百四十一日目
煌についた。
船を降りる前にお嬢様をつれた龍の島の商人が、賃金を払ってくれた。櫛やら薬やらの代金も払ってくれて、金貨一枚と銀貨二十枚。
食料も使わずにすんだしずいぶん助かった。
魔術師の塔を目指していると言うと、一番大きい塔は都の北側にあるそうで、その手前の都の南側までなら連れて行ってくれるという。お嬢様の輿入れ先はその辺りにあるらしい。
ちょっと考えて、その話に乗せてもらうことにした。賃金は何かなければ一日銀十枚だが、食事は食べさせてくれると言うし、移動中の身軽な女手が欲しいということらしい。もちろん私が魔術師であるのも考慮の上だろう。
港には大きな馬車が四台用意されていた。
お嬢様と侍女(ふじ、という名前だった)が馬車に乗り込む。私は馬を借りた。
借りた馬は葦毛の小柄な雌で、結構年をとっているようだ。
他のお付の男たちも馬に乗る。主人の商人(楊大人)と龍の島の二人(小松どのとその息子。お嬢様の父親と兄らしい)は別の一台に乗り込む。残りの二台にはお嬢様の嫁入り道具が満載された。
港町の外れの楊家の別邸で今日は宿泊となった。
別邸は高台にあって、海の景色を見渡せるのが素晴らしい。
大きな湯船のある立派なお風呂もあり、お嬢様の入ったあとに堪能させてもらった。
夕食には肉も魚もとりどり出されたけれど、お嬢様はやはり魚のほうが食べやすいようで、箸がすすんでいた。
果物は結構好きみたい。
船から下りてしばらくするとやはり体調を回復したようで、ふじさんが細々とお嬢様の世話をやいている。
船酔いはふじさんのほうが重かったのだけど、復活も早い。
私の寝室はお嬢様の部屋の隣の部屋で、ふじさんと相部屋だった。ふじさんはどうも、世界の中心にお嬢様据えているようなひとらしい。
念のためお嬢様の部屋に、眠りを誘う香を薄く焚いた。
明日早い出発らしいし、私も早く休もうと思う。