百五十五日目
今日は昼食を断わって、宿場まで出かけてみた。宿場まで行けば市があるからだ。
川向こうには煌都があるとはいうものの、渡し船に乗ったりしなくてはならないのが手間なので、宿場の市もなかなかに大きくて繁盛している。
龍の尾や神威でもみかけたような絢爛な絹地や、精緻な模様の絨毯。美しい焼物の器などがまず目につく。それから毛織の布、毛皮、なめし革、毛氈のようないかにも遊牧の民らしい品も多い。刺繍のための色糸や染料もたくさん揃っていた。
肉で多いのは豚と羊、それから山羊と鶏、あとは雉とか鹿とか鳩もある。
牛はあまり見かけなかった。
紙は羊皮紙でなく普通の紙で、炭や筆を使っているのは龍の島と似ている。ただ、紙の品質は龍の島のほうが優れている。
市場で揚肉まんを買い食いした。美味しいけど皮のサクサクした感じは、焼いた方が好みかも。魚の包み揚げも見つけたので食べてみたけど、味付けがかなり濃かった。
刺繍は直線的でちょっと面白い。なだらかにモチーフをつなぐリカドと結構違う。いろんな刺繍を集めて刺した布を見かけたので買った。
革に刺繍を施した靴とか、毛氈の室内履きなんかはかなり綺麗だ。
夕食の折に市場に出かけたことを話すと、冬の方が盛大だと教えてもらった。冬営地が天幕で一杯になると、一気に賑やかになるそうだ。そんなところはリカドの故郷と同じなんだと思うと、ちょっと故郷が懐かしくなった。塔に入ってから一度も帰ってないし、この旅が終わったら一度覗きにいこうかなあ。
毛氈というのはフェルトのことです。敷物などに用います。実はリカドでも作られています。