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百六十四日目
馬を買った。
月毛の小柄な四歳の雌。
気性は大人しそうで、ちょっと臆病そう。足は早くないそうだけど、そこはそれほどこだわらないからかまわない。
金額は金一枚と銀七十枚だった。破格の安さだ。確かに競走馬や軍馬には向かない馬だけど、金二枚より安くなるとは思わなかった。
身体が小さいのも問題ない。私もどちらかといえば小柄だし、荷物のほとんどは晶屋の中だ。
足もしっかりしているし、口や目や耳を見てもきれいだし、健康そうだったので、話を決めた。
そもそも冬営地の長の口利きで妙なものを売りつけられるとは思わない。
冬営地の長である馬呂に連れられて出かけたのは冬営地から半日ほどのところの放牧地だった。毛氈の天幕が五つほど設営されている。
女性が何人かいたので櫛を5枚ほど進呈した。水無しで髪の手入れの出来る櫛は草原でなら確実に需要があるはずだ。
馬の商談を纏めると、泊まっていけと引き止められて、羊の焼肉と馬乳酒でのもてなしをうけた。
主の妻と娘と同じ天幕にとめてもらう。天幕に泊まるのは随分久しぶりだ。