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百五十日目
煌都についた。目差す魔術師の塔は街の西を流れる大河の向こうにあるのだけど、今晩は中村の煌都の屋敷に滞在している。煌都に入ったところで、馬を返して別れようかとも思ったのだけど、お嬢様に引き止められたのだ。
それで一晩だけお世話になることになった。
中村屋は外見で言うとその辺の煌の屋敷とあまり変わらない。
瓦屋根に漆喰の壁は分厚く、いかにもがっしりとしている。室内も入り口に近い表の部分は、靴のまま入ることのできる煌風の作りだが、奥に行くと床を高い位置に張り、靴を脱いで上がる部屋が現れる。お嬢様の部屋も当然靴を脱ぐ作りで、板敷きの床に御座を敷いて座るようになっていた。部屋を仕切る衝立も龍の島風だ。
部屋には早速お嬢様の花嫁衣裳が飾り付けられた。
長めに仕立てられた切袴に幸菱の白い単。
表白裏青の袿には金糸で稲穂が縫い取られ、萌木匂いの重ねと後ろに長く引くように仕立てられた裙。
龍の島の花嫁衣裳を見るのは初めてなので、とても興味深かった。