、特に女性は自分の道具につけるお気に入りの刺繍の模様を決めています。途中で変えることもありますが、母親が産着に縫いとった模様をそのまま使うことも多いです。
アジャの模様は産着に縫いとるためにアジャの母が考案したもので、アジャの花や葉をモチーフにした単純な柄です。
アジャはこれ以外の模様をほとんど縫いません。